転移したら研師になった。  この能力で全てを研ぎ澄ます

正海広竜

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第十八話

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 そうして、今、俺は会得した魔法使った格闘術略して『魔闘術』の構えを取っていた。
「これ、意外に難しいな」
 魔力を手に付与するというのは、集中しなければならないし、その集中が解けたら術が解除されるのだから。
 よく、あの残念で脳筋で馬鹿な男神はこれを使えるな。
 ああ、曲がりなりにも神様だからか。

『今は意識して魔力を付与しているか、極めれば無意識で全身に纏う事が出来る。其処から更に極めれば、魔力を半物質化する事も可能。この様に』
 そう言ってマールスは全身を光らせた。
 その光が止むと、青銅色の鎧を纏っていた。
 よく見ると、材質は青銅の様であった。
『まぁ、此処までするとなると、かなりの修練が必要だ。お前には無理かも知れんがな。ははは』
「さいですか」
 笑いながら自慢をするマールスを無視して、俺は集中した。
 
 呼吸を整えて、全神経を使って集中する。
 あの時『心眼』を会得した様に、感覚を研ぎ澄ませる。
 深く、深く研ぎ澄ませていく。
「・・・・・・はぁっ」
 気合の一声と共に俺は両手と両足に炎を纏わせる事が出来た。
『うむ。此処まで出来れば文句なしの合格だ』
 マールスは俺の『魔闘術』を見るなり拍手をしてきた。
 初めて、拍手をされたので、気分が良かった。
『さて、これでようやく忌々しい封印を解く事が出来るな』
 マールスはそう言って、自分の本体を封印している壺を見た。
 
 今のお前なら出来ると無言で言っている様であった。
 まぁ、師匠の期待に応えるのも弟子の務めだな。
 そう思いながら、俺は壺の下まで行く。
 そして、壺を前にした俺は封印の札を軽く触れた。
 其処は以前と同じく、バチっという音と共に半透明な壁に当たり弾かれた。
 
 この札を剥がすには、この見えない壁を壊さないとな。
 息を吐いた俺は目を瞑る。
 この封印は壊すには、相当な魔力を練らないとな。
「・・・・・・ふっ」
 息を整えた俺は拳に炎を纏わせた。
「喰らえ。『火拳』」
 言っておいて、技が見たまんまだなと思いつつ、俺は拳を繰り出した。
 炎を纏わせた俺の拳は札を守る半透明な壁にぶち当たる。
 バチバチっと音を立てて、俺の拳を押し返そうとする。
 舐めるなよ。この程度で押し返されるほど、柔な修業はしてないっ。
 その一念で俺は拳に力を込めた。
 
 その一念が通じたのか、半透明な壁が割れた。
 やったと思った瞬間。札は輝き新しい半透明な壁を生み出した。
 拳はその壁に押し返された。
「どわああっ」
 押し返された拳でバランスを崩した俺は、その場で尻餅をついた。
「いてて、何だ。いったい?」
『ふむ。どうやら、この札を守っている障壁は破られると、新しい障壁を発動する様になっているのか。やってくれるな、あのクソ女神はっ』

 俺が押し返されたのを見てマールスはそう推察しだした。
「それって、つまり、その障壁と同時に札を壊さないと駄目って事だよなっ」
『その通りだ。むぅ、これはかなり厄介だな』
 マールスは困った顔をしていた。
 ようやく、此処から抜け出せると思っていたのに、ガッカリだぜ。
 しかし、この札を守る障壁と札を同時に壊すとか、どうやれってんだよ。
 
 何か方法が無いかと考える俺。
 そう考えていると、頭の中に以前祖父が見せた居合を思い出した。
 刀を研ぐ関係なのか、精神修養に役立つのか知らないが、祖父は居合を良く行っていた。
 何時学んだのかは誰も知らないそうだ。
 我流なのかどうかも知らないが、自分の家の庭で良く巻藁を立てて斬っているのを見ていた。
 何時だったか釘とスポンジを並べて刀で纏めて斬ると見た事があった。
 スポンジは分かるが、釘なんて硬い物を良く切れるなと思い、祖父にどうして斬れたのか訊ねた。

「斬釘截鉄じゃよ」
 と祖父は笑顔で言った。
 その言葉の意味を調べると、毅然とした態度で、強い決断力があることだ。
 元の意味は釘や鉄を断ち切るという所からきているそうだ。
 だが、それだけであった。

 どうして、今、それを思い出したのか分からなかったが、少し考えると分かった。
「そっか。あの障壁ごと札を斬れば良いのか」
 と言いつつも、この場に刀剣など存在しない。
 岩を削って作るという方法もあるが、俺は剣術など習ってはいない。ならば。
 俺は手を刀に見立てた。
 そして、目を瞑り集中した。
 雑念を捨てろ。煩悩を捨てろ。
 ただ、この一撃を研ぎ澄ませる。極限に至るまでっ。
「・・・いああああっ」
 その掛け声と共に俺は手刀を札へ振り下ろした。
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