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第1章『聖霊樹の巫女』
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冒険者ギルドで一応この首都ではかなりお安い宿屋をかなりの数紹介してもらった俺は、それはもう片っ端から訪ねて回った。
そして今は夕暮れ時。結論から言おう。
泊まれる宿がねええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!
もちろん部屋でとは言わない。家畜小屋の藁でもと提案してみたが、それすらも無いありさまだった。
というか、そんなサービスはしていないとお断りされて変な目で見られただけだった。
これはもうしょうがないな、野宿でもするしかないだろう。
一縷の望みにかけて一銅貨すら無駄にしなかった俺は、お昼にリュックに入っていた黒っぽいフランスパンと水だけで飢えをしのいでいた。
なんか、超堅かった。
そんなわびしいご飯が今晩も続くかもしれない。
いや待てよ。
冒険者養成コースは三日あるのだ。
その間も無一文で乗り切れるのかといえば……
うん、無理だ。俺は絶望のあまりがっくりと肩を落とした。
ゲームではそういう展開だったからと、あまりに安易に考えて行動してしまったかもしれない。
ここがゲームなんかではなくて、今の俺にとっての『現実』なのだという事を、まさかこんな情けない状況で身に染みるとは……
こうなったら日が暮れる前に、短期で泊まり込みのアルバイトができる場所を……って、養成コースに出てたら働けないじゃん!
駄目だ、詰んだ。
「やぁ、そこの新人冒険者志望の君。宿屋は見つかったのかな?はっはっはっはっは」
なんだ?
今無性に煽られたような気がするが……いきなり新人いびりとかそういうのが目的なのだろうか?
俺は声のした方に視線を向ける。
するとそこには、金属鎧に身を包んだ青年と旅装束の女性の二人組が俺の方を見つめていた。
青年の方は鎧をまとってはいるが、どちらかというとひょろっとした感じで、あまり筋力があるようには見えなかった。
短めの金髪はサラサラで、瞳の色は深い蒼色だ。
俺の中でそんな彼の第一印象は『王子様』だった。
一方の旅装束の女性は、王子様よりは少しだけ年齢が上のように感じる。
黒色の髪を肩の辺りで切りそろえており、瞳も同じく黒色で少しだけちょっと奇麗な日本人という感覚を受ける。
王子様の方は剣を腰に下げているが、女性の方は武器らしいものは持っていなかった。
「残念ながら見つかっていませんよ。それどころか、この後の三日をどう過ごそうかと冷静になった途端に絶望を感じていた所です」
「ふむ、なるほど。という事は君が受付で話していた銅貨十枚というのはひょっとして全財産なのかね?」
「お察しの通りです」
青年の言葉に、俺は苦笑いを浮かべる事しかできない。
それにしても、彼らは一体俺に何の用なのだろうか?
「知っているかもしれませんが、俺はカイト=インディナルと申します。俺に何か御用でしたか?」
俺がそう言って青年に問いかけると、青年は驚いたように目を見開いて……そして笑い出した。
「いや、すまない。これは少々ぶしつけだったな。名も名乗らず、窮地の君に対する態度ではなかった。許されよ。はっはっはっはっは」
そう思うなら笑うなと俺はここで突っ込んでいいのだろうか。なんとも疲れる青年だった。
「ならば私も名乗ろう!我が名は……旋風のエミリオ!聖騎士を志すものである!そしてこれなるは我が友のもので名はセレン。我が栄光の道を手助けしてくれようという素晴らしい女性だ」
「いいえエミリオ様!素晴らしいのはエミリオ様であって私ではありません!私はそんな素晴らしいエミリオ様の大願を叶えるお手伝いができればとただそれだけを思い不詳の身ながらおそばに控えさせていただいているのみでございます」
大道芸人か何かに見えてきた、というかあまり関わり合いになりたくないというか、とにかく周囲の目がちょっと痛くなってきたのでこの辺りでやめて貰えないだろうか。
「さて、何用かとの話であったが……うむ。カイトよ。そなたは冒険者養成コースを受講しようとしておるものの、先立つものがなくて不安を抱えているのであろう?」
「まぁ、はい。そうですね。でもまぁ適当に何とかしますので。では俺はこの辺で……」
「まぁ待ちたまえ」
関わり合いになりたくなかった俺は、適当に話を流して立ち去ろうとしたが背後からエミリオの手で肩をつかまれ止められてしまう。
ここでさっと手を取って投げ飛ばすなり関節技を極めるなりできるようなチートは、残念ながら俺にはない。
「もしよければ私が君の力になろうではないか」
「はい?」
「私も先ほど冒険者養成コースの受講を決めてきた者でね。つまり君とは言ってみれば同期生という間柄になると思うのだよ」
え、こいつも冒険者になるのか?
というか、冒険者とか勤まるのか?
このヒョロヒョロっぽい体で……まさかこんな金属鎧と剣で武装しているが、実態は魔法使いとか。
いや、聖騎士志望とか言ってたっけ?
「冒険者を志すからには、そなたにも色々あるのであろう。そして財政状況を鑑みずに突撃してきた若さはあるが、その実養成コースを受けて基礎を固めた上での冒険者を目指すという堅実っぷりは実に感心するものがあるのだよ。何しろ最近の若い者たちは養成コースなんかに金と時間を取られるよりもすぐにでも冒険者になろうとするものが実に多い。まったく嘆かわしいものだ……」
「いや、あんたいくつだよ」
俺は心の中で突っ込ん……あ、口に出てしまった。
なにしろどう贔屓目に見ても、エミリオは二十を超えてはいないだろうと思えたからだ。
「エミリオ様は今年で十九になられました。先年度の成人式は実に素晴らしい物でした」
セレンさんがうっとりとした様子で俺に教えてくれる。
十九か……俺より一つ上なんだな。
そしてこの世界の成人は十八という事らしい。
「まぁ、詳しい話は食事でもしながらにしないかね?ああ、もちろん君の分は私が奢ろう。このささやかな出会いに感謝の意をささげ祝わせてくれると嬉しい」
そんなエミリオの提案に、俺の口より早く腹がぐぅーと音を立てて返事をしてしまった。
さすがに恥ずかしさで頬が熱を持つのが分かった。
「ははは!遠慮などしないのも若者の特権だぞ、カイトよ。では共に行こう。私のお気に入りの店があるのだ。ちなみにアルコールはいける口かな?」
「お前絶対年齢詐称してるだろ……アルコールか」
お酒は二十歳になってから!
とはいえ、この世界では成人が十八なので問題はないのかもしれない。
そんなお酒へのちょっぴりの憧れと腹の虫にせっつかれるようにして、俺は彼の誘いに乗る事にしたのだった。
そして今は夕暮れ時。結論から言おう。
泊まれる宿がねええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!
もちろん部屋でとは言わない。家畜小屋の藁でもと提案してみたが、それすらも無いありさまだった。
というか、そんなサービスはしていないとお断りされて変な目で見られただけだった。
これはもうしょうがないな、野宿でもするしかないだろう。
一縷の望みにかけて一銅貨すら無駄にしなかった俺は、お昼にリュックに入っていた黒っぽいフランスパンと水だけで飢えをしのいでいた。
なんか、超堅かった。
そんなわびしいご飯が今晩も続くかもしれない。
いや待てよ。
冒険者養成コースは三日あるのだ。
その間も無一文で乗り切れるのかといえば……
うん、無理だ。俺は絶望のあまりがっくりと肩を落とした。
ゲームではそういう展開だったからと、あまりに安易に考えて行動してしまったかもしれない。
ここがゲームなんかではなくて、今の俺にとっての『現実』なのだという事を、まさかこんな情けない状況で身に染みるとは……
こうなったら日が暮れる前に、短期で泊まり込みのアルバイトができる場所を……って、養成コースに出てたら働けないじゃん!
駄目だ、詰んだ。
「やぁ、そこの新人冒険者志望の君。宿屋は見つかったのかな?はっはっはっはっは」
なんだ?
今無性に煽られたような気がするが……いきなり新人いびりとかそういうのが目的なのだろうか?
俺は声のした方に視線を向ける。
するとそこには、金属鎧に身を包んだ青年と旅装束の女性の二人組が俺の方を見つめていた。
青年の方は鎧をまとってはいるが、どちらかというとひょろっとした感じで、あまり筋力があるようには見えなかった。
短めの金髪はサラサラで、瞳の色は深い蒼色だ。
俺の中でそんな彼の第一印象は『王子様』だった。
一方の旅装束の女性は、王子様よりは少しだけ年齢が上のように感じる。
黒色の髪を肩の辺りで切りそろえており、瞳も同じく黒色で少しだけちょっと奇麗な日本人という感覚を受ける。
王子様の方は剣を腰に下げているが、女性の方は武器らしいものは持っていなかった。
「残念ながら見つかっていませんよ。それどころか、この後の三日をどう過ごそうかと冷静になった途端に絶望を感じていた所です」
「ふむ、なるほど。という事は君が受付で話していた銅貨十枚というのはひょっとして全財産なのかね?」
「お察しの通りです」
青年の言葉に、俺は苦笑いを浮かべる事しかできない。
それにしても、彼らは一体俺に何の用なのだろうか?
「知っているかもしれませんが、俺はカイト=インディナルと申します。俺に何か御用でしたか?」
俺がそう言って青年に問いかけると、青年は驚いたように目を見開いて……そして笑い出した。
「いや、すまない。これは少々ぶしつけだったな。名も名乗らず、窮地の君に対する態度ではなかった。許されよ。はっはっはっはっは」
そう思うなら笑うなと俺はここで突っ込んでいいのだろうか。なんとも疲れる青年だった。
「ならば私も名乗ろう!我が名は……旋風のエミリオ!聖騎士を志すものである!そしてこれなるは我が友のもので名はセレン。我が栄光の道を手助けしてくれようという素晴らしい女性だ」
「いいえエミリオ様!素晴らしいのはエミリオ様であって私ではありません!私はそんな素晴らしいエミリオ様の大願を叶えるお手伝いができればとただそれだけを思い不詳の身ながらおそばに控えさせていただいているのみでございます」
大道芸人か何かに見えてきた、というかあまり関わり合いになりたくないというか、とにかく周囲の目がちょっと痛くなってきたのでこの辺りでやめて貰えないだろうか。
「さて、何用かとの話であったが……うむ。カイトよ。そなたは冒険者養成コースを受講しようとしておるものの、先立つものがなくて不安を抱えているのであろう?」
「まぁ、はい。そうですね。でもまぁ適当に何とかしますので。では俺はこの辺で……」
「まぁ待ちたまえ」
関わり合いになりたくなかった俺は、適当に話を流して立ち去ろうとしたが背後からエミリオの手で肩をつかまれ止められてしまう。
ここでさっと手を取って投げ飛ばすなり関節技を極めるなりできるようなチートは、残念ながら俺にはない。
「もしよければ私が君の力になろうではないか」
「はい?」
「私も先ほど冒険者養成コースの受講を決めてきた者でね。つまり君とは言ってみれば同期生という間柄になると思うのだよ」
え、こいつも冒険者になるのか?
というか、冒険者とか勤まるのか?
このヒョロヒョロっぽい体で……まさかこんな金属鎧と剣で武装しているが、実態は魔法使いとか。
いや、聖騎士志望とか言ってたっけ?
「冒険者を志すからには、そなたにも色々あるのであろう。そして財政状況を鑑みずに突撃してきた若さはあるが、その実養成コースを受けて基礎を固めた上での冒険者を目指すという堅実っぷりは実に感心するものがあるのだよ。何しろ最近の若い者たちは養成コースなんかに金と時間を取られるよりもすぐにでも冒険者になろうとするものが実に多い。まったく嘆かわしいものだ……」
「いや、あんたいくつだよ」
俺は心の中で突っ込ん……あ、口に出てしまった。
なにしろどう贔屓目に見ても、エミリオは二十を超えてはいないだろうと思えたからだ。
「エミリオ様は今年で十九になられました。先年度の成人式は実に素晴らしい物でした」
セレンさんがうっとりとした様子で俺に教えてくれる。
十九か……俺より一つ上なんだな。
そしてこの世界の成人は十八という事らしい。
「まぁ、詳しい話は食事でもしながらにしないかね?ああ、もちろん君の分は私が奢ろう。このささやかな出会いに感謝の意をささげ祝わせてくれると嬉しい」
そんなエミリオの提案に、俺の口より早く腹がぐぅーと音を立てて返事をしてしまった。
さすがに恥ずかしさで頬が熱を持つのが分かった。
「ははは!遠慮などしないのも若者の特権だぞ、カイトよ。では共に行こう。私のお気に入りの店があるのだ。ちなみにアルコールはいける口かな?」
「お前絶対年齢詐称してるだろ……アルコールか」
お酒は二十歳になってから!
とはいえ、この世界では成人が十八なので問題はないのかもしれない。
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