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第1章『聖霊樹の巫女』
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「魔族、か……」
結局オラスが何を目的にこの国に入り込んでいたのかは分からずじまいだった。
彼の単独犯であったのか、それとも何かの大きな陰謀であったのか。
あの後俺たちは気絶したベリオスを連れて、レイオスたちと王城に戻った。
それからは本当に慌ただしくすべてが処理されていった。
ニルヴィナは国王に盛られた毒の解毒のために一度俺たちの側を離れていき、俺はベリオスを厳重に拘束した上で彼の意識を覚醒させレイオス王子と俺との尋問をスタートした。
それで分かったことは、ベリオス王子は兄への劣等感と自信が王になれるという欲望をつかれただけで、オラスにいいように利用されていただけだったという事が分かっただけだった。
実際ベリオスは、オラスが魔族であることも知らなかったようで、魔族と化した彼の遺体を見て激しく取り乱していた。
そう、オラスは俺の氷雷魔術をまともに受けて完全に絶命していた。
ゲームでなら命を奪う事なんていくらでもある。
けれど、それが実際に俺の手で現実になしえたとなると……やはり少し来るものがあった。
唯一の救いはそれを成したのが魔法であって、直接命を奪う感触が非常に薄かったという事だろう。
あと、オラスが明らかに人族に仇なす危険な魔族であったという事もだ。
この世界で、しかも冒険者として生きていくならきっとこういう事は何度となく訪れるだろう。
その度に俺は何を感じて、何に悩むことになるのか。
そしていずれはそうしたことに悩まなくなるのか。
「カイト……大丈夫?」
「ん、ああ。まぁな。それよりリーフィアこそ大丈夫なのか?」
俺自身の怪我は魔法で治療しているし、MPはじわじわと回復してきているし一晩寝ればすっかり元気になるだろう。
元気でないように見えたのは、ひとえにさっき考えていたような悩みが原因だった。
「ん、平気。でも……私が何もしてないうちに、全部終わってた」
リーフィアは少ししょんぼりした様子でそんな事を口にした。
今回彼女は完全にとらわれのお姫様ポジションだったからなぁ……俺が早めに彼女の意識を回復させていればまた違ったのかもしれないが……う~ん。
牢を脱獄しようとしたときもそうだったが、なまじ俺はチート能力があるがゆえに誰かを頼ろうという考えが薄れているのかもしれないな。
確かに輪廻士は万能職だ。
一人で色んな事ができる。
けれど、英魂の付け替えにクールタイムがある以上は、何でもかんでも万能というわけにはいかない。
レイオス王子がいなければ、スムーズにリーフィアの所まで行くことはできなかっただろうしニルヴィナがいなくて俺一人だったらオラスの猛攻で押し負けていたかもしれない。
だがよくよく考えてみると、俺は前世でもあまり人を頼った記憶はなかった。
両親は仕事で遅くまで家に帰ってこないし、俺は長男だったから弟を守るのも俺の役目だった。
もともと誰かに頼れない環境だったから、俺は結果人に頼らない成長をしていたように思う。
輪廻士をゲームで選択してソロプレイしていたのも、突き詰めていけば人に頼らないという気持ちの表れだったのかもしれない。
人は一人で生きていけはしない。
何事も自分一人で成すのではなく、必要な時には誰かを頼ることは決して悪い事ではないはずだ。
「そうだな。じゃあ次はリーフィアに一杯頑張ってもらわないとな。まぁ、その前に今度こそ聖霊樹の浄化はしないといけないし、こればかりはリーフィアに任せるしかないからな」
「ん、大丈夫、頑張る」
そう言ってぐっと握りこぶしを作って気合を入れる彼女の頭を、俺はゆっくりと撫でた。
リーフィアはそれを嫌がる事もなく、どちらかと言えば俺に身を任せてくれているように思う。
まずは彼女を頼っていこう。
そして彼女に頼られる存在であろう。
無理に焦る事もないが、そうやって目標を立てておくのは決して悪い事じゃあないだろう。
俺と彼女の関係はまだまだ始まったばかりなのだ。
結局オラスが何を目的にこの国に入り込んでいたのかは分からずじまいだった。
彼の単独犯であったのか、それとも何かの大きな陰謀であったのか。
あの後俺たちは気絶したベリオスを連れて、レイオスたちと王城に戻った。
それからは本当に慌ただしくすべてが処理されていった。
ニルヴィナは国王に盛られた毒の解毒のために一度俺たちの側を離れていき、俺はベリオスを厳重に拘束した上で彼の意識を覚醒させレイオス王子と俺との尋問をスタートした。
それで分かったことは、ベリオス王子は兄への劣等感と自信が王になれるという欲望をつかれただけで、オラスにいいように利用されていただけだったという事が分かっただけだった。
実際ベリオスは、オラスが魔族であることも知らなかったようで、魔族と化した彼の遺体を見て激しく取り乱していた。
そう、オラスは俺の氷雷魔術をまともに受けて完全に絶命していた。
ゲームでなら命を奪う事なんていくらでもある。
けれど、それが実際に俺の手で現実になしえたとなると……やはり少し来るものがあった。
唯一の救いはそれを成したのが魔法であって、直接命を奪う感触が非常に薄かったという事だろう。
あと、オラスが明らかに人族に仇なす危険な魔族であったという事もだ。
この世界で、しかも冒険者として生きていくならきっとこういう事は何度となく訪れるだろう。
その度に俺は何を感じて、何に悩むことになるのか。
そしていずれはそうしたことに悩まなくなるのか。
「カイト……大丈夫?」
「ん、ああ。まぁな。それよりリーフィアこそ大丈夫なのか?」
俺自身の怪我は魔法で治療しているし、MPはじわじわと回復してきているし一晩寝ればすっかり元気になるだろう。
元気でないように見えたのは、ひとえにさっき考えていたような悩みが原因だった。
「ん、平気。でも……私が何もしてないうちに、全部終わってた」
リーフィアは少ししょんぼりした様子でそんな事を口にした。
今回彼女は完全にとらわれのお姫様ポジションだったからなぁ……俺が早めに彼女の意識を回復させていればまた違ったのかもしれないが……う~ん。
牢を脱獄しようとしたときもそうだったが、なまじ俺はチート能力があるがゆえに誰かを頼ろうという考えが薄れているのかもしれないな。
確かに輪廻士は万能職だ。
一人で色んな事ができる。
けれど、英魂の付け替えにクールタイムがある以上は、何でもかんでも万能というわけにはいかない。
レイオス王子がいなければ、スムーズにリーフィアの所まで行くことはできなかっただろうしニルヴィナがいなくて俺一人だったらオラスの猛攻で押し負けていたかもしれない。
だがよくよく考えてみると、俺は前世でもあまり人を頼った記憶はなかった。
両親は仕事で遅くまで家に帰ってこないし、俺は長男だったから弟を守るのも俺の役目だった。
もともと誰かに頼れない環境だったから、俺は結果人に頼らない成長をしていたように思う。
輪廻士をゲームで選択してソロプレイしていたのも、突き詰めていけば人に頼らないという気持ちの表れだったのかもしれない。
人は一人で生きていけはしない。
何事も自分一人で成すのではなく、必要な時には誰かを頼ることは決して悪い事ではないはずだ。
「そうだな。じゃあ次はリーフィアに一杯頑張ってもらわないとな。まぁ、その前に今度こそ聖霊樹の浄化はしないといけないし、こればかりはリーフィアに任せるしかないからな」
「ん、大丈夫、頑張る」
そう言ってぐっと握りこぶしを作って気合を入れる彼女の頭を、俺はゆっくりと撫でた。
リーフィアはそれを嫌がる事もなく、どちらかと言えば俺に身を任せてくれているように思う。
まずは彼女を頼っていこう。
そして彼女に頼られる存在であろう。
無理に焦る事もないが、そうやって目標を立てておくのは決して悪い事じゃあないだろう。
俺と彼女の関係はまだまだ始まったばかりなのだ。
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