Hate or Fate?

たきかわ由里

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 カメラテストでこれだ。本番はとんでもねぇことになる。
 この、自分の魅せ方を熟知してるとこは、あいつらを尊敬出来る。どのポーズが、どの角度が自分を一番カッコよく見せられるのか、研究し尽くしてる。俺は、そこんとこ甘い。叩いてる俺を誰かが見るなんて、考えたこともなかった。これからはそれも考える必要があるな。
 宵闇が「そのままのお前が撮りたい」って言ったのは、これが最初だからだ。こんな熱いヤツが加入した、っていう紹介が目的だ。これからは、俺なんかにもファンは付いてくれるだろう。いや、ファンをつけなきゃならねぇ。だから今後はそのままの俺に、人目を惹きつけるポイントを加えていく必要がある。
 俺は、もっと俺を知らなきゃいけない。
 アウトロのラスト。俺以外の全ての音が止まる。ライドシンバルだけが響く中、床に崩れ落ちた綺悧はびくともしない。すうっと空を仰ぐ礼華に対して、朱雨は疲れ果てたように項垂れる。宵闇は右手で目元を覆っている。
 この映像、間違いなくカッコいいはずだ。シンバルの音が立ち消えて行き、静寂が訪れる。
「カット!」
 監督の声で、フェードアウトしていた人の気配が戻って来た。
「宵闇くん、これ使えるよ」
「そうですか? ちょっと見ます」
 宵闇はベースをかけたまま、モニターを見に行く。プレビューを見ながら、監督と言葉を交わして頷いてる。
 見終わると、宵闇はメンバーに向かって言った。
「今のも使う。それぞれ、基本的には今の感じでいい。完璧になぞらなくて良いから、まず好きなようにやってくれ」
 そう指示を出し、少し口をつぐんで考える。
「ラストは今ので行こう」
 それぞれがはい、と返事を返す。いい雰囲気だ。
「監督、2テイク目行きます。お願いします」
 宵闇が監督に告げると、2度目のカウントダウンが始まる。
 さっきと同じように、俺らはプレイを始める。一度上がったテンションは下がらない。寧ろヒートアップしていく感覚だ。ライブで客の熱気と闘いながらぶち上がっていくのとはまた違う、独特の高揚感。
 レールのカメラはさっきと違う動きをする。テイク毎に別角度から撮っていくってことか。この本番はレール以外のカメラも2台動いている。上方からと、通常のカメラ。どちらも動きは予想出来ない。
 その複数のカメラからの視線を、こいつらは完全に把握してやがる。俺は、そんなものまで意識出来ねぇ。視界に入ったカメラに気付くだけで精一杯だ。
 さっきはカメラテストだって意識が残ってたから、他のメンバーの動きも見られたが、今回は本番だってわかってる。俺は俺らしく、そのままで。いつも通りで。それを意識すればするほど、これでいいのかという疑問が湧いてくる。
 考えたってしょうがない。今は宵闇の要求した「そのままの俺」であることをまっとうするだけだ。
 でも、「そのままの俺」って、何なんだ。どんなのがそれなんだ。あいつの目に映ってるドラマーとしての俺は、どんな俺なんだ。
 迷いが俺の邪魔をし始める。
 2テイク目が終わった。
 宵闇は再び映像をチェックする。3台分をそのまま全部見るのは時間がかかり過ぎるからだろう、早回しで見ながら、要所要所を確認しているらしい。
 その様子を、メイクと髪を直してもらいながら眺める。見ながら、時折ちらりとメンバーを見ている。
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