帝国のドラグーン

正海広竜

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第14話

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 オルチ達がポルトガルの船を襲う準備をしている中、狂介は一人手伝う事なく銃の撃つ準備をしていた。
 今、狂介が持っている銃は先程試し打ちした銃に比べると長かった。
 先程持っていた銃は全長約百三十センチであったが、今狂介が持っている銃は全長約百五十センチはあった。
(後で試射しようと思っていた所で、こうして撃つ機会が出来るとはな)
 良い所に船が来たなと思いつつ狂介は筒の中に火薬と弾を入れる。
 火縄は先程使った火縄を使う事にし、火縄を付ける留め金に火縄を付けて、余っている縄は通し穴に通した。
 準備が終えた狂介は船首へと向かう。
 自分が乗っている船がポルトガルの船に近付くのをジッと見ていた。
 ポルトガルの船も海賊が向かって来るのを見て、慌てて舵を切り逃げようとしていた。

「逃がすなっ」
 オルチがそう命じると、部下達はポルトガルの船に大砲を向けた。
 砲身に砲弾が詰め込まれ、火が付けられると、轟音と共に火花が立った。
 狙いは付けていないのか、船に当たる事はなかった。
 だが、牽制できた上に海面が揺れた事で、船が舵切りが遅れた。
 オルチが乗っている船は大砲の砲弾を放ちながら進み続ける。
 それは、怒涛の様に激しい勢いであった。
 大砲が放たれる事で、轟音が響き船も揺れるが狂介は岩の様に動じる事は無かった。
 そして、船の甲板に居る者達が見える所まで、自分が乗っている船が近付くと狂介は銃を構えた。
「……ふっ」
 息を整え、狙いを定めた瞬間、狂介は引き金を引いた。
 火花と共に発射された弾丸。
 その弾丸は上甲板にいる他の乗組員よりも着飾った服を着ている男のこめかみに命中した。
 男のこめかみに穴が開いた。男は何が起こったのか分からないという顔をしながら倒れた。
 男が倒れ出して、乗組員達は混乱した。

 まるで、巣穴に水を注がれた蟻のように。
 その様子は少し離れた所にいるオルチ達にもよく分かった。
「……何があったんだ?」
「さぁ?」
 これから襲う船の乗組員達が混乱しているので、オルチ達も訳が分からなかった。
 狂介の銃撃により、船長が撃たれたのだが、大砲の轟音で銃声も聞こえなかったので、オルチ達も銃撃でしんだと分からなかった。
 だが、大砲を撃っていたオルチの部下達は狂介が銃撃した後に、誰か分からないが倒れたのを見た。
 大砲の轟音と発射された反動で揺れる船の上で相手を撃ち殺した狂介の銃の腕前に驚いて言葉を失っている様であった。
 畏敬の念が込められた視線を浴びている狂介は平然としていた。

「……良し。狙い違う事なく当てれたな」
 銃弾が外れる事が無かった事に喜ぶ狂介。
 感覚を忘れない為にか、また銃身に弾を込めて狙いを定めた。 
 狂介が銃を撃つ準備をしている間に、先程倒れた男とは別の乗組員が上甲板に行き声をあげた。
 乗組員達を落ち着かせようとしている様であったが、狂介は次の標的とばかりにその男に狙いを定めた。
 その男が狂介達の方に顔を向けた瞬間。
「……ふ~」
 狂介は引き金を引いた。
 放たれた銃弾は狙い違わず、その男の額に命中した
 額に穴が開き、男は何が起こったのか分からないという顔をしたまま仰向けに倒れた。
 乗組員達は何が起こったのか分からず、混乱に拍車が掛かった。
 最早、これまでと思ったのか、乗組員達はオルチ達の船に向けて白旗を掲げた。

「うん?」
 オルチは首を傾げた。
 まだ、船に飛び乗っても居ない上に大砲の砲弾が船に当たっても居ないのに、降伏を示す白旗を掲げたので、オルチの方も訳が分からなかった。
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