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しおりを挟む「ね、宵闇さん凄いでしょ?」
「そうだな。あいつ、マジですげぇ」
正直にそう答える。他に言いようがない。とにかく凄い。他のヴィジュアル系を音楽だけじゃなく、映像や写真までひっくるめてチェックしたことはないからわからねぇけど、ベルノワールは総合的に凄いんじゃないか? これはもっと世間に認知されてもいいと思うし、エンターテイメントとして、海外にアピール出来る強みもあると思う。音楽面を強化しながら、これを生かした売り出し方を考えて行った方がいい。そこは宵闇のプロデュース力に賭けよう。
監督と話し終わった宵闇がこっちに歩いて来た。
「おつかれさまです!」
綺悧は嬉しそうに宵闇に声をかける。おうおう、見えないしっぽがパタパタしてるぞ。可愛い可愛い。
「どうだった、綺悧」
「今日もめちゃめちゃ怖かったですよ!」
宵闇は微かに笑みを浮かべて頷く。ホラーが好きな綺悧が「怖い」という感想を言うなら成功ってことか。
「30分後にEXスタジオだ」
コンクリの部屋な。演奏シーンだ。
「うぃーす」
「礼華と朱雨はどこだ」
「メイク室だと思いますよ」
そういや、さっきから見てないな。休憩か。
「綺悧、あいつらに伝えて来てくれ」
「はい!」
綺悧は気持ちのいい返事をすると、すぐにスタジオを出て行った。
「夕、今のうちにタバコ行っとけ」
「ん? ああ、そうだな」
宵闇は俺をじっと見つめて、目線をドアの方に流す。ああ、喫煙室で話そうってことか。
スタジオの隅の会議机に置いておいたタバコを持って、宵闇を振り向き、目で入口ドアを示す。宵闇は俺に着いてきた。
喫煙室は、ロビーの片隅に小さな窓が付いているだけの、息が詰まるような狭い部屋だ。このご時世、あるだけでもありがてぇと思わなきゃいけないよな。
ちょうど良く、喫煙室は無人だ。
入りながらタバコをくわえ、ドアを閉めると同時に火をつける。
「うめぇ…」
やっと、気が緩む。
ほんと、撮影現場の緊迫感は別格だ。慣れない場所だってのもあるけど。
「おつかれ。ちょっとは慣れてきたか?」
煙を吐き出す俺に、宵闇は笑顔で聞いてくれる。ああ、良かった。あの怖い宵闇じゃねぇ。素の宵闇は、やっぱりこれだよな。
怖いのもめちゃめちゃカッコいいんだけどよ。
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