帝国のドラグーン

正海広竜

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第22話

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 数日後。

 海からはフズールが率いる船団が、陸からはオルチが五千の兵を率いてアルジェへと向かっていた。
 ハサンはオルチと共に陸地を進んでいた。
 ジジェルを立つ前にファトマに別れの挨拶をした。
 その際に「アッラーのご加護を」と言い祈りだした。
 今迄、略奪する時は使用人達に見送りされる事はなかったので、ファトマにそう言われるのは悪くないなと思うハサン。
 
 慣れない馬の背に乗るハサン。
 船に乗る事はあって、馬に乗る事が無いハサン。
 馬を操る手綱も何処か危うかった。
 動く事で生まれる揺れがハサンはバランスを崩しそうであった。
 周りの者達もそんなハサンを見て、ハラハラしていた。
 そんなハサンを見たオルチは馬を操って、ハサンの側に寄る。
「ハサン。大丈夫か?」
「だいじょうぶ……とは言い難いな」
 生き物である馬を操るのが苦手なのかハサンは難しい顔をしていた。
「そう言えば、お前には船の事は教えたが、馬の操り方については教えていなかった」
 今更ながらそう呟くオルチ。
「いや、大丈夫だ」
 乗っていれば慣れるだろうと思い答えるハサン。

「無理はするな」
 そんなハサンにオルチは心配そうに見ていた。
「ああ、分かっている」
 ハサンは馬の揺れにバランスを崩し掛けながら答えた。
 余談だが、軍が休憩している合間を見てオルチが乗馬の仕方をハサンにみっちり教え込んだ。
 そのお陰か、暫くすると何とか乗りこなせるようになっていた。
 
 数ヶ月後。

 オルチ達はようやくアルジェに辿り着く事が出来た。
 市内から、オルチ達の軍旗が見えたのか防壁にいる兵士達が歓声を上げていた。
 程なく市内の門が開かれて、其処から数騎ほど出て来た。
 先頭にはフズールが居た。後ろにいる騎兵は護衛の様だ。
 フズールが出て来たのを見たオルチが馬を前へと進ませた。
 そして、フズール達がオルチの傍まで行くと、フズールは両手を広げてオルチに抱き付いた。
「兄貴。無事で何よりだ」
「お前もな。無事で何よりだ。それで、アルジェはどうなった?」
 一頻り抱き締め合った二人。
 離れるとオルチは今はどういう状況なのか訊ねた。
「ああ、スペイン軍は戦う事なく逃げ出したぞ。それを見たアルジェの者達は白旗を掲げたのでな、難なく占領する事が出来た」
 無血開城したようなものだと言わんばかりに笑いながら報告するフズール。
「ほぅ、異教徒共め。我らの威光に怖気ついたか」
 報告を聞いたオルチは顔を綻ばせた。
 そして、自分の後ろに居る兵や部下達の方に身体を向けて告げた。
「今日はアルジェを手に入れた記念だ。存分に飲むぞっ」
 オルチがそう言うと、皆喜びの声をあげた。
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