Liebe

花月小鞠

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第三十五話「赤い頬」

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鏡の中の自分に向かって頷き、エリーは立ち上がる。そして窓の外を確認して、エリーは楽しそうにベッドに座った。リヒトはそんなエリーの姿を頬杖をつきながら見ている。今日エリーは、デートだ。

数日前。エリーが街を歩いていると、共に働いたことのあるテオと偶然会った。驚いた後に嬉しそうな顔をするテオ。少し話をしていたら、テオは何か言いたげにエリーを見た。少し落ち着かないような挙動をして、そして真っ直ぐにエリーを見つめた。

「あのさ、今度、デートしない?」

驚いた表情をしつつ、エリーは了承した。前までずっと姉ちゃん姉ちゃんと懐いていたテオも、そんな言葉を言うようになったのだ。エリーはどこか弟の成長を見守るような気分で、楽しみにしている。しかしデートはデートだ。エリーは少し緊張したように、ベッドに座って来客を待った。


呼び鈴が鳴り、エリーはスッと立ち上がる。リヒトも置いて行かれないように、と慌ててエリーのワンピースのポケットに身を預けた。相変わらず部屋に閉じこもるウィリアムに声を掛け、エリーは玄関へ向かった。

「こんにちは、テオさん」

「ど、ども」

目の前にいるテオは、いつもより少し大人びた服装をしていた。しかし緊張しているように赤らんだ頬は、いつも通りのテオだ。エリーは微笑んで、テオを見つめる。

「今日はよろしくお願いします」

「こ、こちらこそ! よろしく」

そう言って外に出る。そして街に向かって二人で歩き始める。

「あ、あのさ、おれ、デートとかよくわかんなくてさ」

「はい」

「だ、だから、一緒に楽しめるとことか、色々考えたんだけど」

「はい」

一生懸命話すテオに、エリーは相槌を打つ。

「でも、つまんなかったら、途中でもいいから正直に言ってくれ」

不安そうな表情をするテオに、エリーは微笑む。

「大丈夫ですよ。テオさんと一緒でしたら、どこでも楽しいです」

「……そういうこと言うんだもんな、お前は」

「そういうこと?」

「なんでもねぇよ。じゃあ行くか!」

少しむず痒そうな顔をして、テオは緊張が少しほぐれたように笑った。エリーもまた、どこへ連れていってもらえるのか楽しみにしながら、テオについていく。


そうして連れていかれた場所は、大きくて賑やかな建物。様々な設備のある、遊技場だ。

「……私、ここ初めてです」

「本当か?」

少し驚いたような顔をして、テオは楽しそうに笑った。

「じゃあいっぱい楽しまねぇとな!」

「ふふ、そうですね」

二人は中に入る。まず最初に目に入ったのは、ぬいぐるみや菓子を取ることのできる機械。お菓子に反応したのか、リヒトがエリーのポケットからひょこっと顔を出す。目を輝かせて機械を見ている。

「何か欲しいもんあるか?」

「えっと、じゃあ、お菓子を」

苦笑しながら、エリーは菓子の入っている機械を指さす。その言葉に、リヒトは嬉しそうにエリーを見上げる。テオは頷いて、そして機械の前に立つ。

「よし、じゃあおれが……」

そう言って言葉を止める。エリーは不思議そうに言葉を止めたテオを見つめる。そんなエリーの方を向き、テオは笑った。

「教えるから、やってみろよ」

「わ、わかりました」

少し緊張したようにエリーは機械の前に立つ。そしてテオの説明を受けながら、機械を動かしてみる。しかし菓子は取れない。残念そうなエリーとリヒト。

「機械を止める場所言うから、その通りにやってみ」

テオがエリーにアドバイスをする。エリーは真剣な顔で頷き、再び機械に向き直った。そうして、テオの言葉通りに動かしていく。すると。

「わぁ、取れました!」

「簡単だろ?」

テオの言葉に、エリーは嬉しそうに頷いた。


その後、二人は色々な場所へ行った。主に身体を動かすような、二人で楽しめるような場所ばかり。一度も行ったことのない場所が多かったため、エリーは新鮮な気持ちで楽しんでいた。そんなエリーの手にはうさぎのぬいるぐみ。エリーに似ているから、とテオが取ったものだ。そのぬいぐるみを胸に抱きながら、エリーはテオと共に最後の場所へと向かって行く。外はもうとっくに暗くなってしまっていた。

「テオさん、次はどこに行くんですか?」

「秘密」

悪戯っぽく笑って、テオは歩いていく。先程から階段を上るばかりで、エリーは不思議そうに辺りを見回している。

「着いた」

テオのその言葉に、エリーは顔を上げる。すると、目の前にはキラキラとした景色。たくさんの光で溢れた風の都が一望でき、そして空にはたくさんの星。エリーの瞳もまた、つられたように輝いていく。

「わぁ……」

感嘆の声を漏らすエリーに、テオは照れくさそうに笑う。そして少し不安そうな表情でエリーを見つめる。

「なぁ、今日、どうだった?」

「……とっても楽しかったです。本当にありがとうございました」

エリーの言葉に、テオは安心したように息を吐いた。そして緊張したように、エリーの方を見ずに言葉を続ける。

「ま、また、行こうな」

「はい!」

二人で夜景を見つめながら、穏やかな時間を過ごしながら。エリーはぎゅっとうさぎのぬいぐるみを抱きしめた。
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