純白少女と転生者

おすねこ

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第1章『聖霊樹の巫女』

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 その青年が降りてきてすぐに、エミリオがその場でさっと跪いた。
 その後ろではセレンもそれに倣っている。
 つまり、この青年は貴族であるはずのエミリオよりはるかに高い身分の存在、さっきの御者が口にしたレイオス王子という事なのだろう。

 俺も跪くべきかどうか迷ったが、今のところ俺はこの国の国民でもないし何より俺が跪いてもきっとリーフィアはそのまま棒立ちだろう。
 そう考えると、俺は今回はあえて跪かないことに決めた。

「久しぶりだね、フラグスター。エミリオだったかな?」

「はい、エミリオ=フラグスターでございます、レイオス殿下」

「そうか。今日はこんなところでどうしたんだい?君の父上に用事でもあるのかな?」

「いえ……今日は別件でございます。実は私、しばらく前に家を出まして冒険者と相成りまして……本日はそちらの要件にてまいりました次第です」

「ふうん」

 レイオス王子は面白そうな表情で、視線をエミリオからこちらの方へとむけてきた。

「お初にお目にかかります。冒険者、カイト=インディナルと申します」

「ああ。レイオス=グリルベリア=レイバーンだ。一応このレイバーンの第1王子をさせてもらっている。今は丁度、隣の領の視察から戻ったばかりでね。視察とは名ばかりのお忍び旅行のようなものだから、このような軽装で失礼するよ」

 軽装とは言うが、どう見ても品のよさそうな衣装に身を包んだ、まさに正真正銘の王子様だった。
 本当にお忍びだったのかすら疑わしいが、別にそこが嘘でも本当でも俺たちにとってはどうでもいい話か。

「そこのエミリオの父親は、うちの宰相でね。今は少し外交の為城を離れているが……その息子である彼の事も、僕はよく知っているよ」

「その割には名前に自信がなさそうでしたね?」

「おや、そうだったかな?」

 なんだか最近突っ込みが板についてきた気がするな……王子に対してこんな突っ込みをしていいのかと言った後に考えてしまったが、幸いこの王子はそれほど気にしないでくれたようだ。
 むしろ面白がっている風すらある。

「それで、君たちの依頼というのは何だったのかな?」

「冒険者ギルド総括ギルドマスター、サンザ=ロートスからの依頼で聖霊樹の確認に来ました」

「へえ……」

 俺の説明に、レイオス王子の目に不穏な光が宿る。
 だが、これを説明しないわけにはいかないのでどうしようもない事だ。

 彼はしばらくの間俺達、正確には俺とリーフィアの事をじっと観察しているようだった。
 さっき門番の人は後日に返答をと言っていたが、この王子は明らかにこの城のトップの人間だ。
 彼が色よい返事をくれれば、後日出直すこともなくこの依頼を達成できるのだが……

「解った、いいよ。ただし、君と君、二人だけでいいならだけどね」

 そう言ってレイオス王子が示したのは、俺とリーフィアの二人だ。
 となると、エミリオとセレンさんは一緒には入れないという事になるが……

「エミリオ、どうする?」

「私は殿下がそうと言うのであれば、従うので問題はないがな……ふむ」

 俺としてはここまで来て、エミリオやセレンさんと別れるというのも結構不安なのは確かだった。
 セレンさんは解らないが、エミリオは一応貴族なので城内に入った際にはきっと頼りになるだろうと思っていたからだ。
 それにここまで一緒にいて気心も知れているし、ここで別れるという選択は中々俺の側からは取りにくいものだが……

「いや、そうだな。では私とセレンは一度『微笑みの小麦亭』に戻っていることにしようではないか。二人の用事が終わったなら、合流するという事でどうかな?」

「ん~……」

 『微笑みの小麦亭』というのは、俺たちがリックス達と一緒に定宿にしていた安宿だ。
 本当なら四人で『微笑みの小麦亭』に戻って連絡待ちのつもりだったんだが……
 こうなってくると難しい。

 ここで「いえ、やっぱり後日でいいです」といった所で、決定を下す側の人間の一人は明らかに目の前の彼だ。
 その彼が俺とリーフィア二人でという結論を出している以上、時間を伸ばしたところで返ってくる答えは一緒の可能性が高い。
 となると、無駄に時間をかけるよりはこのまま二人で彼についていった方がまだ問題は少ない……かもしれない。

 うん、まだまだリアル冒険者は駆け出しなのだ。
 こういう時の判断力は本当に半人前だと思い知る。
 仕方ない、悩んでいるぐらいなら前に倒れるか。

「解った、じゃあ俺とリーフィアで行ってくるよ。それじゃあレイオス王子、お願いします」

「ああ。セルジオ!この二人も馬車に入れる。構わないね?」

「はっ!」

 レイオス王子の言葉に御者の人が敬礼で答える。
 こうして俺とリーフィアの二人はレイオス王子の馬車に乗り込み、王宮内部へと入っていくのだった。
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