【大スカ 小スカ 1話完結オムニバス】一ノ瀬家は我慢できない!

なまご

文字の大きさ
5 / 18
【 次男 】剛毅

キャラ紹介小説・後編【小スカ】

しおりを挟む


それから俺は、谷崎に連れられて寮の部屋に戻っていた。
「俺」という人間が揺らいで、息すら潜めて、ただ情けない姿を晒して立っていることしか出来ない。
そんな俺に対して、谷崎は顔を覗き込んで、予想外に ふはっ、と小さく声を出して笑った。

「なに死にそーな顔してんだ?良かったじゃん、俺しか見てねーよ」

狭い部屋で小便の臭いが鼻腔を刺激して、濡れそぼった布が肌に冷たく張り付いて、落ち着かない。
緊張して、残った尿意がむずむずと膀胱を刺激する。
だけど頭に響く嗤い声はいつの間にか消えていた。

「とっとと着替えちまおうぜ」

そう言うと谷崎が俺の制服に手をかけようとした。
俺は咄嗟にその手を掴む。俺の手は大げさなくらいに震えていた。

「任せとけって言ったろ」

粗野な口調とは裏腹に諭すような柔らかい声だ。
顔は見れないが、谷崎は俺に対して悪意を持っていない……と思う。
それでも俺は谷崎が――他人が怖くて、もう、放っておいてほしかった。
自分で制服のボタンに手をかけるがブルブル震えて一つのボタンも外せないままに、谷崎に優しく手を払いのけられた。

学ランが取り払われ、カッターシャツのボタンを外され、脱がされる。すぐにバスタオルを羽織らされた。

「やっぱスゲー鍛えてんなァ。俺も朝起きたらマッチョになってねーかな…」

その軽口に答えることが出来なかったが、谷崎は最初から答えなど求めていないように淡々と作業を続けた。
濡れたズボンに手がかかった時、俺は、我慢できずに小便を漏らしてしまって、ぐしょぐしょに濡れて小便の臭いを放つそれを、同じ歳の赤の他人に処理してもらおうとしているという、その事実に目の前がクラクラした。
膀胱が締め付けられて、小便が出そうになる。
こいつは――谷崎はこの状況をどう思ってる?
緊張がピークになり体の震えが大きくなる俺を見て、谷崎が再び顔を覗き込んだ。

「具合わりーか?すぐ終わらせちまうわ」

手際よく下着ごとズボンが下ろされ、濡れたそこが外気で一気に冷える。
すぐに温かく濡れたタオルで覆われたが、外気で冷えた瞬間縮こまった膀胱から意図せず小便が出てきてしまった。

「ァ…ッ」

チョロロロロ……

フローリングを叩く水音。
思ったより膀胱に溜まっていた小便が為す術なく音を立てて足元に広がっていく。
脚を伝う小便が熱い。
さっきと同じだ。
それにあの頃と――

ハァ、ハァ、と耳触りな音に気がついた。
俺の呼吸の音だ。
括約筋に力が入らない。濡れたタオルに当たって小便がジョー、とくぐもった音を立てている。
止まらない。
うるさい、呼吸の音が、頭に、響いて―― 

「大丈夫大丈夫。どーせ掃除すんだから全部出しちまえよ」

パニックになりそうな俺に、谷崎が軽い調子でそう言った。
手が汚れるのも構わずタオルを当てたままにしてくれている……。

狭い部屋に俺から流れ出る小便の間抜けな音が響く。
すでに濡れていた靴下がたっぷりの水分を含んで、呼吸する度にポンプのように水面を揺らす。
俺はこの状況に胸が締め付けられた。
おしっこが止まっても身動ぎ一つ出来ず、もはや直視できない現実を前に俺がただじっと目を瞑って立ち尽くしている間に、谷崎はテキパキと片付けを続ける。
時々声をかけられるが頭に入ってこなかった。




少しして、肩を持って促されるままにベッドに腰をかける。何か言わなければと思うのに、声を出すどころか顔すら上げられない。

助けてくれた。
でも後から酷い目に遭うかもしれない。
それなのに、膝に少し触れる谷崎の高めの体温にひどく安心してしまう。

谷崎はただの他人だ。
また、あんな風に、俺は――

……嫌だ。知ってる。ちゃんと知ってるから。
僕を見ないで。いじめないで。

「…………苦…し……」

思わず口をついて出た言葉は、過去からきたのか、今の苦しさなのか、自分でも分からない。

ただ谷崎は、やはりあまり悩まずに反応した。
汗ばんだ背中を抱えるように谷崎の手が少し雑に置かれる。

「そりゃそうだろ。俺に合わせてゆっくり呼吸してみな」

背中の手から、谷崎の呼吸が微かに伝わってくる。
気づけば短く浅くなっていた呼吸を、必死でそれに合わせていた。

スゥー……、ハァー……

ゆったりとした呼吸。
自分でも不思議だった。
谷崎は他人なのに、信用なんかしたら危険だと思ってるのに、次第に気持ちが落ち着いていく。

ようやく少し視線を上げると、谷崎が俺の背中を叩き、八重歯を見せて笑った。

「何でも適当でいいんだぜー、剛毅。あ、名前嫌なんだっけ?一ノ瀬だな」
「…………」

喉が詰まって声が出ないのに、なぜ俺はそれでも、そう言ってしまったのか分からない。

「名前、そのままでいい……」

掠れる声でそう呟くと、谷崎が声を出して笑った。
いつも誰かの笑い声が聞こえるとき、心臓が締め上げられるように苦しくなるのに、たれ目を細めて笑う谷崎のその笑い声は、不思議と怖くない。
それが俺は、なんだか怖かった。


「な、なん……で……お、俺の……」 
 
上手く言葉が出てこなくて、最後まで言えなかった。
震えていて、つっかえて…………弱い…。

「なんでって、お前が――」

谷崎が何か言いかけて、少し言葉を切った。

「まあ、ほっとけねーじゃん。お前なんかかわいいし?」
「は……?かわい……わけ、ねぇ…だろ…… 」

予想の斜め上の答えに戸惑う俺を見て、谷崎がまた声を出して笑った。

「ほら、そーいうとこ!いいじゃん、俺好きだぜ。子供みてーで」

からかわれてるのか…。
俺は急に恥ずかしくなってきて、顔がカァッと熱くなるのを感じてその場から逃げたくなった。

「…お前も…子供だろ……」

小さく言い返す俺に谷崎がニヤリと笑う。

「いや、俺のが年上だぜ、きっと。91%くらいの確率で」
「…は…?…何だよ、それ……」

どこまで本気で言ってるのか分からないけど、これは多分谷崎流のコミュニケーションなんだと俺は思った。


「ま、改めてよろしくな、剛毅」

返事をしない俺に、「ツンツンなのそのままかよ~」と谷崎がマイペースに笑う。
視線を落とすと左腕の時計が目に入った。
もう迷惑をかけたくない。
普通に見えるように、あわよくばそうなれるように。

これは、その第一歩だ。





――――――――――――――――

   あとがき


次男の剛毅でした。
設定どこまでどう出していいのか、どこまで谷崎に心を許していいのか、ものすごく悩みました。

あんまり重くなりすぎてなければいいんですが。

いつかスピンオフで掘り下げようと思ってるので、そのときはよかったら読んでみてください。
もちろんおもらしもバッチリ入れます(笑)

プロットは完成してるんですが、執筆時間がねぇ……。

一人称視点でいったので、谷崎がどういうやつなのかちょっと謎のまま終わってしまいました。
もう、スピンオフで語れたらいい……のかな?





しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

熱のせい

yoyo
BL
体調不良で漏らしてしまう、サラリーマンカップルの話です。

BL 男達の性事情

蔵屋
BL
 漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。 漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。  漁師の仕事は多岐にわたる。 例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。  陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、 多彩だ。  漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。  漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。  養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。  陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。  漁業の種類と言われる仕事がある。 漁師の仕事だ。  仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。  沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。  日本の漁師の多くがこの形態なのだ。  沖合(近海)漁業という仕事もある。 沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。  遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。  内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。  漁師の働き方は、さまざま。 漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。  出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。  休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。  個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。  漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。  専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。  資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。  漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。  食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。  地域との連携も必要である。 沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。  この物語の主人公は極楽翔太。18歳。 翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。  もう一人の主人公は木下英二。28歳。 地元で料理旅館を経営するオーナー。  翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。 この物語の始まりである。  この物語はフィクションです。 この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。

Memory

yoyo
BL
昔の嫌な記憶が蘇って、恋人の隣でおねしょしてしまう話です

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

ナースコール

wawabubu
大衆娯楽
腹膜炎で緊急手術になったおれ。若い看護師さんに剃毛されるが…

スライムパンツとスライムスーツで、イチャイチャしよう!

ミクリ21
BL
とある変態の話。

笑って誤魔化してるうちに溜め込んでしまう人

こじらせた処女
BL
颯(はやて)(27)×榊(さかき)(24) おねしょが治らない榊の余裕が無くなっていく話。

処理中です...