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しおりを挟む「もう、今日は成功する気しかしなくなってきた」
「成功しねぇわけねぇだろ。俺がいてさ」
「違いない」
吸殻を灰皿に入れ、スマホの時計を見る。ちょっとゆっくりしたな。
「そろそろ楽屋帰るか」
「ああ、行こう」
宵闇もタバコを消して、喫煙室を出る。ステージの方からは、えらく重くて速い音が響いて来てる。これがサンドリオンか。良さそうじゃねぇか。
楽屋に戻ると、3人は楽しそうな様子で話してる。礼華と朱雨はギターを抱えてた。
「おかえりなさい!」
綺悧が笑顔で俺らを迎える。
「宵闇さん、今話してたんですけど」
「何だ?」
宵闇は、いつも通りにリーダーらしい落ち着きで答える。うん、大丈夫だな。
「Tearsのイントロ。俺のアカペラから入るのってどうかなって相談してたんです」
すげぇ。こいつら、そんなことまで自発的に考えるようになってたのか。大したもんじゃねぇか。
今まで宵闇のワンマンは、こいつらに意見がないってとこで成立してた。別に、こいつらの意見を封じて成り立たせてたワンマンじゃねぇ。ヤツらもそれを理解してる。だから、これはいい方向に動いてる。
「どんな感じで?」
宵闇も、穏やかに聞き返す。陣頭指揮は取ってきてるけど、他人から見えるような、威圧するリーダーじゃねぇからな。
「えーっと…朱雨くん、さっきのやってみよ」
「あいよ」
朱雨がギターを構えると、綺悧は歌い始めた。
「My dear corpse of tears」
サビの一部分だ。抜き出すなら、ここが印象的で的確だ。
「Gouge out my heart.My heart which still freezes」
最後の方に、朱雨のアルペジオが切なく重なって、消える。単純だけど、よく引き立つ。朱雨のピッキングも整っていて引っかかりがない。
やるじゃねぇか。そう来なきゃな。
「で、ここから同期入って通常通りに」
「ああ、なるほど」
宵闇は、俺の表情を横目で確認して頷く。こいつも同じように考えてたなってのを確信する。
気を付けるべきことは。
「テンポはもう少しだけ落とせ。途中で走ったりモタったりしないように。朱雨は綺悧のテンポにきっちり合わせろ」
そう、それだ。こういうのは、フリーに聞こえて、実はそういうところをしっかり守らないとグダグダに聴こえるんだ。
「はい!」
「わかりました」
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