162 / 233
32-1
しおりを挟む◇◆◇◆◇◇◆◇◆◇◇◆◇◆◇
「候補はこんくらいか」
ポストにぶっ込まれてたチラシの裏に、ベルノワールのCDから拾い出した曲名を書きつける。現段階、25曲。
ベルノワールの資料なら宵闇んちの方が揃ってるに決まってんだけど、宵闇は昨夜からまた俺んちに泊まってる。何故ならば。宵闇んちには駐車場がなくて、近くのコインパーキングに車を入れる必要があるからだ。もったいねぇ。歩いてくのもめんどくせぇし。
だからって、泊まる必要は別にねぇんだけどな。こいつがうちまで歩いてくりゃいいだけの話で。
でも、何となくそういう流れになって…いや、別に何も色気がある流れじゃなくて。もう面倒だから泊まれってだけの話なんだけど。
で、俺は家主なのでベッドを譲る気はねぇし、かと言って客用布団もねぇし、床で寝かせんのも可哀想だし…で、一緒に寝てた。そこに一切の触れ合いはない。神に誓って、ない。
何の言い訳だ。
またダラダラと昼近くまでゴロゴロして、適当にコンビニで買って来た昼飯食って、やっとさっきからセットリストの相談を始めた。
ちなみに、夜は久し振りにリュウトくんと呑みに行くから、こいつは叩き帰す。
「これでシングル曲は出揃ってるし、定番曲も出したし…もうちょっと意外性も欲しいな」
「意外性か。じゃあ…」
全部引っ張り出したCDのブックレットをめくる。今までどんなライブやってんのか、の全貌がわかんねぇけど、あんまりやってなさそうな曲な。
「これは。Amazing Brace」
かなり暗い曲だ。難易度的にも低い。それぞれ、カウントさえきっちり取れれば大丈夫だろう。
「ああ、それいいな。あと、こっち」
「どれ」
「これ」
隣に座ってる宵闇が指さしたのは、Terrifying Child。これ、緩急が面白い曲なんだよな。
「いいじゃねぇか。入れようぜ」
その2曲を書き足す。これで27曲な。
まず立てた基本線は、本編13曲。アンコール3曲。ダブルアンコールで2曲。合計18曲。
今上がってんのが27曲。単純にウケそうな曲を上から18曲ピックアップすりゃいいわけじゃなくて、聴いてもらいたい曲とか、緩急とかメリハリのバランスを取るのに入れた方がいい曲、なんかも考慮する。勿論、ファンが「この曲で暴れたい」って思ってる曲も入れて、期待には是非応えたい。俺だって、ケルベロスのライブ行ったら、絶対にKerberos聴きたいもんな。
「じゃ、1日目から決めてくか」
「ラストはIlluminatiを置くよ」
「安定だな」
「ダメかな?」
「いや。いいんじゃねぇか? ファンもベルノワール見た! って気持ち良く満足出来るだろ」
ラスト定番、最高の暴れ曲だからな。俺なんかの100倍ベルノワールのライブの空気を知ってる宵闇が言うんだから、そりゃ間違いないだろう。セットリストは、宵闇主導で決めた方がいい。
「1曲目にHateを持って来るか、Die in Bloodを持って来るか…」
宵闇は唸りながら、候補曲を見つめる。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
0
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる