純白少女と転生者

おすねこ

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第1章『聖霊樹の巫女』

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 ギルドマスターのサンタクロース……じゃなく、サンザ=ロートスの爺さんに連れられてやってきたのは、ギルドの地下の一室だった。
 そこは鍛練場のようになっており、すでに通達があったのかそこを利用しているであろう冒険者たちの姿は今は存在していなかった。

「魔法の実技とかそういうのもあるんじゃないんですか?さすがに地下ってのは、いざという時に危険なんじゃあ……?」

「うむ、まぁそうかもしれんのう。じゃが、この地下訓練場にはSランクの冒険者をしておる大賢者ウォーレスに作ってもらった結界石を使っておる。奴自身の超魔法をもってしても結界の核を直接狙ったようなものでなければ結界を破壊する事すらできぬものじゃよ。そしてそれをして破壊したとして、壊れるのは結界のみで周囲にはほぼ被害はないはずじゃ」

「試してみましょうか?」

 そう言ってリサ先生が部屋の入り口から杖の先端だけを結界の中に入れると、鍛練場の壁に向けて魔法の詠唱に入る。
 そして詠唱が完了すると同時に「ブラスト・ボムズ」と一言告げると、杖の先端から十数個の光球が撃ち出され壁に向かって飛来した。
 それらが壁に一つ触れるごとに……

ドンッ!ドォォォンッ!ドォォンッ!!

 派手な爆発音をまき散らしながら、とんでもない爆発が巻き起こった。
 距離は結構あるはずなのに、爆風は俺たちのいる所にまで戻ってくるかのようだった。もっとも杖の先端以外は結界の外なわけで、俺たちの身には何の影響ももたらさなかったが。

「……ね?」

 リサ先生は軽く言っているが、彼女の使った術は炎系魔術の最上位クラスに位置する魔法だ。
 威力だって申し分ない。
 今俺は鑑定眼を持ってないが、リサ先生を鑑定すると一体何レベルと表示されるのか大いに興味をそそった。

「ちなみにカイトさん。『まほろばの剣』はAランクパーティーですから、純粋に冒険者としてはトップクラスパーティーですよ」

「マジか!?」

 セレンさんの解説に、俺は目をむいていた。
 なんでそんな超凄腕パーティーが初心者の講習とかやってるんだ……

「うん?まぁ、ちょっと暇だったからね~」

 そういってリサ先生はけらけらと笑った。
 Aランクパーティーともなれば財も十分あるだろうし、その実力に見合った依頼はあまり多くないのかもしれない。
 それだけに自由が利くのだろうが、自由すぎてする事が定まっていないのかもしれない。

 これはゲームでも結構ある事で、レベルがしっかり上がってくると既存のクエストでは物足りないし焦って何かをしたくならなかったりする。

 そういう時に手を出しがちなのが、新キャラの作成や新人の育成だ。
 新人の育成なんて結構面倒そうに聞こえるかもしれないが、初心者にあれやこれやと世話を焼くのはこれで意外と楽しかったりするのだ。

「まぁ強度の問題は安心してくれたかのう?まぁ、今回は強度についてはそれほど問題はないじゃろうて。のう、ロンドや」

「まぁ、そりゃあ俺は魔法とかは縁ないっすからね」

 そういってロンド先生が後頭部をぽりぽりとかいて見せる。
 そう、ここでやるのは俺と彼との一騎打ちだった。

 といっても、実は俺以外の講習参加メンバーはすでに全員が体験済みだった。
 そう、ちょうど俺がチート能力を手に入れて意識を失った時のことだ。

「セレンさんはあの時、割とぴんぴんしてたよな?ロンド先生相手に結構いい感じに戦えてたのか?」

「かなり手加減はしてもらってましたけどね」

 肩をすくめてそういうセレンさんは、結構悔しそうな様子だ。
 他のメンバーも手加減は……してくれたんだろうが、それについていけたのはセレンさんとロザミアさんだけだったんだな……あれ?

 そういえばあの吟遊詩人のユーレリオだっけ?
 彼もベッドに倒れていた様子はなかったが、彼も結構戦える人だったんだろうか?

「あ、ちなみに今回は手加減なしだから、そこんとこよろしくな!」

 ロンド先生が歯をキラーンと光らせていい笑顔を俺に向けてきた。
 って、おおぉぉぉぉい!?

「何でですか、俺もみんなと同じ冒険者にもなってない素人ですよ!?」

「んな奴がバウンドウルフ四体相手に圧勝したりしねーって。大丈夫大丈夫」

 からからと笑うが、これはやばい。
 Aランクのロンド先生ならレベルは少なくとも五十は超えてるだろう。

 となるとステータスは特化能力が職業補正も併せて百五十を超えてきているはず。
 そしてスキルの数も、かなり多岐にわたるはず。

 輪廻士ソウルリンカーは付け替えられるスキルの総量自体はどの職業より多いが、普通に職業として鍛えてきた一般職に比べればその場で発動しているスキル量は段違いに少ない。
 PVPの必勝法は鑑定眼を最初につけておいて、相手のスキルやステータスを確認した後に英魂を付け替えて相性で圧倒するやり方だが……俺はバウンドウルフと相対した時の英魂のままでここまで来てしまった。
 一度だけなら付け替えはできるだろうが……こうなったらそこには頼らず今のスキルで何とかする方がいいだろう。

「カイト」

 俺が多少表情を悪くしながらも真剣に考えこむ様子に、気遣ってくれたのかリーフィアが俺の肩をポンと叩いた。

「骨はちゃんと拾うから」

「そこは『頑張ってね!』ぐらい言ってほしいですよリーフィアさん!」

「……頑張ってね?」

「疑問形!疑問形か!」

「ほれ、行くぞカイト~」

 ロンド先生が俺の腕をつかんで鍛練場へと引きずっていく。

「……大丈夫。カイトならきっと勝てるから」

「お、おう……」

 引きずられる俺の耳に聞こえてきた声に、俺は少し照れたような声を返すので精いっぱいだった。
 最初からそう言ってくれてればなぁ……全くあまのじゃくな子だ。

「さて、と」

 ロンド先生は練習用の木製の大剣をブンッと振るった。
 刃はついてないが……なら安全かと言えば、そんなわけないだろう。
 野球なんかで使われる木製のバット、あれと同じものが物凄い勢いで振りぬかれることを考えると……下手したら即死では?

 いまさらながらに少し怖気ずくが、ここまで来たらやるしかない。
 俺も木製のナイフをすっと構える。
 勝負は一瞬だ。

「それじゃあ、行くわよ……はじめ!」

「はあぁぁっ!」

 リサ先生の掛け声とほぼ同時に、鋭い気合を迸らせたロンド先生の剣が横なぎに俺の胴を払おうとしてくる。
 本気とはいっても、やっぱり手加減はある。
 構えたままの状態で振り下ろす、隙の少ない袈裟斬りから入らず剣を構え直して一閃する胴薙ぎを最初の一撃に選んだのだから。

 そう、その最初の構え直すという一瞬の動作。
 そこが俺が付くべき隙だった。

 彼が構え直し剣を振る、そのわずか一瞬の間に俺は全力で彼の背後に回った。
 右からの薙ぎなのだから、左側から回り込む。
 言葉にするとそれだけの事だが、それを成しえるには相当な速度が必要だろう。
 そして速度重視の英魂でそろえている今の俺なら、それは可能な動作だった。

 ロンド先生の背後に回り込み、木製のナイフの先端を彼の首元にピタリと当てたその時点で完全に勝負ありだ。
 あまりに早い決着に一瞬全員の時が止まったようになったが、ロンド先生が手から木の大剣を手放して両手を上げた時点で全員が勝者を実感できたようだった。
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