転移したら研師になった。  この能力で全てを研ぎ澄ます

正海広竜

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第十九話

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 振り下ろした手刀は半透明の障壁を切り裂いた。
 パキッ、パキパキ‼
 音を立てて壊れる障壁。
 障壁が壊れ、少しすると札に縦に一本の筋が走った。
 そして、札は二つに別れた。
「・・・・・・成功だ」
 初めて放った手刀が此処までの威力を出した事に驚きつつ、俺は封印を壊した事に喜びを感じた。
『見事。このマールス。お前の技の前にそれしか言えん』
 マールスは悔しそうな顔をしながら称賛した。
 封印を解けと頼んだものの、神が張った封印を破る見事な技を見せられた事にマールスは称えるしかなかった。
 神であるという自尊心が傷つきはしたが、それでも認めざるおえない技であったので、マールスはそういう他なかった。

 師匠であるマールスにそう称えられた俺は心底嬉しかった。
 称賛された礼を述べようとしたが、その前にマールスの幻体は壺の中に戻った。
 そして、直ぐに壺が揺れ動きだした。
 少しの間揺れた後、壺の蓋が自然に飛んでいった。
 蓋が無くなった事で、壺の中に入っていたものが噴き出し始めた。

 揺らめく炎の様に噴き出した物は、途中で方向を変えて俺の前に落ちて行った。
 やがて、その炎の様なものから人影が見えて来た。
「ふんっ!」
 人影が気合を出すかの様な声を出すと。炎を様なものが掻き消えた。
 そして、ようやく人影が誰なのか分かる様になった。

「・・・・・・ふっはははは、我、此処に完全復活! ははははは」
 炎のようなもの中から出て来たのはマールスであった。
 マールスは手を動かして自分の身体が問題ないのか確認した後、高笑いを浮かべて封印が解かれた事を喜んでいた。
 幻体で見た通りだな。
 目の位置。鼻の形。口元。どれをとっても完璧としか言えない程に整った美しい顔立ち。
 刃の様に鋭い切れ目を持ち炎の様に赤い瞳を持っていた。
 瞳と同じ赤い髪はウルフカットにしていた。逞しく立派な体格を持っていた。
 
 しかし、これで頭の中は馬鹿な上に脳筋なのだから本当に残念としか言えない男神様だな。
「ふははははは、あははははは・・・・・・ぶほっ、げほ、げほげほ」
 笑い過ぎて喉を詰まらせたな。本当に残念な男神だな。
 少しの間、咳払いをした後、マールスは呼吸を整えた。
「・・・・・・ふぅ、封印から解かれて喉を詰まらせるとは、我もまだまだだな」
 
 いや、それは貴方が残念なだけです。
 そう言いたかったが堪えた。
 失礼というよりも、言ってもこたえないと思ったからだ。
「師匠。長年の封印から解かれた事に御慶び申し上げる」
 まぁ、この空間は封印されているから、どのくらい月日が経ったのか分からないが、とりあえず封印から解かれる事が出来たのだ。

 喜んでも良いだろう。
 そう思い喜びの言葉を掛けるとマールスは爽やかな笑みを浮かべた。
「うむ。これも全て貴様のお蔭だ。感謝するぞ。我が弟子よ。はっははは」
 封印から解かれた事で上機嫌のマールス。
 これなら、今にも此処から出る事が出来そうだな。
「師匠。今すぐにでもこのマルスパゴスから出る事は可能か?」
「無論だ。我に掛かれば、この程度の封印など造作もない。だが、その前にお前に聞きたい事がある」
 マールスは俺を見て来た。

「我は此処を出たら、伯父貴が居る所にいく。封印が解かれたのだ。あのクソ女神もいずれ気付くだろう。バレて見つかり、封印される前に伯父貴の所で身を隠し、反撃の準備を整える。お前はどうする?」
 マールスは此処から出た後の事を話してくれた。
「・・・・・・ちなみに、その伯父貴って誰?」
 興味本位ではあるが、何処に行くのか訊ねてみた。
 面白そうだったら行くのも悪くないのではと思ったからだ。
「伯父貴の名はプルートス。行く場所は冥界だ」
「冥界っ⁈」
 それってつまり、地獄って事だよな。

「生きている俺が行ったら死ぬと思うんだけど」
「なに、生きたまま冥界に行く事など、伯父貴に頼めば簡単に出来るぞ」
 う~ん。それでもなぁ。
 流石に冥界か。何か怖そうだな。
「・・・・・いや、やめとく。少し、この世界の事を知りたいからな」
 見聞を広めて、あの女神に一泡吹かせてやる。
 そう思い拳を握った。
「そうか。まぁ、強制はせん。では、別れの手向けとして、お前が知らぬ事を教えてやろう」
「助かるぜ。師匠」

 マールスは俺が知らない事を事細かく教えてくれた。
 貨幣はどうなっているのか。
 魔族と人間との関係等を
 この男神は意外に面倒見が良いんだなと改めて思った。
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