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しおりを挟む「腹減ったー。モツ鍋は塩にする? 醤油にする?」
「醤油」
いやいや、モツ鍋にするかどうかから確認しろよ。食うけど。
「馬刺しは盛り合わせでいいよね?」
「いいよ」
馬刺しを食うかどうか以下略。いつものこった。
「ステーキも食いたいなぁ…黒豚炙りと…」
可愛らしい見た目に反して、こいつは俺より断然肉食だし、量も食う。
「俺、辛子蓮根とエイヒレな」
「了解。俺、ステーキ200gにするけど、優哉は何g?」
「俺は焼き鳥でいいわ。そこの4種盛り」
「何だ。がっつり食えよー」
「モツ鍋と馬刺しとサーロインステーキと黒豚炙りはがっつり行き過ぎだろ」
「そう?」
そう、そして細かいことは気にしない。俺を上回る雑さだ。こんなヤツがあの繊細なキーボードプレイを見せるってとこに、音楽の神の遊びを地味に感じる。
ボトルと水割りセットを持って来た店員に、リュウトくんは食事のオーダーを通す。モツ鍋は4人前。俺には見えないあと2人がいるらしい。
「サーロインステーキって、200gより上行けます?」
「はい?」
俺が店員でも、はい? って言うわ。
「300g出来ますか?」
「確認しますね」
店員はインカムを通して確認をとる。暫しの間。これ絶対厨房で協議してるわ。
「お待たせしました。この100gと200gを足したお値段で宜しければ」
「全然いいですよ! お願いします」
どこの世界にモツ鍋3人前とステーキ300gと馬刺しと黒豚炙りをいっぺんに食う、華麗なるプログレキーボーディストがいるんだ。ここに一人いるわ。怖いわ。
俺はモツ鍋も1人前で充分だぞ。
店員が引っ込むと、リュウトくんは俺の水割りを作り始める。
「あれから優哉、まだ忙しいの?」
ディスコードのライブ以来だから…会うのは半月ぶりか。
「忙しいよ。リハと撮影と取材とでさ」
「いやー、流石人気バンドだね!」
「シングルのリリースがもうすぐだからな」
「じゃあ、まだ暫く忙しいね」
「来月の2days終わるまでは忙しいな」
そこまで、ほんとにまるっとオフの日は一日しかねぇんだよな。それも、出来ればリハに充てたいぐらいだけど。でも、休みもないと死ぬもんな。特に宵闇が。
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