転生しても山あり谷あり!

tukisirokou

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ばんざーい!

ある兵士の一日 6

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 俺達三人は一斉に息を飲んだ。
 ここにはいないはずの、アルの首。
 それに他の皿を見ると、同期の首や体が乗っている・・・。

 何故だ?アルは非常口から出た!
 そこからは安全なはずだ!なのに、何故モンスターの食事になっている!
 訳が分からない・・・。

 ふと、振り返り他の二人を見ると、二人共顔面蒼白だ。
 当たり前だ同僚がモンスターに食われる瞬間を見ているのだから。
 欠く言う俺も同じ顔をしているだろう。

 カタンッ

 小さな音が響いた。
 アンだ。
 あまりの惨状に杖を落としたのだ。
 その音に、今までわいわいがやがや言いながら食べていた、モンスター達が一斉にこちらを見た。

(まずいっ!!非常にまずい!!)

 そう思っても後の祭り。
 俺達の姿を確認したモンスター達が、各々の武器を手に取り一斉にこちらへと向かって来た。

「二人共走れ!!」

 そう言うなり、扉を閉めた俺は落ちたアンの杖で、扉を塞いだ。
 少しばかりの時間稼ぎにはなるだろう。
 走り出した二人と一緒に手近な扉へと入る。

 何故先に逃げないかと?
 それは興奮したモンスターは、最初の一匹の先導で先に進む。
 その場合、何も考えてはいないのだ。
 動くものを追いかける。
 いちいち扉を開けて中を確認・・・などするわけがないのだ。

 ただし、この戦法などは知恵の低いモンスターに限るが・・・。
 まぁそれを裏付ける様に、モンスター達は廊下を走り去っていく。

「ねぇ・・・アルは安全なのじゃなかったの?!私達もあそこで外に出ていたら、食われてたの?!」

 取り乱したアンが言う。

「アンさん落ち着くっす。また幻かもしれないっすよ?それに耳を澄ませて欲しいっす。さっきの軍勢の二階に行ったとしても、足音がしなくないっすか?」

「・・・確かに、そうだな」

「取り敢えず、アンさん深呼吸して下さいっす」

 その言葉に、何回か深呼吸したアンは落ち着きを取り戻したようだ。
 それから、自分達が慌てて入った部屋を見回した。

 まぁ、見回すも何も、トイレの看板が出ていたので、トイレなのだが・・・。
 ここは女子トイレのようだ。

「落ち着いたようだし、トイレに花がないか確認しよう」

 そう言って、一つずつ確認をする。
 そう、忘れてはいけない。
 俺達は花を集めて、少年に渡すのがミッションなのだ。

「ねぇ、この張り紙見て」

 そうアンが言うのでギドと二人、アンの元へと行く。
 張り紙には

 “扉を三回ノックして「花子さん遊びましょう」と声を掛けて下さい”

 と書いてある・・・。

 花子って誰だ?
 しかもトイレで三回ノックをするのか?
 この場合だと二回が常識ではないのか?
 いろいろと疑問が過るが、花が関係しているのかもしれない。

 横を見ると少し涙目のアンが見える。
 先程のことでショックが大きいのだろう。
 そこへこの張り紙だ。不安が大きいだろう。

「アン下がっていろ。ギド、俺が声を掛ける」

 その言葉に素直にアンは下がり、ギドは頷いた。

 コンコンコン

 ノックを三回。

「花子さん遊びましょ」

 声を掛ける。

「はぁい」

 個室から返事がくる・・・と同時に扉が静かに開く。
 小さな女の子の口が笑みを模った瞬間、白い手に顔をわしずかみされて個室の中に引き込まれた。

 引き込まれた俺の体を、二人が懸命に引っ張る感触が服越しに伝わる。
 だが俺には手の隙間から、少女がくすくすと笑うさましか見てとれず、身体が動かない。
 暫く俺の綱引きが続いたが、いきなり後方に引っ張られてあっけなく終わった。

「あ~あ、残念。負けちゃった・・・。じゃあこれあげる」

 そう言って少女は、手を振り消えた。

「先輩!!少しは抵抗してくださいよ!!!」

「いや・・・すまん。捕まられている間、身体が動かなくてな・・・」

「もう!ホントに、しっかりしてよ!また・・・アルみたいになるかと思った・・・」

 アンは涙目で訴えてくる。
 今まで気丈に振舞っていたアンだが、こうやって見ると儚い女性だ。
 守らなければ・・・と思ってしまう。
 それ程に、この数十分の時間が大変だったと言うことだ。

「先輩!花っすよ!今度は紫っすね」

 振り向くと笑顔で、ギドが花を掴んでいた。



 その後、隣の男性用のトイレを確認したが、花は無く。
 一回の探索を終えた俺達は、二階へと階段を上り始めた。
 その途中、踊り場に嫌でも目に付く大きな鏡がある。

「こんな所に鏡?」

「ん?よく見ると、花が花瓶に飾られてるっすよ!後ろっす!」

 そのギドの言葉に後ろを振り返る。
 だが・・・花はない。花瓶すら見当たらない。

「え?なんで?」

 何度も鏡の中と、後ろを振り返るが花はない。

「もしかして・・・鏡の中に入れるとか?」

「そんなことがあるのか?」

「まぁ、あると言えばあるわ。一部の魔法道具に、鏡と鏡を繋げて行き来が出来る物があるの。でも・・・その場合は、鏡の先が映し出されるから私達の姿は映らないはず・・・」

「これはどう見ても俺達が映り込んでるな・・・と言うことはその鏡の条件には当てはまらないと言うことか・・・・」

「でも、入れるかもしれないっすよ?試してみましょうよ!」

 なんとも気軽に言うギドだ。
 だが、ギドの言うことも一理ある。
 鏡の中の花を手に入れるには、鏡に触るしか方法がないのだから・・・。

「分かった。鏡に触ってみよう」

「ちょっと待つっす!さっきから先輩ばかり危ない事を率先してるっす!ここは俺が!」

 言うなりギドは鏡に触れた。
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