純白少女と転生者

おすねこ

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第1章『聖霊樹の巫女』

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 あの騒動から一日。
 俺とリーフィアは再びレイオス王子とニルヴィナを伴って聖霊樹の前にやってきた。

 ベリオス王子の姿はない。
 魔族と行動を共にしていた事やリーフィアを捕らえていた事に関しては、知らなかったや多少行き過ぎとはいえ間違いとまでは言い切れないという事で情状酌量の余地はあったのだが、王位に目をくらませて父王に毒を盛っていたのはさすがに問題と地下牢につながれていた。

 最終的には王の体調が戻った後に沙汰を下す事になるだろうが、あまり甘い罰にはなりそうになかった。

「それじゃあ、リーフィア。頼んだよ」

「リーフィア、しっかりな!」

「ん、頑張る」

 レイオス王子と俺の声援を受けて、リーフィアはぐっと握りこぶしを作った後に依然と同じように聖霊樹の前にひざまずき祈りを捧げ始めた。

 以前彼女の癒しを妨害していたのは、ほぼ間違いなくオラスだろう。
 そのオラスが存在していない今、リーフィアの祈りできっと聖霊樹は甦るはずだ。

 やがて彼女の体から光が溢れ始め、その光が聖霊樹へと移っていく。
 ここまでは前回の時とまるで同じだ。

「神秘的なもんだねぇ……こりゃあ上手くいくんじゃないかい?」

「そうだといいんだけどな……」

 ニルヴィナも俺も固唾を飲んでリーフィアと聖霊樹の様子をうかがう。
 やがて聖霊樹は根元の方からじわじわと瑞々しさを取り戻し始め、枯れた葉に緑が戻っていく。

 だがそのペースは決して早いものではない。
 じわじわと回復していくのは間違いないが、その負担はもちろんリーフィアにもかかっているだろう。
 時間がかかればかかる程に、リーフィアにかかる負担も大きくなるのだ。

 このままただ見守っているだけでいいのだろうか……
 いや、明らかにリーフィアの表情に疲れが見える。
 一割程度は回復しただろうが、完全に回復させるためには残り四割を回復させなければいけない。

 俺は昨日の内に入れ替えておいた英魂から『鑑定眼』を使用する。

HP:870/870 MP:640/1050

 まずい、もうすぐ半分を切ってしまう!
 俺は自身の所持する英魂の中から使えそうなものを探す。

 リーフィアが使用しているのは、『神への祈祷』だと思うが俺の英魂のスキルの中に同名の物は存在しない。
 最も似ているスキルは『神官プロヴァンス』の『祈り』だろう。
 だがこれは、一日一回神に祈りを捧げる事によって、ランダムに自分のステータスに強化をかける事の出来るというスキルで、決してこういう場面で使うようなものではない。

 ほかに何か助けになりそうなものは……

HP:870/870 MP:460/1050

 だめだ、考えてる場合じゃない!
 聖霊樹自体は二割ほどの回復を見ているが、このままでは全快しきる前に彼女のMPが尽きてしまう。

 回復状態がそのまま維持されるなら、日を改めて再度行えばいいのかもしれないが聖霊樹の回復などという例の無い事をしているのだ。

 祈りを止めた時点で、全て元に戻ってしまう事も十分あり得る。
 リーフィアもそれを危惧しているから、ぎりぎりまで止めようと思わないのだろう。
 俺は大慌てで上手くいきそうな英魂を見繕い付け替えを行った。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
名前:カイト=インディナル 種族:人間
性別:男 年齢:十八 職業:輪廻士ソウルリンカー
レベル:78
HP:950/950 MP:930/930(+300)
STR:100 VIT:100 AGI:100
DEX:100 INT:100(+10) MIN:100(+100)
スキル:
ソウルリンク『神官プロヴァンス』『大聖女エーデルナ』『魔導研究者エフテル』
アクティブ:『鈍器術』『神聖魔法』『祈り』『神の祝福』『神力付与』『魔道具生成』『魔導文字解読』『魔法力融合』
パッシブ:『成り上がり神官』『神に愛されしもの』『繊細魔力操作:上級』
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 スキルが一つ少ないのは『神聖魔法』でダブりが入って……って、そんな事をのんきに説明している場合じゃない。
 俺はリーフィアの元まで近づくと、彼女の隣に同じように跪いた。

 発動するのは『祈り』『神の祝福』『神力付与』『魔法力融合』の四つだ。

 本来の効果は『神の祝福』はHP回復・状態異常回復を同時に引き起こしつつ対象に能力強化を与えるもの、『神力付与』は武器や防具に神の力を与え一時的に強力な『聖』の属性をまとわせることのできる能力だ。
 無茶苦茶かもしれないが俺はこれらを『魔法力融合』で一つにする事にした。

 ただのHP回復や状態回復では効果がないかもしれないから、そこに『聖』の属性を与え『祈り』によって聖霊樹に届けるのだ。幸い『繊細魔力操作:上級』だってあるのだ。
 無茶苦茶なスキル合成でも、これで『神への祈祷』に類似した効果を持たせる事ができると信じるしかない。

「カイトからも光が!?彼も『聖霊樹の巫女』というのか……!?」

「男で巫女ってのは聞いたことないねえ。でも……いいね、回復速度が一気に増したよ!」

 よかった、意味はあったようだ!
 俺は祈りの為に片膝をついて跪き、両手を握って目を閉じているため効果を俺自身で確認できていないから確証はなかったが……これならいける!

 そしてそこからは早かった……と思う。
 正直集中していて、体感時間が無茶苦茶な状態だったからだ。
 けれど、別の感覚が俺に告げていた。
 聖霊樹の治癒は今ここに完了……した!

 俺がそれを確信して瞳を開けるが、そこに映るのは一面の白。
 眩く輝く光の白に埋め尽くされていた。

「せ、聖霊樹が……!」

 レイオス王子の言葉で、この光を放ったのは聖霊樹なのかと想像はついたが、だからと言ってどうする事も出来はしない。
 その眩い光に包まれて俺の意識はほんの一瞬ふっとかすんだ気がした。

 その一瞬の後、まるで空中に浮いているかのようにふわふわとした感覚が俺の全身を包む。
 周囲は変わらず一面の白だが、もう眩しさは感じなかった。
 それはその白が、光によるものではないという事の証だった。

「やあ、よく来てくれたね。やっと君と話ができるよ。藍原 海斗君」

 突然の本名、いや前世での名前というべきか。
 その名前を耳にして俺が声のした方に視線を向けると、そこには白衣を着た一人の男性があまりにも不似合いな事務机と椅子のセットのようなものの椅子に腰を掛けてこちらを見つめていた。
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