異世界から来た妾とヘタレ陛下と優しい悪役令嬢

第十七話：話し合い

　食べ終えた頃は私たちだけになっていた。店の従業員もなぜかいない。

「さてと、命を狙われてるっていうのはどういうことだ」

勇者様がイラス様に尋ねてます。

「何故か、マホが狙われてる。正直犯人は全くわかってない」

イラス様はお手上げだと言った。

「マホ様の手紙には今日も襲われたって書いてあったから、お前も連れてきたんだ。本当に何もわかってないのか？」
「なに？ 今日も襲われたのか？ でもどうしてここにいるのが分かったんだ？」
「つけられてたんじゃないか？」

つけられる？ じゃあ、船の中にもあのひとたちがいたの？ 全然気づかなかった。

「で、マホ様はこれからどうするんだ。家出はやめて王宮に帰るのか？ まあ、王宮も安全とは言い難いが…」

料理に毒が混入されてた時は被害もなかったから怖くなかった。でも今回はとても怖くて、家に帰りたかった。王宮はもう私の家ではないのに。それに今さら帰れるはずもない。

「マホは何故家出したんだ？」

イラス様が尋ねてきます。

「何故って、本当にわからないんですか？ 」
「私はマホが喜んでくれると思ってた。まさか家出されるなんて、考えもしなかった」

喜ぶ？ なんで喜ぶんだろう。イラス様の言ってることがよくわからない。

「イラス、お前には女心がわからないのか？」
「私は男だ。女心がわかるわけなかろう。勇者様にはわかるのか？」
「俺にはサッパリだ。だが結婚式の招待状を送ってくる位だからお前はわかるようにならないとな」
「あれはまだ勇者様にしか送ってないんだから内密にしてくれ。結婚式はまだ先になりそうだしな」
「そのまま永久に先送りにならないといいがな」

また言い合いです。イラス様と勇者様はいつもこんな感じです。本当は仲がいいのでしょう。

「罠に引っかかったようだ」

突然勇者様が消えた。どこかに瞬間移動したようです。

「マホ。私は諦めが悪い。家出はしばらく黙認するが、私から逃げられると思うな」

イラス様が真剣な表情で私を見つめてます。何を言ったらいいのかわからない。でも言わなくては。

「私は今まで色々な教育を受けさせてもらったけど、全然この世界のこと知らなかった。イラス様がどうして私をそばに置きたいのかわからないけど、イラス様の人形って言われないようになりたい」

私の言葉にイラス様は苦笑い。そして何か言おうとして口を開く。

「犯人は捕まえたぜ。王宮に連れてくか？」

勇者様が突然あらわれてイラス様に尋ねる。

「ああ。私も連れて帰ってくれ。この事件が解決しないと何もできないからな。マホ、とりあえず元気な姿見れて安心したよ」
「かー。気障な野郎だぜ。ったく」

勇者様の声と同時に2人はいなくなった。

「マホ様は、一緒に帰らなくてよかったんですか」

マリーが聞いてくる。

「私はいいの。でもマリーは帰っても良かったのよ」
「私はマホ様の侍女ですから、いつも一緒ですよ」

イラス様に家出は黙認するって言われたけど、保護者黙認の家出ってあるのかな…。