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第三十一話
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朝食を食べた俺は聖地へ向かう準備を、俺が眠っていた天幕の中で整えた。
と言っても、する事は砥石を持っていくだけであった。
そう準備をしていると、天幕の入り口に誰かの影が見えた。
『儂じゃ。入っても良いか?』
声の主はおババ様と言われている婆ちゃんであった。
「どうぞ」
俺が入っても良いと言うと、垂れ幕を手で退けておババ様が入って来た。
「済まんな。準備をしている中で」
「いや、大丈夫だ。それで何の用で?」
俺が訊ねると、おババ様は懐に手を入れた。
そして、出してきたのは透明で無色な四角い石であった。
パッと見だとガラスの様に見えた。
「これは?」
「金剛石を魔法で加工した金剛砥石じゃ」
金剛石⁉
それって、ダイヤモンドの事だよな。
それを魔法で加工したとはいえ、ダイヤモンドを使っている時点で高級品じゃねえかっ。
砥石にダイヤモンドを使うとか、すげえ勿体ないと思うな。
「って、今砥石って言ったよな。もしかして」
「うむ。察した通りじゃ。この砥石は『ジュピテル・ラブラウンデウス』を研ぐ為に使われる砥石じゃ。これを持っていくがよい」
おババ様はそう言って、俺にその金剛砥石を渡した。
俺はその砥石をジッと観察した。
金剛石を使っているだけはあって、傷らしい傷が見えない。
使い込んでいるのかどうかも分からないが、少なくとも今まで『ジュピテル・ラブラウンデウス』を研いでいたのは、この砥石なのだろう。
だとしたら、そうとう使い込まれていると思った方が良いな。
「ちなみに、聞くが。この砥石じゃないと、研げないのか?」
「うむ。普通の砥石では錆を取るどころか、刃ですら付ける事も出来ぬほどの頑丈じゃからな」
そんなに頑丈なのか。
だとしたら、研ぐだけでもかなりの時間が掛ると思った方が良いな。
「分かった。有り難く借りさせてもらうぜ」
俺は貰った砥石を『無限収納』の中に放り込んだ。
話が終わると、イヴァリンが天幕の中に顔を覗かせた。
「こちらの準備は整った。いつでも出れるぞ」
「ああ、分かった」
俺はそう答えると、おババ様に頭を下げた。
「じゃあ、おババ様。行って来るわ」
「うむ。行くがよい」
俺は天幕を出ると、イヴァリンが馬の手綱を持って待っていた。
周りには同族の方々が居た。
恐らく見送りの為に居るのだろう。
「準備は良いな? それなりに馬で駆けるから、尻を痛くしても我慢しろよ」
イヴァリンにそう言われて、考えてみれば、この世界に来て馬に乗るのはこれが初めてか。
この集落に来た時は、乗ったというよりも、担がれたというのが正しかったからな。
「・・・・・・大丈夫だ。我慢する」
まぁ、俺も男だ。耐えよう。
「良し。じゃあ行くぞ」
そう言ってイヴァリンは馬に跨ると、俺を片手で持ち上げて自分の後ろに乗せた。
「しっかり、捕まれよ。振り落とされると面倒だからな」
「それ、本人の前で言うか?」
と言いつつも、何処を掴めばいいんだ?
目の前にあるのはイヴァリンの鍛え上げられた腰しかないが。
「ほら、ちゃんと腰に手を回せ」
そう言ってイヴァリンは俺の手を取り、自分の腰に手を回させた。
その際、イヴァリンの身体から良い匂いがしてきた。
これが女性の体臭かと思いながら嗅いでいた。
「じゃあ、おババ様。行って来る」
「うむ。無事に帰って来るのじゃぞ」
「分かってる」
イヴァリンはそう返事するなり、足で馬の腹を蹴り、馬を駆けさせた。
駆ける俺達をおババ様を含めた集落の人々が手を振って見送ってくれた。
と言っても、する事は砥石を持っていくだけであった。
そう準備をしていると、天幕の入り口に誰かの影が見えた。
『儂じゃ。入っても良いか?』
声の主はおババ様と言われている婆ちゃんであった。
「どうぞ」
俺が入っても良いと言うと、垂れ幕を手で退けておババ様が入って来た。
「済まんな。準備をしている中で」
「いや、大丈夫だ。それで何の用で?」
俺が訊ねると、おババ様は懐に手を入れた。
そして、出してきたのは透明で無色な四角い石であった。
パッと見だとガラスの様に見えた。
「これは?」
「金剛石を魔法で加工した金剛砥石じゃ」
金剛石⁉
それって、ダイヤモンドの事だよな。
それを魔法で加工したとはいえ、ダイヤモンドを使っている時点で高級品じゃねえかっ。
砥石にダイヤモンドを使うとか、すげえ勿体ないと思うな。
「って、今砥石って言ったよな。もしかして」
「うむ。察した通りじゃ。この砥石は『ジュピテル・ラブラウンデウス』を研ぐ為に使われる砥石じゃ。これを持っていくがよい」
おババ様はそう言って、俺にその金剛砥石を渡した。
俺はその砥石をジッと観察した。
金剛石を使っているだけはあって、傷らしい傷が見えない。
使い込んでいるのかどうかも分からないが、少なくとも今まで『ジュピテル・ラブラウンデウス』を研いでいたのは、この砥石なのだろう。
だとしたら、そうとう使い込まれていると思った方が良いな。
「ちなみに、聞くが。この砥石じゃないと、研げないのか?」
「うむ。普通の砥石では錆を取るどころか、刃ですら付ける事も出来ぬほどの頑丈じゃからな」
そんなに頑丈なのか。
だとしたら、研ぐだけでもかなりの時間が掛ると思った方が良いな。
「分かった。有り難く借りさせてもらうぜ」
俺は貰った砥石を『無限収納』の中に放り込んだ。
話が終わると、イヴァリンが天幕の中に顔を覗かせた。
「こちらの準備は整った。いつでも出れるぞ」
「ああ、分かった」
俺はそう答えると、おババ様に頭を下げた。
「じゃあ、おババ様。行って来るわ」
「うむ。行くがよい」
俺は天幕を出ると、イヴァリンが馬の手綱を持って待っていた。
周りには同族の方々が居た。
恐らく見送りの為に居るのだろう。
「準備は良いな? それなりに馬で駆けるから、尻を痛くしても我慢しろよ」
イヴァリンにそう言われて、考えてみれば、この世界に来て馬に乗るのはこれが初めてか。
この集落に来た時は、乗ったというよりも、担がれたというのが正しかったからな。
「・・・・・・大丈夫だ。我慢する」
まぁ、俺も男だ。耐えよう。
「良し。じゃあ行くぞ」
そう言ってイヴァリンは馬に跨ると、俺を片手で持ち上げて自分の後ろに乗せた。
「しっかり、捕まれよ。振り落とされると面倒だからな」
「それ、本人の前で言うか?」
と言いつつも、何処を掴めばいいんだ?
目の前にあるのはイヴァリンの鍛え上げられた腰しかないが。
「ほら、ちゃんと腰に手を回せ」
そう言ってイヴァリンは俺の手を取り、自分の腰に手を回させた。
その際、イヴァリンの身体から良い匂いがしてきた。
これが女性の体臭かと思いながら嗅いでいた。
「じゃあ、おババ様。行って来る」
「うむ。無事に帰って来るのじゃぞ」
「分かってる」
イヴァリンはそう返事するなり、足で馬の腹を蹴り、馬を駆けさせた。
駆ける俺達をおババ様を含めた集落の人々が手を振って見送ってくれた。
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本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
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