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◇◆◇◆◇◇◆◇◆◇◇◆◇◆◇
昨日のリハーサルは、今日の最終日を残して87点の出来だった。目指してたのは90点だから、ちょっと足りない感じはあるけど、今日のリハーサルで緊張感を煽ってやれば届くんじゃないかって手応えがある。
確かに、綺悧はレコーディングで、宵闇からのプレッシャーで潰れかけた。でも、ファンからのプレッシャーは別物みたいだ。
ライブが近付けば近付くほど、目が生き生きとして来たし、Hate or FateのMVへのリアクションの話をしてもそうだ。
「こんなにリアクションがいいと、ライブもかなり期待されてるよね!」
なんて、楽しそうに言ってる。
それはあの気の小さそうな礼華でもそうで、ファンからの言葉に臆してるところはまったくなさそうだ。朱雨は言わずもがな。見るからに臨戦態勢だ。
こいつら、ほんとにライブが好きだ。最高だな。緊張感とプレッシャーを与えてやれば、軽く90点に手が届くだろう。
リハーサル前、全員が集合したところで宵闇から皆に伝える。
「今日は最終日だ。予定していなかったが、今日はゲネプロ形式でリハをする」
昨夜の帰り道に二人で打ち合わせた。これが一番効き目があるはずだ。
「鏡はないが、当然ステージングも意識してやってくれ」
スタジオの変更はきかなかったから、鏡張りのスタジオってわけにはいかなかったけど、そこんとこはこいつらも経験を重ねてるし、テイクワンネクストも初めてじゃない。どんなステージングをすれば良いのかはわかってる。
揃って「はい!」と答え、セッティングを始める。明日が本番、というのはそれぞれ意識してるんだろう。いつにも増して真剣な面持ちだ。
俺も本番のつもりで、ドラムのセッティングにかかる。実際はローディーがつくんだけど、何かありゃ自分にもかかってくるからな。最悪、ローディーがいなくても出来るくらいの体勢にしておく。出来るだけスピーディーに、正確に。慣れてるからってなめてると、思いがけないトラブルが起きるもんだ。
トラブルが起きるんなら、ゲネプロのうちに起こした方がいい。本番での予防と対処に役立つ。
礼華のギターの弦が妙な音を立てて切れた。チューニングをしていた礼華は「あっ」と呟いて、すぐに予備の弦を探し出して取り替え始める。今で良かったよな。それにしても、冷静じゃねぇか。手際も悪くねぇ。そりゃ、昨日今日始めた初心者じゃねぇから当たり前なんだけど、こういう事態にオタオタしそうなイメージだったから安心した。実際はサブ機を準備するから、その場で張り替えるわけじゃねぇけど、突発的なトラブルに対する心構えの問題だ。
綺悧の声出しはいい調子みたいだ。毎日の筋トレで体力が付いてきたのか、少しだけど安定感と持続力が出て来た。リハーサルの最後の方は息切れしてたのが、そこまでもつようになってきてる。声の出し方は、勿論まだ修正出来てねぇけど、これだけ真面目にやってんなら、ボイトレ始めたら確実に身につけてくる。
朱雨の方は問題なくスムーズに準備が完了して、ウォームアップを始めてる。充分とは言わねぇが、左手の運指も安定してスピードアップしたし、細かいテクニックもそれ程ブレずに使えるようになってんな。アップストロークとダウンストロークの音も随分均一になって、聴き苦しくない。
宵闇の音は、更にどっしりして来てる。フレーズのセンスとかリズム感は元々問題ねぇし、タイム感は俺とほぼ一緒だから一体感がハンパなく気持ちいい。そこで一音一音を重くはっきり出すようにさせたから、めちゃくちゃ俺好みのベーシストになりつつある。絶対まだまだ良くなるからな、相棒よ。
「そろそろいけるか」
頃合を見て、宵闇が声をかけると全員から「はい」の返答が返って来る。
昨日のリハーサルは、今日の最終日を残して87点の出来だった。目指してたのは90点だから、ちょっと足りない感じはあるけど、今日のリハーサルで緊張感を煽ってやれば届くんじゃないかって手応えがある。
確かに、綺悧はレコーディングで、宵闇からのプレッシャーで潰れかけた。でも、ファンからのプレッシャーは別物みたいだ。
ライブが近付けば近付くほど、目が生き生きとして来たし、Hate or FateのMVへのリアクションの話をしてもそうだ。
「こんなにリアクションがいいと、ライブもかなり期待されてるよね!」
なんて、楽しそうに言ってる。
それはあの気の小さそうな礼華でもそうで、ファンからの言葉に臆してるところはまったくなさそうだ。朱雨は言わずもがな。見るからに臨戦態勢だ。
こいつら、ほんとにライブが好きだ。最高だな。緊張感とプレッシャーを与えてやれば、軽く90点に手が届くだろう。
リハーサル前、全員が集合したところで宵闇から皆に伝える。
「今日は最終日だ。予定していなかったが、今日はゲネプロ形式でリハをする」
昨夜の帰り道に二人で打ち合わせた。これが一番効き目があるはずだ。
「鏡はないが、当然ステージングも意識してやってくれ」
スタジオの変更はきかなかったから、鏡張りのスタジオってわけにはいかなかったけど、そこんとこはこいつらも経験を重ねてるし、テイクワンネクストも初めてじゃない。どんなステージングをすれば良いのかはわかってる。
揃って「はい!」と答え、セッティングを始める。明日が本番、というのはそれぞれ意識してるんだろう。いつにも増して真剣な面持ちだ。
俺も本番のつもりで、ドラムのセッティングにかかる。実際はローディーがつくんだけど、何かありゃ自分にもかかってくるからな。最悪、ローディーがいなくても出来るくらいの体勢にしておく。出来るだけスピーディーに、正確に。慣れてるからってなめてると、思いがけないトラブルが起きるもんだ。
トラブルが起きるんなら、ゲネプロのうちに起こした方がいい。本番での予防と対処に役立つ。
礼華のギターの弦が妙な音を立てて切れた。チューニングをしていた礼華は「あっ」と呟いて、すぐに予備の弦を探し出して取り替え始める。今で良かったよな。それにしても、冷静じゃねぇか。手際も悪くねぇ。そりゃ、昨日今日始めた初心者じゃねぇから当たり前なんだけど、こういう事態にオタオタしそうなイメージだったから安心した。実際はサブ機を準備するから、その場で張り替えるわけじゃねぇけど、突発的なトラブルに対する心構えの問題だ。
綺悧の声出しはいい調子みたいだ。毎日の筋トレで体力が付いてきたのか、少しだけど安定感と持続力が出て来た。リハーサルの最後の方は息切れしてたのが、そこまでもつようになってきてる。声の出し方は、勿論まだ修正出来てねぇけど、これだけ真面目にやってんなら、ボイトレ始めたら確実に身につけてくる。
朱雨の方は問題なくスムーズに準備が完了して、ウォームアップを始めてる。充分とは言わねぇが、左手の運指も安定してスピードアップしたし、細かいテクニックもそれ程ブレずに使えるようになってんな。アップストロークとダウンストロークの音も随分均一になって、聴き苦しくない。
宵闇の音は、更にどっしりして来てる。フレーズのセンスとかリズム感は元々問題ねぇし、タイム感は俺とほぼ一緒だから一体感がハンパなく気持ちいい。そこで一音一音を重くはっきり出すようにさせたから、めちゃくちゃ俺好みのベーシストになりつつある。絶対まだまだ良くなるからな、相棒よ。
「そろそろいけるか」
頃合を見て、宵闇が声をかけると全員から「はい」の返答が返って来る。
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