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第三十八話:馬車での話し合い
しおりを挟む「でもよくクリスティーナ様だってわかりましたね。私はまさか彼女に嫌われてるとは思ってなかったです」
「ああ、私も彼女のことは信じてた。小さい頃から知ってるから…いまでも信じられない気持ちだ。だがマホの攫われた部屋に書置きがあってね」
「書置き?」
「マホが書いたのではなかったか…、『クリスティーナ』とだけ書かれた紙が置いてあったんだ。そして彼女の家に行って、今に至る。正直驚きの連続だよ」
イラス様も私と同じようにショックを受けているみたい。私より付き合いが長かったんだから当然だよね。
「侯爵令嬢とは年齢も釣り合ってるし、幼い頃から一緒に遊んでたくらい仲が良いのにどうしてもっと早く婚約してなかったんだ。普通は子供の頃から婚約者っているもんなんだろう?」
勇者様が不思議そうに聞いてくる。確かにそうだよね。イラス様のお父様と侯爵様は仲が良いって聞いてる。普通なら幼い頃に有無を言わせず婚約させられることの多いこの世界でこの年まで婚約者のいなかったイラス様ってとても珍しい。
「私の父は珍しいものに目がないのは話したことがあるだろう。五歳くらいのとき二人の婚約者候補があったんだ。クリスティーナ嬢と異国の姫だ。異国の姫は珍しい色の肌をしていて、それを気に入った父はその姫を婚約者にしようと考えた。それを聞いた侯爵が「肌の色で私の娘は負けるのか」って言って大げんかになったらしい。そこで一度婚約話が流れたんだ」
確かに肌の色だけで婚約者に決めるって一国の王としてどうなんだろう。イラス様も困るよね。
「一度ってことはその後も話があったのか?」
勇者様ナイスです。私も聞きたいです。
「うっ、マホと出逢った頃だ。マホを妾にした事で流れた」
聞かなければよかったよ。あの頃そんな話になってたとは…。クリスティーナ様は幼い頃からイラス様の隣に立つ教えられて育ってたのかも。だったら私の方が悪者なのかも。私がこの世界に来なければきっと二人は夫婦になってた。
クリスティーナ様がこんな事をしたのも、それに協力した侍女たちもそれが正義だったのかもしれない。もちろん、イラス様の事を譲る気はないけどクリスティーナ様たちを憎む気にはなれない。
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