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第1章『聖霊樹の巫女』
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結局俺たちはギルドマスターの依頼をそのまま了承した。
まぁ、水晶玉を破壊したのを不問にしてもらったというのもあるけれど、俺としても折角王宮とかいう豪華な所を大手を振って見学できるし、何より追い返されても依頼達成という気楽さも相まって受ける事に対して前向きだったこともあるが。
「でもエミリオ。お前も一緒に来てよかったのか?」
「ん?はっはっは、まぁよいではないか。今のところ我らも冒険者となったばかりで特に用もなかったのであるしな」
「そうですね。少し便乗しているようでこちらも申し訳ありませんが」
エミリオはいつも通りの様子だったが、セレンさんは俺がロンド先生との一騎打ちに勝利してから少しだけ以前より立ててくれているような気がする。
彼女の話によれば、手加減したロンド先生と互角だったらしいから本気のロンド先生を倒した俺のことを認めてくれているのだろう。
まぁ、俺の時だってあれは、本気だったとは思えないけどな……
リーフィアは首都の大通りを物珍しげにきょろきょろとしていた。
彼女の鑑定結果からしても、ギルドマスターの予想。
ダンジョンの中で生まれたという部分はほぼ間違いないだろう。
年齢、0歳だったしな……見た目はどう見ても十六~八ぐらいなんだが。
こういうのって合法ロリ……いや、違う、逆か。
非合法成人?
「カイト、変なこと考えてる顔してる」
「なっ、べ、別にやましい事は何も考えていないぞ」
ジト目で見つめてくるリーフィアに俺は内心の冷や汗を悟られないように、ついっと視線をそらした。
でも、よく考えると目をそらした時点で負けではないだろうか。
俺も『ポーカーフェイス』のスキルほしいな……英魂のどれかになかったかなぁ。
「ん、人少なくなってきた」
「うむ、ここからは貴族街であるからな。王宮へ行くならば、この道を通るしかないのだよ」
「う~ん、俺達場違いじゃないかなぁ?」
ちなみにリーフィアの服一式は、ギルドマスターに頼んでそろえてもらった。
幸いお金に関しては俺のインベントリにあったので問題なかった。
多分しばらくは働かずに遊んで暮らせるだろう程度には入っていたので、そこは問題ない。
俺の手持ちの装備を渡してもよかったのだが……女の子向けの服とかは持ってなかったからなさすがに。
俺のアバターも普通に男性なわけで……もしこれで女性アバターでプレイしていたらどうなったんだろうな。
女性化したのか、女物を着た俺の姿があったのか……後者は、うん、想像しないようにしておこう。
「貴族の依頼を受ける冒険者というのは決して少なからずいるのだよ。ゆえに場違い感はないとは思う。それにまぁ、私も一応はその末席を汚している身だからね」
「汚しているとかじゃないです!エミリオ様は素晴らしいお方なんですから!」
自嘲気味なエミリオをセレンさんが盛り立てる、これもいつもの光景だ。
そういえば、この二人は一体どういう関係なんだろう?
一期一会ぐらいのつもりだったから、あんまり根掘り葉掘り詳しい事情を聴いていなかったからなぁ。
まぁ、俺自身の話になったら答えられなくて困るからそういう話を振らなかったのもあるけど。
考えてみれば、俺だってリーフィアと似たようなものなのだ。
リーフィアはダンジョンで生まれたのかもしれないが、俺だって考えてみれば始まりの宿場町アリアラの宿屋で生を受けたと言えるだろう。
それ以前の俺は、どこにでもいる日本の学生でしかなかったのだから。
貴族街を抜けるのに、特に問題等は起きなかった。
どこかの貴族とかに、お前らみたいな卑しい存在がここを歩くなどふさわしくない、分をわきまえろ!とか言われるのをちょっと覚悟していたんだが。
エミリオが言うように、冒険者が珍しくないのか、それともエミリオがいるから彼の従者みたいに思われたのか……
「お、見えてきたな」
「うむ、あれがこのレイバーン王国の象徴たるレイバーン城だ。そして、城内の中心部からわずかに頭を出している枝葉が見えるであろう?あれがこの国を守護する聖霊樹なのだよ」
「ここから見る分には、特に聖霊樹がどうこうなっているような様子は見られませんね」
確かにセレンさんの言う通り、城の中心から頭を出している枝葉に特に変化があるようには見えない。
ギルドマスターは『聖霊樹の巫女』の誕生が、そのまま聖霊樹の危機ではないのかと危惧してこんな依頼を俺たちに出してきたわけだが、これなら全て杞憂で済みそうだ。
「カイト、先客」
「先客?」
リーフィアが指さすのは城門の辺りだ。
聖霊樹の枝葉に注目していた俺たちは、改めて近づいてきた城門の方に視線を向ける。
するとそこには、リーフィアが言うように先客がいるようだった。
先客はフード付きのローブに身をまとい、フードを深くかぶった人物だった。
ここから見る分には男か女かもわからないが、どうやら少しもめている様子なのは門番の男の怒鳴り声から伝わってくる。
更に近づけば話の内容も耳に入ってくる。
「だから貴様のような怪しい男を、城内に入れるわけにはいかんと言っているだろうが!」
「事は一刻を争う。どうしてもというならまかり通るが構わんな?」
「ふざけるな!温厚に対応していればその態度、容赦はせんぞ!」
さっきから門番は怒鳴り散らしていたので、とても温厚に対応していた気はしないが門番の言う事にも一理ある。
どんな事情があるのかは分からないが、正面から無理やり押し通ろうとする人間を通していては、門番としては大問題だろう。
「お、おい。また誰か来たみたいだぜ?」
「あ~ん?」
静かにしていた方の門番が、怒り狂う門番の肩を叩く。
どうやら俺たちの事に気が付いたようだった。
門番二人が俺たちの方に視線を向け、不穏な発言をしていた男もこちらに振り向いた。
「!」
その時男はやたらと驚いたような表情をしていた。
フードから見えるのは金の前髪と青い瞳顎の無精ひげぐらいだが、その青い瞳が大きく見開かれて口が開いていたのだから間違いないだろう。
男は城門から離れてこちらに近づいてくる。
わずかに警戒したが、男に敵意は無いようだった。
男は俺たちの横を何の気もなくすっとすり抜けていく。
「……後は、お前たちに任せよう」
だが、そんな男は俺の横を通り過ぎざまに、ぼそっとそんな事を呟いていった。
任せる?何のことだ……?
まぁ、水晶玉を破壊したのを不問にしてもらったというのもあるけれど、俺としても折角王宮とかいう豪華な所を大手を振って見学できるし、何より追い返されても依頼達成という気楽さも相まって受ける事に対して前向きだったこともあるが。
「でもエミリオ。お前も一緒に来てよかったのか?」
「ん?はっはっは、まぁよいではないか。今のところ我らも冒険者となったばかりで特に用もなかったのであるしな」
「そうですね。少し便乗しているようでこちらも申し訳ありませんが」
エミリオはいつも通りの様子だったが、セレンさんは俺がロンド先生との一騎打ちに勝利してから少しだけ以前より立ててくれているような気がする。
彼女の話によれば、手加減したロンド先生と互角だったらしいから本気のロンド先生を倒した俺のことを認めてくれているのだろう。
まぁ、俺の時だってあれは、本気だったとは思えないけどな……
リーフィアは首都の大通りを物珍しげにきょろきょろとしていた。
彼女の鑑定結果からしても、ギルドマスターの予想。
ダンジョンの中で生まれたという部分はほぼ間違いないだろう。
年齢、0歳だったしな……見た目はどう見ても十六~八ぐらいなんだが。
こういうのって合法ロリ……いや、違う、逆か。
非合法成人?
「カイト、変なこと考えてる顔してる」
「なっ、べ、別にやましい事は何も考えていないぞ」
ジト目で見つめてくるリーフィアに俺は内心の冷や汗を悟られないように、ついっと視線をそらした。
でも、よく考えると目をそらした時点で負けではないだろうか。
俺も『ポーカーフェイス』のスキルほしいな……英魂のどれかになかったかなぁ。
「ん、人少なくなってきた」
「うむ、ここからは貴族街であるからな。王宮へ行くならば、この道を通るしかないのだよ」
「う~ん、俺達場違いじゃないかなぁ?」
ちなみにリーフィアの服一式は、ギルドマスターに頼んでそろえてもらった。
幸いお金に関しては俺のインベントリにあったので問題なかった。
多分しばらくは働かずに遊んで暮らせるだろう程度には入っていたので、そこは問題ない。
俺の手持ちの装備を渡してもよかったのだが……女の子向けの服とかは持ってなかったからなさすがに。
俺のアバターも普通に男性なわけで……もしこれで女性アバターでプレイしていたらどうなったんだろうな。
女性化したのか、女物を着た俺の姿があったのか……後者は、うん、想像しないようにしておこう。
「貴族の依頼を受ける冒険者というのは決して少なからずいるのだよ。ゆえに場違い感はないとは思う。それにまぁ、私も一応はその末席を汚している身だからね」
「汚しているとかじゃないです!エミリオ様は素晴らしいお方なんですから!」
自嘲気味なエミリオをセレンさんが盛り立てる、これもいつもの光景だ。
そういえば、この二人は一体どういう関係なんだろう?
一期一会ぐらいのつもりだったから、あんまり根掘り葉掘り詳しい事情を聴いていなかったからなぁ。
まぁ、俺自身の話になったら答えられなくて困るからそういう話を振らなかったのもあるけど。
考えてみれば、俺だってリーフィアと似たようなものなのだ。
リーフィアはダンジョンで生まれたのかもしれないが、俺だって考えてみれば始まりの宿場町アリアラの宿屋で生を受けたと言えるだろう。
それ以前の俺は、どこにでもいる日本の学生でしかなかったのだから。
貴族街を抜けるのに、特に問題等は起きなかった。
どこかの貴族とかに、お前らみたいな卑しい存在がここを歩くなどふさわしくない、分をわきまえろ!とか言われるのをちょっと覚悟していたんだが。
エミリオが言うように、冒険者が珍しくないのか、それともエミリオがいるから彼の従者みたいに思われたのか……
「お、見えてきたな」
「うむ、あれがこのレイバーン王国の象徴たるレイバーン城だ。そして、城内の中心部からわずかに頭を出している枝葉が見えるであろう?あれがこの国を守護する聖霊樹なのだよ」
「ここから見る分には、特に聖霊樹がどうこうなっているような様子は見られませんね」
確かにセレンさんの言う通り、城の中心から頭を出している枝葉に特に変化があるようには見えない。
ギルドマスターは『聖霊樹の巫女』の誕生が、そのまま聖霊樹の危機ではないのかと危惧してこんな依頼を俺たちに出してきたわけだが、これなら全て杞憂で済みそうだ。
「カイト、先客」
「先客?」
リーフィアが指さすのは城門の辺りだ。
聖霊樹の枝葉に注目していた俺たちは、改めて近づいてきた城門の方に視線を向ける。
するとそこには、リーフィアが言うように先客がいるようだった。
先客はフード付きのローブに身をまとい、フードを深くかぶった人物だった。
ここから見る分には男か女かもわからないが、どうやら少しもめている様子なのは門番の男の怒鳴り声から伝わってくる。
更に近づけば話の内容も耳に入ってくる。
「だから貴様のような怪しい男を、城内に入れるわけにはいかんと言っているだろうが!」
「事は一刻を争う。どうしてもというならまかり通るが構わんな?」
「ふざけるな!温厚に対応していればその態度、容赦はせんぞ!」
さっきから門番は怒鳴り散らしていたので、とても温厚に対応していた気はしないが門番の言う事にも一理ある。
どんな事情があるのかは分からないが、正面から無理やり押し通ろうとする人間を通していては、門番としては大問題だろう。
「お、おい。また誰か来たみたいだぜ?」
「あ~ん?」
静かにしていた方の門番が、怒り狂う門番の肩を叩く。
どうやら俺たちの事に気が付いたようだった。
門番二人が俺たちの方に視線を向け、不穏な発言をしていた男もこちらに振り向いた。
「!」
その時男はやたらと驚いたような表情をしていた。
フードから見えるのは金の前髪と青い瞳顎の無精ひげぐらいだが、その青い瞳が大きく見開かれて口が開いていたのだから間違いないだろう。
男は城門から離れてこちらに近づいてくる。
わずかに警戒したが、男に敵意は無いようだった。
男は俺たちの横を何の気もなくすっとすり抜けていく。
「……後は、お前たちに任せよう」
だが、そんな男は俺の横を通り過ぎざまに、ぼそっとそんな事を呟いていった。
任せる?何のことだ……?
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