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第1章『聖霊樹の巫女』
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ドオォォォォンッ!
「な、なんだ!?」
先手必勝電光石火。
それが俺たちの立てた作戦だった。
ニルヴィナレベルの錬金術師が錬金術を使用すれば、ドア一つ吹き飛ばす程度の爆薬ぐらいなら簡単に作成可能だ。
その素材は空き瓶の一つもあれば、空気中から水分や色々な元素を凝縮し簡単に生み出すことができる。
もちろん俺も錬金術系の英魂に付け替えれば可能なのだが、それだけで十分のクールタイムが発生するため、今回はニルヴィナにお願いしたのだ。
手ごろな空き瓶はなかったので、メイドさんが運んでいたグラスを拝借し、扉の前まで来た時にグラスの中に生成してドアに投げつけたのだ。
その場で投げて使うなら、まぁ蓋がなくても……いや、結構怖かったが、幸い俺たちへの被害は特になかった。
ドアが吹き飛んだのを確認すると、俺は素早くドアから中に入り込むと手術台のようなものに固定されているリーフィアの側に駆け寄った。
両手足が錠で繋がれているが『開錠術』がある俺なら、解放はたやすい。
「き、貴様!」
声からするとベリオス王子か。
爆発の際に発生した煙の向こうから、俺に向かって剣をかざし振り下ろしてくる。
ギンッ!
その剣は一緒に飛び込んでくれたレイオス王子が受け止めてくれた。
俺は安心してリーフィアを開放する事に集中する。
「くっ、兄上!何をするんだ!」
「それはこっちのセリフだよ、ベリオス。彼らを詐欺師呼ばわりして捕らえる……というだけならまだぎりぎり許容の範囲だった。なぜ彼女だけこんな場所に連れ込んだ?」
「それは……」
「ウインド・ブラスト」
この混乱の中、やたら冷静な男の声が聞こえたと思うと強烈な風のうねりが俺に襲い掛かった。
「がはっ!」
まるで目に見えない何かに思いきり横殴りにされたような衝撃を受けた俺は、手術台から吹き飛ばされて壁に思いきり叩きつけられた。
「カイト!」
「大丈夫…ですっ…」
そうは言いつつも体はきしむ。
くそ、後は足の錠一つだったってのに………
俺は痛む体を押さえて立ち上がると、兵士が予備に使っているらしい短剣を引き抜いた。
腰には兵士の使う剣もささっているが、今の俺のスキルで扱えるのは長剣ではなく短剣なのだからこちらの方がはるかに戦いやすい。
「やれやれ、危ないところだった。ここは城の地下だろう。そんな場所で爆薬まで使って扉を吹き飛ばし奇襲をかけてくるとはね。どうやら貴様は詐欺師ではなくテロリストだったようだ」
「誰がテロリストだ!そんな事より、リーフィアをどうするつもりだ!」
「調べているだけだ、色々とな」
「色々……だと?」
「そうだ!詐欺を働く程度の能力とはいえ、彼女の祈りはわずかながら聖霊樹に癒しをもたらそうとしたそうじゃないか!だから彼女の能力を解明し、能力も実績もあるオラスがその力を使って聖霊樹を癒す。簡単な計算式じゃないか、何がおかしい!」
自信満々に言い切ったのは、ベリオス王子だ。
「バカな!ならば彼らには礼を尽くし協力をすればいい事じゃないか。それをそのような独善的な考えに至るとは、ベリオス!お前には上に立つ者の矜持というものは無いのか!」
「もちろん持っているさ、兄上と違ってね。むしろ兄上こそ上に立つ者の矜持を持っていないじゃないのかい?聖霊樹とは国の礎だ。それを守護し、癒すにあたり他の犠牲にとらわれていてはいけない。まして兄上もご存じの通りもう、一刻の猶予もないんじゃなかったのかい?ならば未熟者の成長を待つのではなく、力あるものがその力を有意義に使うべきだ」
上に立つ者、か……
確かに上に立つ者は善意だけでは、務まらないところはあるだろう。
そういう意味においては、ベリオスの考えに頷けるものもある。
リーフィアに危害が及ぶのでなければ、存分に調べ上げてそれを生かしてくれたってかまわないかもしれない。
もちろん、彼女の了承があればの話だ。
そしてその了承を得るために、礼を尽くして協力しようというのがレイオス王子であり、話をすることなく自信を正しいと信じ横暴に事を進めるのがベリオス王子という事だ。
一見して同じ方向を向いているにもかかわらず、その過程には大きな差がそこにある。
「ふざけるな!あんたのそれはただの思考の停止だ!上に立つ者の矜持がどうとかそんな話じゃない!」
「うるさい!こうなったら仕方ない、オラス!ここで兄上もろとも皆殺しにしてしまえ!」
なんて無茶苦茶な!
変に最も大事な事だけ頭に叩き込まれた、完全なお子様の癇癪じゃないか。
「狂ったか、ベリオス!」
「狂ってるだろうね、なんせ自分の父親にも平気で毒を盛るような男だよ、ソイツは」
ニルヴィナの発言に、俺は思わず彼女の方を振り向いた。
レイオス王子はベリオス王子と剣を交えているため視線は向けなかったが、その背には動揺した気配が伝わってきていた。
「アタシはベリオス王子の依頼でその毒薬を作らされたのさ。そしてその口封じのためにアタシを牢に入れた。つまりなんだかんだ言ってるけどね、アタシがここにいる以上、ソイツにはもう後がないってことなのさ」
「な、なんだ!?」
先手必勝電光石火。
それが俺たちの立てた作戦だった。
ニルヴィナレベルの錬金術師が錬金術を使用すれば、ドア一つ吹き飛ばす程度の爆薬ぐらいなら簡単に作成可能だ。
その素材は空き瓶の一つもあれば、空気中から水分や色々な元素を凝縮し簡単に生み出すことができる。
もちろん俺も錬金術系の英魂に付け替えれば可能なのだが、それだけで十分のクールタイムが発生するため、今回はニルヴィナにお願いしたのだ。
手ごろな空き瓶はなかったので、メイドさんが運んでいたグラスを拝借し、扉の前まで来た時にグラスの中に生成してドアに投げつけたのだ。
その場で投げて使うなら、まぁ蓋がなくても……いや、結構怖かったが、幸い俺たちへの被害は特になかった。
ドアが吹き飛んだのを確認すると、俺は素早くドアから中に入り込むと手術台のようなものに固定されているリーフィアの側に駆け寄った。
両手足が錠で繋がれているが『開錠術』がある俺なら、解放はたやすい。
「き、貴様!」
声からするとベリオス王子か。
爆発の際に発生した煙の向こうから、俺に向かって剣をかざし振り下ろしてくる。
ギンッ!
その剣は一緒に飛び込んでくれたレイオス王子が受け止めてくれた。
俺は安心してリーフィアを開放する事に集中する。
「くっ、兄上!何をするんだ!」
「それはこっちのセリフだよ、ベリオス。彼らを詐欺師呼ばわりして捕らえる……というだけならまだぎりぎり許容の範囲だった。なぜ彼女だけこんな場所に連れ込んだ?」
「それは……」
「ウインド・ブラスト」
この混乱の中、やたら冷静な男の声が聞こえたと思うと強烈な風のうねりが俺に襲い掛かった。
「がはっ!」
まるで目に見えない何かに思いきり横殴りにされたような衝撃を受けた俺は、手術台から吹き飛ばされて壁に思いきり叩きつけられた。
「カイト!」
「大丈夫…ですっ…」
そうは言いつつも体はきしむ。
くそ、後は足の錠一つだったってのに………
俺は痛む体を押さえて立ち上がると、兵士が予備に使っているらしい短剣を引き抜いた。
腰には兵士の使う剣もささっているが、今の俺のスキルで扱えるのは長剣ではなく短剣なのだからこちらの方がはるかに戦いやすい。
「やれやれ、危ないところだった。ここは城の地下だろう。そんな場所で爆薬まで使って扉を吹き飛ばし奇襲をかけてくるとはね。どうやら貴様は詐欺師ではなくテロリストだったようだ」
「誰がテロリストだ!そんな事より、リーフィアをどうするつもりだ!」
「調べているだけだ、色々とな」
「色々……だと?」
「そうだ!詐欺を働く程度の能力とはいえ、彼女の祈りはわずかながら聖霊樹に癒しをもたらそうとしたそうじゃないか!だから彼女の能力を解明し、能力も実績もあるオラスがその力を使って聖霊樹を癒す。簡単な計算式じゃないか、何がおかしい!」
自信満々に言い切ったのは、ベリオス王子だ。
「バカな!ならば彼らには礼を尽くし協力をすればいい事じゃないか。それをそのような独善的な考えに至るとは、ベリオス!お前には上に立つ者の矜持というものは無いのか!」
「もちろん持っているさ、兄上と違ってね。むしろ兄上こそ上に立つ者の矜持を持っていないじゃないのかい?聖霊樹とは国の礎だ。それを守護し、癒すにあたり他の犠牲にとらわれていてはいけない。まして兄上もご存じの通りもう、一刻の猶予もないんじゃなかったのかい?ならば未熟者の成長を待つのではなく、力あるものがその力を有意義に使うべきだ」
上に立つ者、か……
確かに上に立つ者は善意だけでは、務まらないところはあるだろう。
そういう意味においては、ベリオスの考えに頷けるものもある。
リーフィアに危害が及ぶのでなければ、存分に調べ上げてそれを生かしてくれたってかまわないかもしれない。
もちろん、彼女の了承があればの話だ。
そしてその了承を得るために、礼を尽くして協力しようというのがレイオス王子であり、話をすることなく自信を正しいと信じ横暴に事を進めるのがベリオス王子という事だ。
一見して同じ方向を向いているにもかかわらず、その過程には大きな差がそこにある。
「ふざけるな!あんたのそれはただの思考の停止だ!上に立つ者の矜持がどうとかそんな話じゃない!」
「うるさい!こうなったら仕方ない、オラス!ここで兄上もろとも皆殺しにしてしまえ!」
なんて無茶苦茶な!
変に最も大事な事だけ頭に叩き込まれた、完全なお子様の癇癪じゃないか。
「狂ったか、ベリオス!」
「狂ってるだろうね、なんせ自分の父親にも平気で毒を盛るような男だよ、ソイツは」
ニルヴィナの発言に、俺は思わず彼女の方を振り向いた。
レイオス王子はベリオス王子と剣を交えているため視線は向けなかったが、その背には動揺した気配が伝わってきていた。
「アタシはベリオス王子の依頼でその毒薬を作らされたのさ。そしてその口封じのためにアタシを牢に入れた。つまりなんだかんだ言ってるけどね、アタシがここにいる以上、ソイツにはもう後がないってことなのさ」
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