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しおりを挟むそうして、僕と師匠の冒険者生活が始まった。
・・・・そして、終わろうとしている。
それもその筈、二人でガンガン依頼をこなし、どんどんランクを上げたからだ。
ついさっきSランクに到達した。
今では『気鋭の新生』とか『叡智の賢者の生まれ変わり』とか呼ばれてる。
うん。当初の目標である『賢者』と呼ばれることに成功したのだ。
「師匠。巷では『叡智の賢者』とかって呼ばれてますよ?目標達成ですね」
「いや・・・そうなんだけどさ、なんて言うか・・・・思ってたのと違う」
不服そうな師匠を見つつも
「本当にお二人共凄いですね!!こんな短期間で、Sランクになるなんて!史上初ですよ!まるで勇者討伐に知恵を貸した『賢者・メリッサ様』のようですね!!」
興奮したように受付カウンターの女性が言う。
それもそうだ・・・実際に勇者に知恵を貸したのは、僕の隣にいる師匠本人だのだから。
それを聞いた師匠は「えぇ・・・」と言いながら僕を見る。
どうやら知らなかったようだ。
取り敢えず、お昼にしましょうと師匠と共に、冒険者ギルドを後にした。
* * *
「ねぇ、アルト知ってた?さっきの話」
「あぁ、『賢者・メリッサ様』の話ですか?知ってましたよ。と言いますか、この大陸で知らない人は居ないでしょう。英雄譚に出てくる有名人ですよ。知らないのは師匠ぐらいだと思いますよ」
納得がいかないといった顔で、昼食のチーズとチキンが挟んであるバケットに被りついている。
喉に詰まらせないと良いのだが・・・。
見ているこっちがハラハラする・・・。
「それで?この後、どうします?」
「ん~・・・そうだなぁ~大陸で有名人なら、魔族領は?あっちなら悪者とかになってるかな?それなら向うで知名度上げようよ!」
さも、いい事思いついた!と言わんばかりに言ってくる師匠。
現在の魔族はどうか知らないが、魔族内でも『賢者』として知名度があるのを僕は知っているが、言わないでおこう。
ここは夢見る師匠に付き合う事にしよう。
これからもずっと。そうする事が叶ったのだから。
それから僕達は直ぐに、魔族領へと向かった。
人の領域と魔族の領域とを阻むのは、航海が難しい海だ。
勇者はこの海を渡る時も、『賢者・メリッサ』に助言を求めた。
他には、魔法の基礎や応用。それに薬草学、あらゆる面で助言や教えを請うた。
勇者もいっそのこと旅に同行してと頼んだが、『面倒だから行きたくない』と言っていた。
大変マイペースな人なのだ、師匠は。
* * *
僕達は何の問題もなく、魔族領に入る事が出来た。
現在は魔族と人間と言った感じで前みたいにいがみ合っても居ないので、そこそこ交流がある。
魔族からしたら、人間がもたらす嗜好品等は好評で、人間からしたら魔族がもたらす魔法についての造形や知識については喉から手が出る程欲しいものだ。
つまり、いがみ合っているより手を取り合った方が得だね!ってことだ。
魔族領でも勿論、魔物が出る。
つまり、こちらにも冒険者ギルドが設立されているのだ。
昔なら考えられない事だが、いつしかそれが当たり前になる。
時間とはそう言った事の積み重ねだ。
「それで師匠、今度はどうしましょうか?」
再び僕は師匠に質問した。
何故なら、こちらの冒険者ギルドでも既に『賢者メリッサ様』の再来だ!とか言われてる。
それはそうだ。
冒険者ギルドは組織だっているのだか、冒険者カードを見れば一目瞭然だし一気にSランクまで上り詰めた僕達の噂は既に広まっていた。
そして魔族領でも『賢者』と認識されたので、目標達成だ。
「アルトぉ~おかしくない?ここ魔族領だよ?普通、魔王を倒す勇者に知恵を貸した賢者なんて憎まれない?それが何で英雄みたいになってるの?」
「言いたいことは分かりますが、勇者のおかげですよ」
「どう言うこと?」
心底、不思議そうな師匠に僕は順を追って説明した。
「いいですか?師匠。まず勇者は魔王を倒しましたよね?」
「うん、そうだね」
「次に魔王を倒した勇者は国に戻り、英雄になりました」
「うん、倒して凱旋したなら英雄になるよね」
「その後、勇者が国の実権を握るのではないか?と危惧した国王が、勇者に刺客を放ちました」
「酷い話だよね。魔族に苦しむ人々を助けたのに」
「そうですね、それでそんな事をする国王と国に愛想をつかした勇者は、魔王に転職しました」
「うんうん、勇者も転職したくなるよね」
「転職した勇者は魔王にはなりましたが、賢者に教えられた知識や勇者として培った力を、今度は魔族の為に使い、魔族の発展に貢献したんです」
「へぇ~そうなんだ。あれ?でもそんな話、今まで聞いた事あったっけ?」
森にあった家を出て、短い時間ではあるが今まで聞いた英雄譚や、魔族領で聞いた転職した魔王の話を一生懸命思い出す師匠。
気付いてくれましたか?
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