171 / 233
33-1
しおりを挟む◇◆◇◆◇◇◆◇◆◇◇◆◇◆◇
夕方、宵闇と駅まで歩いてそこで別れ、俺は京急に乗る。リュウトくんは高田馬場住みだから、間をとって乗り換え駅の品川で落ち合う。
宵闇は一緒に来たそうな顔してたけど、来るとややこしいから知らん顔してやった。そもそも、お前リュウトくん知らねぇだろ。リュウトくんは人懐っこいから、全然抵抗ないだろうけど。ん? じゃあ連れて来ても問題なかったのか?
いや、リュウトくんが面白がってまぜっかえすだろうから、これで正解だ。
リュウトくんお気に入りの、焼酎居酒屋で待ち合わせだ。リュウトくんと呑む時はここが多い。
リュウトくんは可愛らしい顔してるけど、高知出身でやたらめったら酒が強い。つられて呑むとひどい目に合う。今日は連れ帰ってくれる宵闇がいないから気を付けねぇとな。明日はスタジオ仕事あるし。
先に到着したから、予約してた席に座って、ツイッターを開く。昨日、綺悧と撮った写真に「リハーサル絶好調!」って文章をつけたツイートに、いくつかリプライが付いてる。「可愛いツーショットですね! 目の保養ありがとうございます」とか「当日コスプレして行きます。初めて夕さんを見るのが楽しみです」とか。俺は何書いていいんだかわからんから、いつもこんな感じで短文なんだけど、それでもリプライしてくれるファンには感謝だ。かと言って、気の利いた返事も出来ねぇから「ありがとう」「楽しもうな」とか簡単なことしか言えねぇ。俺の感謝の気持ち、伝わってくれ。念じてもしゃーねぇけど。
ついでにタイムラインもチェックする。フォローしてんのは、メンバーとバンド公式、あとは付き合いのあるバンドマン。
バンド公式は、明日のMV公開の告知、ライブ予定の告知、リリースの告知。綺悧は瓶と一緒に自撮りしてる。お、マヌカハニー買ったのか。のど飴より更にいいだろうな。礼華の写真は、いろんなピック。使い比べてみてるらしい。朱雨は串カツに生ビール。もう呑んでやがる。せっかくのオフだからな。楽しめ。
宵闇、帰ってすぐにツイートしてるな。パソコンがちらっとだけ写ってる。MV完成しました、寝ます、か。そうだな、すぐに寝てくれ。その前にセットリストのメールだけ流してくれな。明日も何だかんだ打ち合わせで、お前は休みじゃないもんなぁ。ちょっと心配だ。
明日、レコーディングが早く終わったら、何か差し入れ持って行ってやろうか。でも、俺が行ったら休まらねぇかな。顔出さねぇ方がいいのかな。
俺が何か美味いもんでも作れれば、体力つくもん食わせてやれるんだけど。やっぱチキンラーメンじゃダメだよな。
ここんとこ、ずっと毎日会ってたから、明日は会わないのかと思うと妙な感じだ。そんな日も、そりゃあるんだけど。
会いたいんだよなぁ…さっきまで一緒にいたけどさ。だって、惚れてんだもん。仕方ねぇだろ。
「お待たせ!」
背後から肩を叩かれる。
「おう、リュウトくんおつかれ」
長い茶髪を後ろでまとめてキャップを被ったリュウトくんが、俺の向かい側に座る。俺もスマホを置いて、座り直す。
「何呑む何呑む?」
リュウトくんはキャップを取ると、速攻で焼酎のメニューを開いて選び始める。俺は普通に呑めるけど、特別焼酎が好きなわけじゃないから、リュウトくんにお任せだ。
「安定の富乃あたり? 赤霧? 赤兎馬?」
いつも通り、ボトルまるごと空ける気だ。マジで恐ろしいヤツ。
「何でもいいわ。あ、俺は水割りな」
「はいはい」
リュウトくんが呼び出しボタンを押すと、タイミングよく通りかかった店員がオーダーを聞いてくれる。
「赤霧、ボトルで。それと水割りセット」
店員が立ち去ると、今度は食事メニューを開く。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
三十六日間の忘れ物
香澄 翔
ライト文芸
三月六日。その日、僕は事故にあった――らしい。
そして三十六日間の記憶をなくしてしまった。
なくしてしまった記憶に、でも日常の記憶なんて少しくらい失っても何もないと思っていた。
記憶を失ったまま幼なじみの美優に告白され、僕は彼女に「はい」と答えた。
楽しい恋人関係が始まったそのとき。
僕は失った記憶の中で出会った少女のことを思いだす――
そして僕はその子に恋をしていたと……
友希が出会った少女は今どこにいるのか。どうして友希は事故にあったのか。そもそも起きた事故とは何だったのか。
この作品は少しだけ不思議な一人の少年の切ない恋の物語です。
イラストはいもねこ様よりいただきました。ありがとうございます!
第5回ライト文芸大賞で奨励賞をいただきました。
応援してくださった皆様、そして選考してくださった編集部の方々、本当にありがとうございました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
神様の住まう街
あさの紅茶
キャラ文芸
花屋で働く望月葵《もちづきあおい》。
彼氏との久しぶりのデートでケンカをして、山奥に置き去りにされてしまった。
真っ暗で行き場をなくした葵の前に、神社が現れ……
葵と神様の、ちょっと不思議で優しい出会いのお話です。ゆっくりと時間をかけて、いろんな神様に出会っていきます。そしてついに、葵の他にも神様が見える人と出会い――
※日本神話の神様と似たようなお名前が出てきますが、まったく関係ありません。お名前お借りしたりもじったりしております。神様ありがとうございます。
椿の国の後宮のはなし
犬噛 クロ
キャラ文芸
架空の国の後宮物語。
若き皇帝と、彼に囚われた娘の話です。
有力政治家の娘・羽村 雪樹(はねむら せつじゅ)は「男子」だと性別を間違われたまま、自国の皇帝・蓮と固い絆で結ばれていた。
しかしとうとう少女であることを気づかれてしまった雪樹は、蓮に乱暴された挙句、後宮に幽閉されてしまう。
幼なじみとして慕っていた青年からの裏切りに、雪樹は混乱し、蓮に憎しみを抱き、そして……?
あまり暗くなり過ぎない後宮物語。
雪樹と蓮、ふたりの関係がどう変化していくのか見守っていただければ嬉しいです。
※2017年完結作品をタイトルとカテゴリを変更+全面改稿しております。
視える僕らのシェアハウス
橘しづき
ホラー
安藤花音は、ごく普通のOLだった。だが25歳の誕生日を境に、急におかしなものが見え始める。
電車に飛び込んでバラバラになる男性、やせ細った子供の姿、どれもこの世のものではない者たち。家の中にまで入ってくるそれらに、花音は仕事にも行けず追い詰められていた。
ある日、駅のホームで電車を待っていると、霊に引き込まれそうになってしまう。そこを、見知らぬ男性が間一髪で救ってくれる。彼は花音の話を聞いて名刺を一枚手渡す。
『月乃庭 管理人 竜崎奏多』
不思議なルームシェアが、始まる。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
10年引きこもりの私が外に出たら、御曹司の妻になりました
専業プウタ
恋愛
25歳の桜田未来は中学生から10年以上引きこもりだったが、2人暮らしの母親の死により外に出なくてはならなくなる。城ヶ崎冬馬は女遊びの激しい大手アパレルブランドの副社長。彼をストーカーから身を張って助けた事で未来は一時的に記憶喪失に陥る。冬馬はちょっとした興味から、未来は自分の恋人だったと偽る。冬馬は未来の純粋さと直向きさに惹かれていき、嘘が明らかになる日を恐れながらも未来の為に自分を変えていく。そして、未来は恐れもなくし、愛する人の胸に飛び込み夢を叶える扉を自ら開くのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる