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しおりを挟む「礼華」
「はい」
「お前はもう少し動いていい。ターンはもっと派手でいい。大きく見せろ」
「はい」
指摘を受けた礼華は、くるっとターンをしてみる。衣装に取り付けられたひらひらとした薄い布が、ふわりと広がって綺麗だ。
「綺悧は、もっともがけ。苦しめ」
「はい!」
「まだ余裕が見える。見せるな」
「はい!」
俺から見てたら、綺悧の全身から振り絞るようなアクションは相当苦しそうに見えたけど、あれでもまだ余裕があるように見えるのか。宵闇の要求はレベルが高い。
「朱雨、全然ぬるい」
「全然ですか」
「ああ、全然だ。見てるヤツを殺せ」
「はい」
不穏な要求だな。でも、ここまでの撮影で見た朱雨の眼差しは、確かに見る者の急所を間違いなく刺す、って感じだ。刺すだけじゃなく、殺せ、か。かなりヤバい。
「夕」
俺の番か。さあ、俺は何をしたらいい。お前の要求は、絶対にこなしてやる。
「カメラは忘れろ」
「忘れろ?」
「ああ。カメラだけじゃない。全部忘れろ」
「全部…」
全部。カメラも、ここにいるヤツらのことも、バンドのことも、ヴィジュアル系だってことも。
「お前はドラマーだ。それだけでいい。迷うな」
俺が、迷いながら叩いてることに気付いたのか。まいったな。こいつに嘘はつけねぇ。
「はい」
素直に返事をする。今、宵闇の指示は絶対だ。俺がごちゃごちゃ考えても意味はない。宵闇の指示で、あいつの考えてる世界を作ることが一番重要だ。
「よし」
大きく頷き、宵闇は定位置に戻って来る。
「お願いします」
その声で、3テイク目がスタートする。
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