21 / 26
第20話
しおりを挟む
名を改めた後、狂介ことハサンはすぐさまモスクへと向かった。
モスクに着くと、既に婚礼の儀式が整っていた。
オルチの弟のフズールが着飾った服を着て待っていた。
ハサン達が来るのを見ると、ニヤニヤしながら見ていた。
その顔から、既にオルチから話は聞いていたのだと察したハサン。
(もしかして、親父は俺が断れないと分かっていて、話を振ったのか?)
そんな思いが頭の中に過り、思わずオルチを見るハサン。
ハサンの視線から、何かを察したオルチは口笛を吹いて横を向いていた。
それを見て嵌められたと分かったハサン。
しかし、改めてファトマを見てみた。
(綺麗な女性だな。まぁ、こんな美人を娶れるのなら良いか……)
そう思うと悪くないと思い鼻の頭を掻いた。
そして、結婚契約書に目を通した。
ハサンは読み書きも教わったので、特に問題なく字を読む事が出来た。
契約書を端から端まで目を通したが、特にハサンが不利になるような条件は書かれていなかった。
だが、最後の方に金額が書かれていたので、その意味が分からず首を傾げるハサン。
「どうした。ハサン」
「親父。この金はどういう事?」
「どれ……ああ、これはマフル(婚資)だな。
「まはる?」
この国で結婚式に参加した事が無いハサンはマフルとは何なのか分からない顔をしていた。
「まぁ、嫁に渡す金だと思え」
「嫁に?」
ハサンの疑問にオルチが答えた。
「そうだ。結婚した後の妻の財産になる金だ」
「成程」
結納みたいな物かと思うハサン。
そして、其処に書かれている金額を改めて見ると、今のハサンの財産の一部で十分な量の額であった。
「……金額に問題ないのであれば、契約書にお前の名前を書くのだ」
オルチにそう促され、ハサンは紙に名前を書く所に自分の改名した名前を書いた。
その紙には既にファトマの名前も書かれていた。
これは、本当に嵌められたなと思うハサン。
それが終わると、オルチとフズールは二人を祝福した。
儀式が終わるなり、今度は披露宴が行われる事となった。
場所はオルチの屋敷を貸して貰った。
オルチの部下やその妻、知人と言った者達を全員集めて、披露宴を開く程、ハサンの家は大きくなかった。
オルチの好意に甘えつつ、披露宴を開いた。
すると、ハサンは何故かファトマとは別室で披露宴をする事となった。
オルチがそういう習わしだと教えてくれた。
なので、ハサンは他の者達に勧められるまま酒を飲んでいた。
もう、結婚するという事で酒を飲んでも問題ないと判断されたのか、皆大いに酒を勧めた。
ハサンが居る部屋は男性しかおらず、皆静かに酒を楽しみながら談話していた。
そして、一頻り披露宴を楽しんだ後、少し酔いが残しながらもハサンは自分の屋敷へと戻って行った。
自分の部屋に入ると、既にファトマが座って待っていた。
ハサンはファトマに近付いて、その手を握った。
「ああ、これからもよろしく」
会って早々に結婚する事となったので、気持ちの整理が追い付かないでいたハサンであったが、改めてファトマを見て、気持ちの整理する事が出来た。
「はい。よろしくお願いします」
ファトマはハサンの言葉に頷き、頤を上げて目を瞑った。
それが何を意味するかは、恋愛した事が無いハサンでも分かった。
自分の顔を近づけて、互いの唇を重ねた。
そして、直ぐに部屋の灯りが消された。
モスクに着くと、既に婚礼の儀式が整っていた。
オルチの弟のフズールが着飾った服を着て待っていた。
ハサン達が来るのを見ると、ニヤニヤしながら見ていた。
その顔から、既にオルチから話は聞いていたのだと察したハサン。
(もしかして、親父は俺が断れないと分かっていて、話を振ったのか?)
そんな思いが頭の中に過り、思わずオルチを見るハサン。
ハサンの視線から、何かを察したオルチは口笛を吹いて横を向いていた。
それを見て嵌められたと分かったハサン。
しかし、改めてファトマを見てみた。
(綺麗な女性だな。まぁ、こんな美人を娶れるのなら良いか……)
そう思うと悪くないと思い鼻の頭を掻いた。
そして、結婚契約書に目を通した。
ハサンは読み書きも教わったので、特に問題なく字を読む事が出来た。
契約書を端から端まで目を通したが、特にハサンが不利になるような条件は書かれていなかった。
だが、最後の方に金額が書かれていたので、その意味が分からず首を傾げるハサン。
「どうした。ハサン」
「親父。この金はどういう事?」
「どれ……ああ、これはマフル(婚資)だな。
「まはる?」
この国で結婚式に参加した事が無いハサンはマフルとは何なのか分からない顔をしていた。
「まぁ、嫁に渡す金だと思え」
「嫁に?」
ハサンの疑問にオルチが答えた。
「そうだ。結婚した後の妻の財産になる金だ」
「成程」
結納みたいな物かと思うハサン。
そして、其処に書かれている金額を改めて見ると、今のハサンの財産の一部で十分な量の額であった。
「……金額に問題ないのであれば、契約書にお前の名前を書くのだ」
オルチにそう促され、ハサンは紙に名前を書く所に自分の改名した名前を書いた。
その紙には既にファトマの名前も書かれていた。
これは、本当に嵌められたなと思うハサン。
それが終わると、オルチとフズールは二人を祝福した。
儀式が終わるなり、今度は披露宴が行われる事となった。
場所はオルチの屋敷を貸して貰った。
オルチの部下やその妻、知人と言った者達を全員集めて、披露宴を開く程、ハサンの家は大きくなかった。
オルチの好意に甘えつつ、披露宴を開いた。
すると、ハサンは何故かファトマとは別室で披露宴をする事となった。
オルチがそういう習わしだと教えてくれた。
なので、ハサンは他の者達に勧められるまま酒を飲んでいた。
もう、結婚するという事で酒を飲んでも問題ないと判断されたのか、皆大いに酒を勧めた。
ハサンが居る部屋は男性しかおらず、皆静かに酒を楽しみながら談話していた。
そして、一頻り披露宴を楽しんだ後、少し酔いが残しながらもハサンは自分の屋敷へと戻って行った。
自分の部屋に入ると、既にファトマが座って待っていた。
ハサンはファトマに近付いて、その手を握った。
「ああ、これからもよろしく」
会って早々に結婚する事となったので、気持ちの整理が追い付かないでいたハサンであったが、改めてファトマを見て、気持ちの整理する事が出来た。
「はい。よろしくお願いします」
ファトマはハサンの言葉に頷き、頤を上げて目を瞑った。
それが何を意味するかは、恋愛した事が無いハサンでも分かった。
自分の顔を近づけて、互いの唇を重ねた。
そして、直ぐに部屋の灯りが消された。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
月弥総合病院
僕君☾☾
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。
また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。
(小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる