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第1章『聖霊樹の巫女』
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「ふん、ずいぶん薄ぼんやりした小娘ではないか。こんな小娘が本当に『聖霊樹の巫女』だとでもいうのかい?」
「失礼だぞ、ベリオス!」
第二王子であるべリオスにレイオス王子は怒鳴りつけるものの、ベリオス王子の方は全くひるんだ様子は見せなかった。
ずいぶんと仲が悪いんだな。
いや、むしろこの第二王子の性格が悪いことが問題なのか?
「とにかく、そこをどいてくれないか。僕は彼ら二人を聖霊樹の所まで案内しなければならないんだ」
「へえ、それは父上の許可を得たのかい?確かに今の現状では政務を動かしているのは兄上さ。けれど、事この問題に関しては兄上の一存で決めてしまっていい事なのかな?」
「……どういう事だ?」
「国家機密だよ、事はね。それをたかが民間人風情に語ろう…いや、見せようというんだ。それにって巻き起こる可能性のある様々な不利益全てを兄上が責任を取られるのかと聞いているんだけど?」
「すでに被害が出始めている」
レイオス王子はぎゅっとこぶしを握り締めて、かみしめるように重く呟いた。
彼の瞳には、自分が見てきた惨状が写っているのかもしれない。
「これ以上手をこまねいている場合じゃない。できる手はすぐにでも打たなければ、もっといろんな場所で手遅れが出始めるだろう」
「それで何もできなければ?聖霊樹の異変を何ともできず、ただ真実だけを知った彼らの口からそれを民草の間で語られては国中がパニックに陥ることは必至だ。多くの民が別の国に流れるかもしれない。その際には多くの略奪が起こるかもしれない。そうした危険性の全てを理解した上で彼らを通そうというんだね?」
言ってる事は腹立たしいが、その内容そのものは第二王子もそう間違ったことは言っていない。
それだけ国民は聖霊樹の守護に頼り切りになっているのだろう。
実際ゲームの世界でも聖霊樹の元以外に国は存在していなかったことを考えると、この世界もまた同じである可能性が高い。
それこそが、人が聖霊樹の守護に頼っている最大の証拠だった。
となると、第二王子の懸念はもっともなのだ。
だが、それを考え始めると、存在するはずの活路すら無くなってしまうかもしれない。
「……ああ、通らせてもらう」
レイオス王子もわかっているから、俺たちを通してくれるのだ。
そんな彼の決断の言葉に第二王子はふっと鼻で笑うような蔑んだ笑みを浮かべると、それでも身体を脇にそらした。
「……行こう」
俺とリーフィアはレイオス王子に頷き返すと彼の後に従って歩き始める。
ちなみにリーフィアは、第二王子の横を通り過ぎざまに、あかんべーをしていった。
おいおい、無礼打ちになったらどうするんだ全く……
幸い第二王子はそんなリーフィアの態度にも表情一つ変えることなく、俺たちをただ見送った。
「これが………」
「ああ、聖霊樹だ」
案内された先は中庭の更に少し奥。
そこにあったのは、四階まで存在するという王城よりさらに高く聳え立つ巨木だった。
人間が何人も輪にならなければ囲えないほどの幹は力強く大地に根を張っている。
その神秘さすら感じられるその巨木は、俺がダンジョンの中でリーフィアと出会ったあの時に存在した巨木と雰囲気が非常によく似ていた。
だが、その巨木……聖霊樹はやはりどこか精彩を欠いて見えた。
幹そのものも瑞々しさがなく、乾燥したように皮がはがれかけており、見上げればそこにあるのは紅葉と呼ぶこともできない無残に枯れ果てた薄茶色の葉が茂っている。
やはり下の方は枯れかかっているのだ。
「リーフィア……」
俺の呼びかけにリーフィアは答えない。
けれど彼女は一人巨木の根元に移動すると、その場でゆっくりと跪きその両手を合わせてそっと目を閉じた。
『神への祈祷』か?
俺もレイオス王子もその様子をただ見守る事しかできないでいた。
そしてしばらく、リーフィアの体に魔力の光が集まり始めた。
その光は彼女を包み、やがて光を立ち昇らせていく。
合わせていた手を放し、両手を聖霊樹の方へと差し伸べると彼女を包む光は聖霊樹へと移っていき……幹が徐々に潤いを取り戻し、下の方から枯れ葉に緑が戻っていく。
行ける!
パンッ!
その様子に俺が拳を握り締めていると、その光は破裂音を一つ響かせて聖霊樹から消え去ってしまった。
折角取り戻していた潤いや緑も、元のカサカサの幹と枯れ葉に戻ってしまう。
「なっ……」
「………変。何かに邪魔された」
目を開けリーフィアが奇妙なことを口にした。
邪魔?
今ここにいるのは、俺とレイオス王子と彼女だけで邪魔するものなんてどこにもいないはずだが………
「どうやら失敗のようですね、兄上」
その言葉に振り向くと、そこには廊下で別れた第二王子べリオスが立っていた。
いや、彼だけではない。
彼の側には魔導士風の装束を身にまとった男が一人立っており、その背後には十数人の兵士の姿があった。
「当然だ、そんな簡単に回復するようなら誰も困りはしない。そもそもこの私が治癒させているだろう」
そう口を開いたのは、魔導士風の男……おそらく彼が枯れ始めた聖霊樹を五割程度まで回復させることができたとかいう宮廷魔術師なのだろう。
「兄上、あなたは急ぐあまりに詐欺師に引っかかったんだよ。彼らはわずかに治癒できるような可能性を見せて、治癒するためには準備がいるとか何とか言って金をせびって最後は逃げるつもりだった詐欺師か何かなのさ」
「詐欺師なんかじゃない!現にさっきだって……」
「だが、何も変わっていないだろう?それが全てさ………この詐欺師たちをひっ捕らえろ!」
全く聞く耳を持たない。
そう言わんばかりにべリス王子の指示のもと、兵士たちが俺とリーフィアの二人を拘束した。
「失礼だぞ、ベリオス!」
第二王子であるべリオスにレイオス王子は怒鳴りつけるものの、ベリオス王子の方は全くひるんだ様子は見せなかった。
ずいぶんと仲が悪いんだな。
いや、むしろこの第二王子の性格が悪いことが問題なのか?
「とにかく、そこをどいてくれないか。僕は彼ら二人を聖霊樹の所まで案内しなければならないんだ」
「へえ、それは父上の許可を得たのかい?確かに今の現状では政務を動かしているのは兄上さ。けれど、事この問題に関しては兄上の一存で決めてしまっていい事なのかな?」
「……どういう事だ?」
「国家機密だよ、事はね。それをたかが民間人風情に語ろう…いや、見せようというんだ。それにって巻き起こる可能性のある様々な不利益全てを兄上が責任を取られるのかと聞いているんだけど?」
「すでに被害が出始めている」
レイオス王子はぎゅっとこぶしを握り締めて、かみしめるように重く呟いた。
彼の瞳には、自分が見てきた惨状が写っているのかもしれない。
「これ以上手をこまねいている場合じゃない。できる手はすぐにでも打たなければ、もっといろんな場所で手遅れが出始めるだろう」
「それで何もできなければ?聖霊樹の異変を何ともできず、ただ真実だけを知った彼らの口からそれを民草の間で語られては国中がパニックに陥ることは必至だ。多くの民が別の国に流れるかもしれない。その際には多くの略奪が起こるかもしれない。そうした危険性の全てを理解した上で彼らを通そうというんだね?」
言ってる事は腹立たしいが、その内容そのものは第二王子もそう間違ったことは言っていない。
それだけ国民は聖霊樹の守護に頼り切りになっているのだろう。
実際ゲームの世界でも聖霊樹の元以外に国は存在していなかったことを考えると、この世界もまた同じである可能性が高い。
それこそが、人が聖霊樹の守護に頼っている最大の証拠だった。
となると、第二王子の懸念はもっともなのだ。
だが、それを考え始めると、存在するはずの活路すら無くなってしまうかもしれない。
「……ああ、通らせてもらう」
レイオス王子もわかっているから、俺たちを通してくれるのだ。
そんな彼の決断の言葉に第二王子はふっと鼻で笑うような蔑んだ笑みを浮かべると、それでも身体を脇にそらした。
「……行こう」
俺とリーフィアはレイオス王子に頷き返すと彼の後に従って歩き始める。
ちなみにリーフィアは、第二王子の横を通り過ぎざまに、あかんべーをしていった。
おいおい、無礼打ちになったらどうするんだ全く……
幸い第二王子はそんなリーフィアの態度にも表情一つ変えることなく、俺たちをただ見送った。
「これが………」
「ああ、聖霊樹だ」
案内された先は中庭の更に少し奥。
そこにあったのは、四階まで存在するという王城よりさらに高く聳え立つ巨木だった。
人間が何人も輪にならなければ囲えないほどの幹は力強く大地に根を張っている。
その神秘さすら感じられるその巨木は、俺がダンジョンの中でリーフィアと出会ったあの時に存在した巨木と雰囲気が非常によく似ていた。
だが、その巨木……聖霊樹はやはりどこか精彩を欠いて見えた。
幹そのものも瑞々しさがなく、乾燥したように皮がはがれかけており、見上げればそこにあるのは紅葉と呼ぶこともできない無残に枯れ果てた薄茶色の葉が茂っている。
やはり下の方は枯れかかっているのだ。
「リーフィア……」
俺の呼びかけにリーフィアは答えない。
けれど彼女は一人巨木の根元に移動すると、その場でゆっくりと跪きその両手を合わせてそっと目を閉じた。
『神への祈祷』か?
俺もレイオス王子もその様子をただ見守る事しかできないでいた。
そしてしばらく、リーフィアの体に魔力の光が集まり始めた。
その光は彼女を包み、やがて光を立ち昇らせていく。
合わせていた手を放し、両手を聖霊樹の方へと差し伸べると彼女を包む光は聖霊樹へと移っていき……幹が徐々に潤いを取り戻し、下の方から枯れ葉に緑が戻っていく。
行ける!
パンッ!
その様子に俺が拳を握り締めていると、その光は破裂音を一つ響かせて聖霊樹から消え去ってしまった。
折角取り戻していた潤いや緑も、元のカサカサの幹と枯れ葉に戻ってしまう。
「なっ……」
「………変。何かに邪魔された」
目を開けリーフィアが奇妙なことを口にした。
邪魔?
今ここにいるのは、俺とレイオス王子と彼女だけで邪魔するものなんてどこにもいないはずだが………
「どうやら失敗のようですね、兄上」
その言葉に振り向くと、そこには廊下で別れた第二王子べリオスが立っていた。
いや、彼だけではない。
彼の側には魔導士風の装束を身にまとった男が一人立っており、その背後には十数人の兵士の姿があった。
「当然だ、そんな簡単に回復するようなら誰も困りはしない。そもそもこの私が治癒させているだろう」
そう口を開いたのは、魔導士風の男……おそらく彼が枯れ始めた聖霊樹を五割程度まで回復させることができたとかいう宮廷魔術師なのだろう。
「兄上、あなたは急ぐあまりに詐欺師に引っかかったんだよ。彼らはわずかに治癒できるような可能性を見せて、治癒するためには準備がいるとか何とか言って金をせびって最後は逃げるつもりだった詐欺師か何かなのさ」
「詐欺師なんかじゃない!現にさっきだって……」
「だが、何も変わっていないだろう?それが全てさ………この詐欺師たちをひっ捕らえろ!」
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