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第1章『聖霊樹の巫女』
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「よし、そろそろ時間だな」
リックス達に続いてロザミアさん達もダンジョンに入って、ついに俺たちの順番が回ってきた。
「大丈夫、お前らならきっと楽勝だって!」
「そうですね、僕達でもボス以外ではそこまで苦労はしていませんからね」
ちなみにリックス達は、ロザミアさん達がダンジョンに入ってすぐぐらいに帰ってきていた。
もちろんダンジョンで何があったかとか詳しい話は一切禁止なのだが、彼らは新米とはいえ戦士に神官に魔法使いとバランスのよさそうなパーティーだ。
こういうダンジョン探索では、特に力を発揮できるタイプだろう。
俺たちのパーティーは、騎士と修道士と盗賊(嘘)とかなり前衛特化型のパーティーだ。
ロザミアさん達もかなりだったが(戦士、吟遊詩人、盗賊、盗賊だった)パーティーとしてのバランスはあまりいいとは言えない。
「とりあえず、俺が戦闘でいいか?エミリオとセレンさんは魔物が出てきたら前を代わってほしい」
「うむ、トラップ等がどうなっているか解らないが、盗賊職が前を歩くのは確かに理にかなっている。君に任せよう」
「よろしくお願いします」
エミリオもセレンさんも異論がないようだったので、俺は二人を先導するようにダンジョンの中へと足を踏み入れた。
明かりはセレンさんが街で仕入れてきたという松明だ。
一応戦闘は二人に任せる予定のため、松明は俺が片手に持っている。
そしてリサ先生の使い魔は俺たちの少しだけ後ろを飛んでついてきていた。
……松明の煙とか、煙たくないんだろうか?
なお、万が一トラップがあった場合には俺には『盗賊王の瞳』のスキルがあるので、無理に探そうと思わなくても視界にさえ入ればそこに罠があるかどうかはすぐにわかる。
注意深く見なくても、視界にさえ納めてしまえばほぼ見逃しはないのだから気が楽だ。
ダンジョンを歩いてしばらく、俺は『盗賊王の瞳』に引っかかるものを見つけて立ち止まった。
「む、どうしたのだカイト?」
「ああ、ちょっと足元を見てほしい。ほら、かなり低いところにワイヤーが張ってるだろう?」
「本当ですね……薄暗いので気づきませんでした」
ちなみにワイヤーは黒く塗られており、本当に見えにくかった。
これ普通に考えて、初心者が発見するのはかなり苦しいんじゃないかな?
「それにしても、こんな洞窟のようなダンジョンでこのような人工的なトラップが仕掛けられていると、なんとも不自然に見えてしまいますね」
「まぁ、それがダンジョンですからねぇ……」
魔物もそうだが、トラップもダンジョンが生成した存在だ。
ゲームでも、なんでだよ!と突っ込みたくなるトラップがあったな……
人工物っぽい遺跡風のダンジョンで、床をぶち抜くように間欠泉が噴き出してきたときはさすがに度肝を抜いたものだ。
「とりあえず、またげば大丈夫なんで慎重に行きましょう」
「そうですね、それよりカイトさん……私にも敬語を使う必要はないんですよ?」
「え?ああ、そういえば……」
エミリオと違い普通に普段から丁寧な言葉遣いのセレンさんには、ついずっと俺も敬語で対応していた。
でもまぁ、同じパーティーなんだしあまり他人行儀なのも?
「といいつつ、セレンさんだって敬語じゃないですか」
「私はこれが素ですので」
ああ、うん。よくいるよねー、そういう人。
「……まぁいっか。じゃあ二人とも、気を付けてまたいでくれよ。引っかかっても多分大したことはない奴だけど」
「うむ、任せておくがいい!」
エミリオは自信たっぷりに足を振り上げて……わずかにかかとがワイヤーにひっかり、無情にもワイヤーはぷつんと切れてしまった。
カランカランカランカラン……
『…………』
「いや、すまぬ。ちと歩幅が小さすぎたようであるな……」
まぁ、大したトラップじゃないのは気が付いていた。
実際このトラップは鳴子だったらしい。
その音に引き付けられるように、ダンジョンの奥から大きな蝙蝠が飛来してきた。
俺はすかさず『鑑定眼』を発動し、やってきた魔物を識別する。
「ジャイアントバットだ!二人とも頼んだ!」
「うむ、任せよ!」
「はい、ではエミリオ様。エミリオ様はあの一際大きな一体をお願いします。私は他の三体をなんとかしますので」
ジャイアントバットは非常に弱い魔物だ。
俺が何かして二人をサポートすることもなく、セレンさんが危なげなくジャイアントバットを四体始末した。
ちなみに一際大きな一体を倒そうとロングソードを振り回していたエミリオは、まったくかすりもさせる事ができずしまいには後頭部に噛みつかれた所を、セレンさんが引きはがして地面に叩きつけると足で踏みつぶしてしまった。
それでぶじゅっと潰れる所はちょっとグロっ!と思ってしまったが、すぐにジャイアントバットはドロップアイテムに変化したためぐちゃぐちゃの死体を見るのは避けられたようだ。
「羽が三枚と牙が一本ですね」
「うむ、なかなか順調ではないか」
「……順調?」
エミリオの笑いながらの言葉に、俺は胡乱げな視線を彼に向けるがエミリオは全くこたえていない様子だった。
彼にとってジャイアントバットに噛みつかれた事は、本当に些事でしかないのだろう。
「大丈夫ですよ、カイトさん。脅威なら全て私が排除しますから」
セレンさんにとっても些事なようだった。
会って数日とはいえここまでずっと一緒に行動してきた俺だが、なんともとらえどころのない二人だった。
リックス達に続いてロザミアさん達もダンジョンに入って、ついに俺たちの順番が回ってきた。
「大丈夫、お前らならきっと楽勝だって!」
「そうですね、僕達でもボス以外ではそこまで苦労はしていませんからね」
ちなみにリックス達は、ロザミアさん達がダンジョンに入ってすぐぐらいに帰ってきていた。
もちろんダンジョンで何があったかとか詳しい話は一切禁止なのだが、彼らは新米とはいえ戦士に神官に魔法使いとバランスのよさそうなパーティーだ。
こういうダンジョン探索では、特に力を発揮できるタイプだろう。
俺たちのパーティーは、騎士と修道士と盗賊(嘘)とかなり前衛特化型のパーティーだ。
ロザミアさん達もかなりだったが(戦士、吟遊詩人、盗賊、盗賊だった)パーティーとしてのバランスはあまりいいとは言えない。
「とりあえず、俺が戦闘でいいか?エミリオとセレンさんは魔物が出てきたら前を代わってほしい」
「うむ、トラップ等がどうなっているか解らないが、盗賊職が前を歩くのは確かに理にかなっている。君に任せよう」
「よろしくお願いします」
エミリオもセレンさんも異論がないようだったので、俺は二人を先導するようにダンジョンの中へと足を踏み入れた。
明かりはセレンさんが街で仕入れてきたという松明だ。
一応戦闘は二人に任せる予定のため、松明は俺が片手に持っている。
そしてリサ先生の使い魔は俺たちの少しだけ後ろを飛んでついてきていた。
……松明の煙とか、煙たくないんだろうか?
なお、万が一トラップがあった場合には俺には『盗賊王の瞳』のスキルがあるので、無理に探そうと思わなくても視界にさえ入ればそこに罠があるかどうかはすぐにわかる。
注意深く見なくても、視界にさえ納めてしまえばほぼ見逃しはないのだから気が楽だ。
ダンジョンを歩いてしばらく、俺は『盗賊王の瞳』に引っかかるものを見つけて立ち止まった。
「む、どうしたのだカイト?」
「ああ、ちょっと足元を見てほしい。ほら、かなり低いところにワイヤーが張ってるだろう?」
「本当ですね……薄暗いので気づきませんでした」
ちなみにワイヤーは黒く塗られており、本当に見えにくかった。
これ普通に考えて、初心者が発見するのはかなり苦しいんじゃないかな?
「それにしても、こんな洞窟のようなダンジョンでこのような人工的なトラップが仕掛けられていると、なんとも不自然に見えてしまいますね」
「まぁ、それがダンジョンですからねぇ……」
魔物もそうだが、トラップもダンジョンが生成した存在だ。
ゲームでも、なんでだよ!と突っ込みたくなるトラップがあったな……
人工物っぽい遺跡風のダンジョンで、床をぶち抜くように間欠泉が噴き出してきたときはさすがに度肝を抜いたものだ。
「とりあえず、またげば大丈夫なんで慎重に行きましょう」
「そうですね、それよりカイトさん……私にも敬語を使う必要はないんですよ?」
「え?ああ、そういえば……」
エミリオと違い普通に普段から丁寧な言葉遣いのセレンさんには、ついずっと俺も敬語で対応していた。
でもまぁ、同じパーティーなんだしあまり他人行儀なのも?
「といいつつ、セレンさんだって敬語じゃないですか」
「私はこれが素ですので」
ああ、うん。よくいるよねー、そういう人。
「……まぁいっか。じゃあ二人とも、気を付けてまたいでくれよ。引っかかっても多分大したことはない奴だけど」
「うむ、任せておくがいい!」
エミリオは自信たっぷりに足を振り上げて……わずかにかかとがワイヤーにひっかり、無情にもワイヤーはぷつんと切れてしまった。
カランカランカランカラン……
『…………』
「いや、すまぬ。ちと歩幅が小さすぎたようであるな……」
まぁ、大したトラップじゃないのは気が付いていた。
実際このトラップは鳴子だったらしい。
その音に引き付けられるように、ダンジョンの奥から大きな蝙蝠が飛来してきた。
俺はすかさず『鑑定眼』を発動し、やってきた魔物を識別する。
「ジャイアントバットだ!二人とも頼んだ!」
「うむ、任せよ!」
「はい、ではエミリオ様。エミリオ様はあの一際大きな一体をお願いします。私は他の三体をなんとかしますので」
ジャイアントバットは非常に弱い魔物だ。
俺が何かして二人をサポートすることもなく、セレンさんが危なげなくジャイアントバットを四体始末した。
ちなみに一際大きな一体を倒そうとロングソードを振り回していたエミリオは、まったくかすりもさせる事ができずしまいには後頭部に噛みつかれた所を、セレンさんが引きはがして地面に叩きつけると足で踏みつぶしてしまった。
それでぶじゅっと潰れる所はちょっとグロっ!と思ってしまったが、すぐにジャイアントバットはドロップアイテムに変化したためぐちゃぐちゃの死体を見るのは避けられたようだ。
「羽が三枚と牙が一本ですね」
「うむ、なかなか順調ではないか」
「……順調?」
エミリオの笑いながらの言葉に、俺は胡乱げな視線を彼に向けるがエミリオは全くこたえていない様子だった。
彼にとってジャイアントバットに噛みつかれた事は、本当に些事でしかないのだろう。
「大丈夫ですよ、カイトさん。脅威なら全て私が排除しますから」
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会って数日とはいえここまでずっと一緒に行動してきた俺だが、なんともとらえどころのない二人だった。
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