ダンジョンに行くことができるようになったが、職業が強すぎた

ひまなひと

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第29話

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 家に帰り、何か手紙が届いていないかの確認をする。たいていはくだらないものだが、たまに重要なものが入っている。
(確認しておかないとな……)
と手紙の有無や重要性を確認していると、クシャクシャと折り畳まれた一枚の紙が落ちる。

 次々と入ってくる紙に押され、奥の方に眠っていたのだった。小さい紙だ。小さいものは何かしらの提出を意味していることが多い。その紙を拾い上げ、机の上に置き、皺を伸ばす。

 裏に用件や期限が書かれているものだった。それを表にして内容を見る。そこには入部届と書かれている。

「そういえばあったなー…」

 高校に入って4日目に渡された手紙だ。この高校では必ず何かしらの部活に入らなければならないという決まりがある。何も決まっていなければ、担任と一緒に部活動訪問だ。
 ある種の強制だろう。部活に顧問が必ず1人はついている。このことからわかるのは、幽霊部員になることが不可能だということだ。仲の良い先生だと幽霊部員を許してもらえるのかもしれない。だが、俺は入ってきてすぐのペーペーだ。そのため、とても仲の良い先生なんていない。

 さらに運動部にも入ることができないのだった。ダンジョンに潜っていることから、レベルは上がっており、上限のレベル5を超えている。残っているのは、文化部かダンジョン部だ。
 文化部は想像できるだろう。だが、想像できないのはダンジョン部だ。大学に入る時の面接では、「高校の時何を頑張っていましたか?」のようなことが聞かれるのは確実だ。何かしらの部活に入っていた方がいいのは正しい。

 文化部よりも、ダンジョン部に入っていた方が良さそうだとも思う。偏見だが、文化部で頑張ることってなんだ?となってしまうからだ。肉体労働の方が頑張りを強調できるだろう。
 面接を考えた結果ダンジョン部が良さそうと考えた。この高校のダンジョン部は、この地域では有名な方だ。他の高校でも似たようなことがあった。だが、怪我や死者が出てはいけないという理由から許可が降りていないのだ。

 この学校独自のものにしたいという気持ちから、了承されたのだった。今は、この学校独自の取り組みとなっている。このダンジョン部を目的として、離れたところから進学してくる人もいるようだ。

 俺がこの学校を選んだ理由?近いからだ。偏差値もまあまあの高さで家から近い、十分な理由だろう。

 この部活に入るには、問題点がある。あの勇者君が入ってくるだろうという問題だ。あの偽善じみた行動に気持ちが悪くなるだけだ。気持ち悪さで嫌悪感が出ていない。話さなければいいだろう。
 そう考え、クシャクシャの入部届に名前とダンジョン部とを書き、かばんの中に入れる。明日になれば、ここの部活の部長に持っていかなければならない。面倒くさいが、渡さなければ、もっと面倒になるだろう。さっさと渡してしまうか。

 ______
 放課後になる。

 別号館にある部室に向かうために歩いて移動しているところだ。外からは運動部の走り込みをする声やそれに対しての先生の怒号がある。そのゴミのような声をかき消すように吹奏楽部の演奏が始まる。
 提出して家に帰るだけだ。そう考え、部室の教室の前に立つ。そして、ノックを3回した。扉の向こうからは、「はーい」と明るい声がする。

「失礼します」

 ゆっくりと音が出ないように扉を開け、そう告げるのだった。そして、入部届を出しにきたことを伝えると、部長が不在のようだ。だからのんびりとソファーに座り、待つことになった。

 どんな人がいるのだろうと周囲を見渡す。部長はいないのだから、まだ始まっていないはずだ。その教室内には多くの人がいる。予想外だったのは細身の人が結構いたことだ。肉体改造部の若い筋肉ダルマだらけだと思っていたが、魔法使い系が多いようだ。

 そして、部屋の一番奥のホワイトボードには、トーナメント戦のように組まれた表がいくつかある。序列争いか? 多分序列争いだろう。仲間でありライバルかー。なんだか強そうに思えてくる。
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