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第1章『聖霊樹の巫女』
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「さて、そなたの力も理解できたところで、そなたとそちらの娘にわしから依頼があるのじゃよ」
ギルドマスターの部屋まで戻ってきた俺たちは、ギルドマスターから早速そんな話を切り出された。
「いやいや、ちょっと待ってください。ようやく冒険者になれるというような新人にいきなり冒険者ギルドの総括ギルドマスターからの依頼ですか!?」
「うむ、是非引き受けてほしい。そなたらにしかきっとできぬことなのじゃ」
ゆっくりまったり異世界で生きて行こうと思っていた俺は、突然の事にさすがに戸惑った。
これはどういう事だろう……まさか、ずっと未実装だった『グリーン・ウッド ファンタジア』のメインストーリーか何かだろうか?
いや、そうじゃない。
沈まれ俺のゲーム脳!
「と、とりあえず話を聞かせていただいても構いませんか?」
「もちろんじゃとも。とはいえ、そうじゃな。まずカイトよ。そなたはこの世界に存在する世界樹についてはどの程度の知識があるかのう?」
世界樹。
ゲーム名的にも『グリーン・ウッド ファンタジア』と、いかにも木に主眼を当てられた名称をしているのには当然意味がある。
この世界は巨大な一本の世界樹の膨大な根の絡まりの上に成り立つ世界というのが、このゲームの設定だ。
まるで宇宙のように何もない無の空間に存在する巨大なる世界樹。
その根が球状に張り巡らされ、そこに土が生まれ、水が生まれ、別の植物が生まれ、そして生命が生まれる。
そんな世界において、世界樹とはまさに世界そのものだといえる。
そしてそんな世界樹の分霊木ともいうべき世界各地に存在する聖霊樹。
邪なるものを払う力を秘めるとされるその聖霊樹の根元には、人の住む王国が築かれた。
この首都レイバーンを有するレイバーン王国を始めとして、世界には聖霊樹の数だけ国があり、そして聖霊樹の加護のない場所に国は生まれないとされている。
なぜなら聖霊樹の加護がなければ、その地に住まう魔物達は恐ろしい力を持つからだ。
人には生まれながらの牙も爪もない。
もちろん修練を積めば、剣や槍、それこそ拳でも戦える戦士は生まれるし、魔力を武器とする魔導士たちも生まれる。
けれど、いっぱしに戦える戦士たり得るには、その道一本に突き進むぐらいでなければならない。
人は弱く、戦士や魔導士だけでは生きてはいけない。
農夫も商人も職人も必要な生き物なのだ。
そうなれば戦うすべを持たない人間もかなりの数がいる事になり、そうした人々は聖霊樹の加護を無しに生き延びられないのだ。
もし聖霊樹の加護が突然無くなってしまえば、加護を失った人々に狂暴化した魔物の群れが押し寄せて、その地は完全な魔物の餌場となり最終的には不毛の地へと姿を変えてしまうだろう。
俺はゲームの攻略本の末尾に描かれていた設定資料集のような物を読み込んでいたので、その辺りの知識はしっかりしていたので、それをギルドマスターの前で披露した。
「その通りじゃ、よく勉強しておるのう」
「へー。あのでっかい木はそういう意味があったんだなぁ」
「って、そのくらいは知ってなさいよ、このおバカ!」
本当に知らなかったのかどうかは解らないが、ボケたことを言うロンド先生の頭をリサ先生がどこからともなく取り出したハリセンで殴り飛ばしていた。
あのハリセン初日でも使ってたよな、なんだか懐かしい。
「そこでじゃ、カイトよ。わしがそなたに頼みたい依頼というのは、そちらのリーフィアと共にこのレイバーンを守護する聖霊樹の様子を見てきてほしいというものなのじゃ」
「聖霊樹を!?」
「少しよろしいか、ギルドマスター殿。この国の聖霊樹は当然王級の内部にあるのだが、彼らに王宮に入れという事になるのではないのかな? さすがにそのレベルの事をあなたの独断で決めるのは少々厳しいのではありますまいか?」
「ふむ、確かにわしの一存だけでは難しいかもしれぬのぅ。フラグスター卿の方で何とか調整してはもらえんかのう?」
「いえ、自分は権力のかけらもありませぬ三男坊ですので」
エミリオが肩をすくめて首を振った。
フラグスター卿って……エミリオの家名か何かか。
雰囲気的に王子様な男だが……やっぱり王族、とまではいかなくとも貴族ではあるのかもしれない。
「ふむぅ……まぁ仕方ない。わしからの紹介状を書いてみよう。それを持って王宮へ行ってみてはくれぬか?門前払いされた場合でも、依頼は失敗とはみなさず報酬も支払おう。まぁ、お使い程度の報酬にはなるかもしれぬがのう」
つまり聖霊樹の元まで行けるどうかに関わらず、彼の紹介所を持って王宮まで行くだけでも依頼の達成になるわけだ。
これはおいしい話かもしれない。
「でも、なんで俺とリーフィアなんです?」
「そなたは知っておるかの?かつて聖霊樹は一度枯れかけた事があるのじゃよ」
「!」
そのギルドマスターの一言は、俺たち全員に衝撃をもたらすには十分な一言だった。
さっきも少し話したが、聖霊樹が枯れるというのは国の滅亡とほぼイコールなのだ。
「それは一体……」
「もちろん、持ち直したわい。そしてそれは『聖霊樹の巫女』と呼ばれるもののおかげであるとされておるのじゃ。かつて聖霊樹は一度その葉を枯れ落とし、その加護を失う寸前に至ったという。そしてその聖霊樹を救ったのは『聖霊樹の巫女』の祈りであったそうじゃ。そしてその『聖霊樹の巫女』は記憶を持たず、どこかのダンジョンより生まれてきた存在であったとされているのじゃ」
俺はその一言を聞いて息をのんだ。
記憶がなく、ダンジョンより生まれる……それは今俺の後ろでソファに寝転がりすやすやと寝息を立てているリーフィアとあまりに特徴が一致する……って、寝てるー!?
俺とギルドマスターと後、エミリオの難しい話に耐えられなくなったのだろう。
「………聖霊樹の、巫女、ねぇ?」
俺はソファで眠るリーフィアの方を見る。
あまりに純粋無垢な彼女は……本当に生まれたばかりなのかもしれない。
だが、その邪気もなく深刻さもない様子は『聖霊樹の巫女』なんていう神秘的な名前とはかけ離れているように感じられてしまうのだった。
ギルドマスターの部屋まで戻ってきた俺たちは、ギルドマスターから早速そんな話を切り出された。
「いやいや、ちょっと待ってください。ようやく冒険者になれるというような新人にいきなり冒険者ギルドの総括ギルドマスターからの依頼ですか!?」
「うむ、是非引き受けてほしい。そなたらにしかきっとできぬことなのじゃ」
ゆっくりまったり異世界で生きて行こうと思っていた俺は、突然の事にさすがに戸惑った。
これはどういう事だろう……まさか、ずっと未実装だった『グリーン・ウッド ファンタジア』のメインストーリーか何かだろうか?
いや、そうじゃない。
沈まれ俺のゲーム脳!
「と、とりあえず話を聞かせていただいても構いませんか?」
「もちろんじゃとも。とはいえ、そうじゃな。まずカイトよ。そなたはこの世界に存在する世界樹についてはどの程度の知識があるかのう?」
世界樹。
ゲーム名的にも『グリーン・ウッド ファンタジア』と、いかにも木に主眼を当てられた名称をしているのには当然意味がある。
この世界は巨大な一本の世界樹の膨大な根の絡まりの上に成り立つ世界というのが、このゲームの設定だ。
まるで宇宙のように何もない無の空間に存在する巨大なる世界樹。
その根が球状に張り巡らされ、そこに土が生まれ、水が生まれ、別の植物が生まれ、そして生命が生まれる。
そんな世界において、世界樹とはまさに世界そのものだといえる。
そしてそんな世界樹の分霊木ともいうべき世界各地に存在する聖霊樹。
邪なるものを払う力を秘めるとされるその聖霊樹の根元には、人の住む王国が築かれた。
この首都レイバーンを有するレイバーン王国を始めとして、世界には聖霊樹の数だけ国があり、そして聖霊樹の加護のない場所に国は生まれないとされている。
なぜなら聖霊樹の加護がなければ、その地に住まう魔物達は恐ろしい力を持つからだ。
人には生まれながらの牙も爪もない。
もちろん修練を積めば、剣や槍、それこそ拳でも戦える戦士は生まれるし、魔力を武器とする魔導士たちも生まれる。
けれど、いっぱしに戦える戦士たり得るには、その道一本に突き進むぐらいでなければならない。
人は弱く、戦士や魔導士だけでは生きてはいけない。
農夫も商人も職人も必要な生き物なのだ。
そうなれば戦うすべを持たない人間もかなりの数がいる事になり、そうした人々は聖霊樹の加護を無しに生き延びられないのだ。
もし聖霊樹の加護が突然無くなってしまえば、加護を失った人々に狂暴化した魔物の群れが押し寄せて、その地は完全な魔物の餌場となり最終的には不毛の地へと姿を変えてしまうだろう。
俺はゲームの攻略本の末尾に描かれていた設定資料集のような物を読み込んでいたので、その辺りの知識はしっかりしていたので、それをギルドマスターの前で披露した。
「その通りじゃ、よく勉強しておるのう」
「へー。あのでっかい木はそういう意味があったんだなぁ」
「って、そのくらいは知ってなさいよ、このおバカ!」
本当に知らなかったのかどうかは解らないが、ボケたことを言うロンド先生の頭をリサ先生がどこからともなく取り出したハリセンで殴り飛ばしていた。
あのハリセン初日でも使ってたよな、なんだか懐かしい。
「そこでじゃ、カイトよ。わしがそなたに頼みたい依頼というのは、そちらのリーフィアと共にこのレイバーンを守護する聖霊樹の様子を見てきてほしいというものなのじゃ」
「聖霊樹を!?」
「少しよろしいか、ギルドマスター殿。この国の聖霊樹は当然王級の内部にあるのだが、彼らに王宮に入れという事になるのではないのかな? さすがにそのレベルの事をあなたの独断で決めるのは少々厳しいのではありますまいか?」
「ふむ、確かにわしの一存だけでは難しいかもしれぬのぅ。フラグスター卿の方で何とか調整してはもらえんかのう?」
「いえ、自分は権力のかけらもありませぬ三男坊ですので」
エミリオが肩をすくめて首を振った。
フラグスター卿って……エミリオの家名か何かか。
雰囲気的に王子様な男だが……やっぱり王族、とまではいかなくとも貴族ではあるのかもしれない。
「ふむぅ……まぁ仕方ない。わしからの紹介状を書いてみよう。それを持って王宮へ行ってみてはくれぬか?門前払いされた場合でも、依頼は失敗とはみなさず報酬も支払おう。まぁ、お使い程度の報酬にはなるかもしれぬがのう」
つまり聖霊樹の元まで行けるどうかに関わらず、彼の紹介所を持って王宮まで行くだけでも依頼の達成になるわけだ。
これはおいしい話かもしれない。
「でも、なんで俺とリーフィアなんです?」
「そなたは知っておるかの?かつて聖霊樹は一度枯れかけた事があるのじゃよ」
「!」
そのギルドマスターの一言は、俺たち全員に衝撃をもたらすには十分な一言だった。
さっきも少し話したが、聖霊樹が枯れるというのは国の滅亡とほぼイコールなのだ。
「それは一体……」
「もちろん、持ち直したわい。そしてそれは『聖霊樹の巫女』と呼ばれるもののおかげであるとされておるのじゃ。かつて聖霊樹は一度その葉を枯れ落とし、その加護を失う寸前に至ったという。そしてその聖霊樹を救ったのは『聖霊樹の巫女』の祈りであったそうじゃ。そしてその『聖霊樹の巫女』は記憶を持たず、どこかのダンジョンより生まれてきた存在であったとされているのじゃ」
俺はその一言を聞いて息をのんだ。
記憶がなく、ダンジョンより生まれる……それは今俺の後ろでソファに寝転がりすやすやと寝息を立てているリーフィアとあまりに特徴が一致する……って、寝てるー!?
俺とギルドマスターと後、エミリオの難しい話に耐えられなくなったのだろう。
「………聖霊樹の、巫女、ねぇ?」
俺はソファで眠るリーフィアの方を見る。
あまりに純粋無垢な彼女は……本当に生まれたばかりなのかもしれない。
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