Hate or Fate?

たきかわ由里

文字の大きさ
205 / 233

36-12

しおりを挟む

「もう、今日は成功する気しかしなくなってきた」
「成功しねぇわけねぇだろ。俺がいてさ」
「違いない」
 吸殻を灰皿に入れ、スマホの時計を見る。ちょっとゆっくりしたな。
「そろそろ楽屋帰るか」
「ああ、行こう」
 宵闇もタバコを消して、喫煙室を出る。ステージの方からは、えらく重くて速い音が響いて来てる。これがサンドリオンか。良さそうじゃねぇか。
 楽屋に戻ると、3人は楽しそうな様子で話してる。礼華と朱雨はギターを抱えてた。
「おかえりなさい!」
 綺悧が笑顔で俺らを迎える。
「宵闇さん、今話してたんですけど」
「何だ?」
 宵闇は、いつも通りにリーダーらしい落ち着きで答える。うん、大丈夫だな。
「Tearsのイントロ。俺のアカペラから入るのってどうかなって相談してたんです」
 すげぇ。こいつら、そんなことまで自発的に考えるようになってたのか。大したもんじゃねぇか。
 今まで宵闇のワンマンは、こいつらに意見がないってとこで成立してた。別に、こいつらの意見を封じて成り立たせてたワンマンじゃねぇ。ヤツらもそれを理解してる。だから、これはいい方向に動いてる。
「どんな感じで?」
 宵闇も、穏やかに聞き返す。陣頭指揮は取ってきてるけど、他人から見えるような、威圧するリーダーじゃねぇからな。
「えーっと…朱雨くん、さっきのやってみよ」
「あいよ」
 朱雨がギターを構えると、綺悧は歌い始めた。
「My dear corpse of tears」
 サビの一部分だ。抜き出すなら、ここが印象的で的確だ。
「Gouge out my heart.My heart which still freezes」
 最後の方に、朱雨のアルペジオが切なく重なって、消える。単純だけど、よく引き立つ。朱雨のピッキングも整っていて引っかかりがない。
 やるじゃねぇか。そう来なきゃな。
「で、ここから同期入って通常通りに」
「ああ、なるほど」
 宵闇は、俺の表情を横目で確認して頷く。こいつも同じように考えてたなってのを確信する。
 気を付けるべきことは。
「テンポはもう少しだけ落とせ。途中で走ったりモタったりしないように。朱雨は綺悧のテンポにきっちり合わせろ」
 そう、それだ。こういうのは、フリーに聞こえて、実はそういうところをしっかり守らないとグダグダに聴こえるんだ。
「はい!」
「わかりました」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

同級生

真田直樹
青春
主人公:新田里奈(にった・りな) 彼氏:藤川優斗(ふじかわ・ゆうと) 二人の共通のクラスメイト真奈 (まな) 同じ高校の同級生 笑 涙 人生を一生懸命に生きる物語 大学時代にある女性との関係で二人の仲は揺るぎない物になる

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

妻への最後の手紙

中七七三
ライト文芸
生きることに疲れた夫が妻へ送った最後の手紙の話。

200万年後 軽トラで未来にやってきた勇者たち

半道海豚
SF
本稿は、生きていくために、文明の痕跡さえない200万年後の未来に旅立ったヒトたちの奮闘を描いています。 最近は温暖化による環境の悪化が話題になっています。温暖化が進行すれば、多くの生物種が絶滅するでしょう。実際、新生代第四紀完新世(現在の地質年代)は生物の大量絶滅の真っ最中だとされています。生物の大量絶滅は地球史上何度も起きていますが、特に大規模なものが“ビッグファイブ”と呼ばれています。5番目が皆さんよくご存じの恐竜絶滅です。そして、現在が6番目で絶賛進行中。しかも理由はヒトの存在。それも産業革命以後とかではなく、何万年も前から。 本稿は、2015年に書き始めましたが、温暖化よりはスーパープルームのほうが衝撃的だろうと考えて北米でのマントル噴出を破局的環境破壊の惹起としました。 第1章と第2章は未来での生き残りをかけた挑戦、第3章以降は競争排除則(ガウゼの法則)がテーマに加わります。第6章以降は大量絶滅は収束したのかがテーマになっています。 どうぞ、お楽しみください。

恋とキスは背伸びして

葉月 まい
恋愛
結城 美怜(24歳)…身長160㎝、平社員 成瀬 隼斗(33歳)…身長182㎝、本部長 年齢差 9歳 身長差 22㎝ 役職 雲泥の差 この違い、恋愛には大きな壁? そして同期の卓の存在 異性の親友は成立する? 数々の壁を乗り越え、結ばれるまでの 二人の恋の物語

遠回りな恋〜私の恋心を弄ぶ悪い男〜

小田恒子
恋愛
瀬川真冬は、高校時代の同級生である一ノ瀬玲央が好きだった。 でも玲央の彼女となる女の子は、いつだって真冬の友人で、真冬は選ばれない。 就活で内定を決めた本命の会社を蹴って、最終的には玲央の父が経営する会社へ就職をする。 そこには玲央がいる。 それなのに、私は玲央に選ばれない…… そんなある日、玲央の出張に付き合うことになり、二人の恋が動き出す。 瀬川真冬 25歳 一ノ瀬玲央 25歳 ベリーズカフェからの作品転載分を若干修正しております。 表紙は簡単表紙メーカーにて作成。 アルファポリス公開日 2024/10/21 作品の無断転載はご遠慮ください。

芙蓉は後宮で花開く

速見 沙弥
キャラ文芸
下級貴族の親をもつ5人姉弟の長女 蓮花《リェンファ》。 借金返済で苦しむ家計を助けるために後宮へと働きに出る。忙しくも穏やかな暮らしの中、出会ったのは翡翠の色の目をした青年。さらに思いもよらぬ思惑に巻き込まれてゆくーーー カクヨムでも連載しております。

エリート警察官の溺愛は甘く切ない

日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。 両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉

処理中です...