転移したら研師になった。  この能力で全てを研ぎ澄ます

正海広竜

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第十三話

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 どれくらいの時が経ったのだろうか?

 今、俺達が居る場所は時が止まった空間だからなのか、腹が減る事も疲れるという感覚がなくなっていた。
 その為か、どれだけ身体を動かしても疲れる事も無かった。
 それは即ち、休みなく修業が出来るという事であった。
『どうした。動きが遅いぞっ』
 マールスがそう言うと同時に拳を繰り出した。
 重低音の風切る音と共に迫りくる拳。
 半身をずらすように動かして、その一撃は何とか躱した。
 躱した筈なのだが、風圧で皮膚が切れていた。
 
 どんだけ強い攻撃だよと思っていると。
『隙ありっ』
 マールスは追撃とばかりに蹴りを見舞った。
 首を狙った一撃は、容赦なく放たれた。
 その威力により意識と身体が吹き飛ばされた。
 蹴られた勢いのまま、俺は近くの岩に音を立てて埋め込まれた。

『我を相手に考え事が出来るとは、馬鹿なのか。それとも大物なのか分からんのぅ』
 吹き飛ばされた俺を見るなりしみじみと呟くマールス。
 いや、その前に吹き飛ばされた俺の無事を確認しろよ。
『どうした? それほど、強く放っていないから、立ち上がれるだろう』
 マールスは声を掛けて来た。
 その言い方だと、俺が無事だという事が分かっている様に聴こえてくるぜ。
 ・・・まぁ、実際そうなんだけどな。

「よっと、流石にこれだけ強く蹴るのは無しだろう。師匠」
 俺は埋め込まれた岩から抜け出して、マールスに文句をつけた。
 武術を教えてくれるので、師匠と呼ぶ事にした。
 マールスもそう呼ばれるのは満更ではない様で、師匠と呼ぶたびに、鼻の穴を大きくして顔が少し緩んでいた。
 美形なのに、そんな事をするのを見ると、何か残念な気分になるな。

『この空間の中では、死んでも直ぐに回復するだから、問題はなかろう』
「確かにそうだけどさ」
 文字通り死にかけた経験をしたので、よく分かる。
 頭を殴られた瞬間、意識が失ったと思ったら、気が付くと地面に倒れていた。
 何事かと思っていると、マールスの攻撃で頭が弾け飛んだと聞いた時は、これが所謂死に戻りという奴かと思ってしまった。
 その後も、身体に穴が空いたり、身体の半分が失ったりという事を経験したが、もう二度と経験したくなかった。
 
 だが、そんな攻撃を受け続けていた所為か、身体が頑丈になったのか分からないが、攻撃で飛ばされる事はあったが、身体が損壊するという事は無かった。
『それに、この修業のお蔭で、新しいスキルを手に入れられたのだ。寧ろ、感謝するが良い』
 マールスがそう凄いドヤ顔をしながら言って来た。
 確かにその通りだよな。
 俺はそう思いながら『「ステータス」と唱えた。


 笹山孫市。
 年齢 16
 性別 男。
 天職 研師。
 LEVEL 2
 HP 1320
 MP 1567
 ATK 1435
 DEF 1641
 DEX 3580
 SPD 1640
 INT 1547
 CHR 1882
 WIS 1778
 スキル(スキルセット数4→5) 研磨(23/EX)。言語通訳(EX)。鑑定(10/EX)。無限収納(1/EX)。New投擲術(34/EX)。
                  
 
 ステータス値が凄く上がっているな
 と言うか、スキル数が増えたな。
 其処の所をマールスに訊ねると「スキル数など、レベルが上がれば増えるのだぞ」と教えてくれた。
 そうだったのか。てっきり、もうこれ以上増えないと思っていた。持っていたスキルもレベルが上がっているな。
 まぁ、それよりも、新しく得たスキルの方が気になるけどな。

 投擲術(34/EX)
 あらゆる物に魔力を込めて投げる術。
 レベルが上がれば威力が上がり、魔法を込めて投げれば、魔法の威力も加わる。

 何か、何時の間にかこんなスキルを手に入れた。
 まぁ、その理由も分かるけどな。
『休憩は終わりで良いか。では、いくぞ』
 そう言ってマールスは戦闘態勢を取り出した。
 俺は足元に転がっている岩の瓦礫を掴んだ。
「研ぎ澄ますっ」
 そう言うと同時に俺は「研磨」のスキルを発動させて、瓦礫を尖った矢のような形にした。
 それを振りかぶって思いっきり、マールスに投げた。
 ドッチボールの球を投げるような感覚で投げる。それだけなのに、投げられた岩は目で見えない程の速さでマールスに向かって行く。
 このまま、マールスの身体に当たると思ったが。
『ふんっ』
 マールスはその岩を叩き壊した。
 人が目で追うのは難しい速度が出ていても、マールスからしたら簡単に目で追える速度という事の様だ。
『まだ、肩に力を入れ過ぎだな。まぁ、今のお前ではこれぐらい出来れば十分か』
 神様とは言え、頭にくる発言であった。
 頭に血が上った俺は、そこら辺にある岩の瓦礫を片っ端から研磨して、投げて行く。
『くははははは、どうしたどうした。これでは眠気覚ましにもならんぞっ』
 その投げられていく岩の塊をマールスは笑いながら壊していく。
 この野郎。いつか、吠え面掻かせてやるっ。
 そう思いながら、俺は瓦礫が無くなるまで投げ続けた。
 やがて、瓦礫が無くなると、今度は近接戦の修業が始まった。

 どれだけ、打ち込んでもマールスの身体に掠る事も無く、防がれていた。
 そして、時折攻撃を挟んで吹き飛ばされ、吹き飛んで壊れた瓦礫を投げて切れると近接戦というのが、修業のパターンとなっていた。
 痛みはあるが、怪我は直ぐに治る。
 その上腹も減らない疲れないので延々と修業をする事が出来た。
 待ってろよ。あのクソ女神。この力で、俺を追放した事を公開させてやるぜ。
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