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第三十八話【目を反らしたいもの】後
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「やっぱ【DPV】だよな」
なかに入っていたのは、冬真も出演したことのあるダイナミクス向けのPlay DVDとやはりダイナミクス向けの雑誌だった。
ゲイ向けの奴だけかと思えば、男女の物もあることにある意味ブレないと思いながらとりあえず取り出してみる。
「あ、俺のだ。ってこれ裏のか」
一時期誘われて参加した裏向けの無修正のものが出てきたこと少し驚く。確かにこれは、DVDしかないはずだけどどこから手に入れたのか。よく見てみれば、どれもその類らしく、定期的にどこかで買っていたのかもしれないと納得する。
実のところあまりいい思い出がないが、それでも力也にとって慰みになっていたのなら気分が少しはれる。
「好みとかわかんねぇな」
ダイナミクス向けはどれも似たような物が多く、パッケージだけ見ても全然わからない。自分のやったのはわかるけど、露出、緊縛、強姦とバラバラで好みの傾向があるのかもわからない。見てみればわかるかと、チラリとテレビを見るが、気が進まず頭をかくと元に戻した。
気に入っていたのが例え他の人のだとしてもヤキモチを焼く気はないが、ただ見る気分にならない。
「やめた」
DVDと雑誌すべてを箱に戻すと、二つの箱を再びしまう。力也のしたいことも、気になることも本人に直接聞けばいい。
恥ずかしがるかもしれないが、それはそれでいいし、力也もどうしてもしたかったら何らかの行動をするはずだろう。
むしろ、こそこそみるよりそれのほうがずっといい。探り探りでも、反応を見て色々していければそれでよかった。
「くっそ、会いてぇ」
今すぐ会って、甘やかしたい。箱を見たと言えばきっと恥ずかしがるだろう、恥ずかしがって睨む、それを見たい。
睨む力也に謝りながらキスをして、沢山褒めて、甘やかして、できることなら“うざい、しつこい”と言われたい。
力也は“やめてほしい、もういい”とはいうけどそこまでキツイ言葉はつかわない。だからこそ、その容赦のない言葉を聞きたいと思った。
拒否したらもうもらえないと思うほど手加減しているつもりはないが、まだ足りないならもっとやろうと思う。力也からすれば勘弁してほしい内容だろうが。
(でもそこがかわいいんだよな)
あの頃はできなかった。Domたちの命令や、金の為にわが身を削り裏に自ら出演するSubたちは、冬真の物ではなかった。
むろん、奪おうと思えば奪えた冬真にはそれだけの伝手があった。それでも、できなかった。Subたちは冬真の助けを必要とはしていなかったのだ。
ヒーローになりたかった。弱い人を救い愛されるヒーローに。でも、冬真にできたことはヒーローではなく、悪役になることだけだった。
悪役になり、本心とは思えないSubの望み通りに虐め、辱める。そうすれば、Subたちは、自らにとって唯一のご主人様に愛される。結局のところ、それさえもPlayの一部なのだ。
そんな冬真が心行くまで愛を囁き、褒めたたえ、甘やかす、それができるのは力也だけだ。
人々を救うヒーローである力也を愛するのが悪役など、なかなかに滑稽な話だろう。
「早く帰ってこねぇかな」
そう思い、ベッドに寝転がった冬真はあくびをした。まだ力也は帰ってこないと思っているうちに睡魔が襲う。
気づけば、冬真はそこにいた。見慣れた社内の一室に見覚えのある男たちがいる。男たちの足元には一人の女性が土下座をしていた。
「お願いします」
「そうはいっても……」
「俺はパス」
「お願いします」
必死に頼み込む彼女の痛々しい姿に、気分が悪くなる。不意に男たちの一人が冬真を見た。それにつられるように彼女も冬真を見た。
「俺がやる」
「え、できんの?」
「できる」
そう言いながら、彼女の傍にいくと片足をつき視線を合わせた。なにをやるかは聞いていない、でもこんな状態をこれ以上みていることはできない。
なによりここにいる男たちは本当のDomとは言えなかった。表にでているAV男優と比べても素人、この状態のSubを任せる気になどならなかった。
「ありがとうございます」
きっとお礼を言われるようなことではないと思いながらも、冬真は痩せて震えるその背をなでた。
場面は移り変わり、今度は裏のDVD用の部屋になっていた。薄暗いその部屋で彼女と向かい合うその瞬間、目が覚めた。
「くっそ、悪夢かよ」
よりによって思い出したくない内容を見せられたことに、かぶりを振り気分を変えるようにスマホを見る。そこには力也からのメッセージがあったことを知らせる通知がでていた。
「力也だ」
仕事が終わったから帰るというメッセージを期待しながら開けば、そこには全く反対の内容が書かれていた。
【今夜は泊まり決定】
「んだよ」
つまりは帰ってくる時間もないということだ。先ほどの悪夢も合わせ一気に気分が落ちていく。せっかく待っているのに、会えないとわかればイラつきさえ覚える。
力也は冬真が待っていることも、部屋にいることも知らない。それなのに怒るのは筋違いだろう。
イラつく自分を抑え、なんて送ろうか考える。泊まり決定と書いてあるからまだ終わってないのかもしれない。
せめて声を聞きたい。そう思いながらとりあえずショックを受けているスタンプを送る。
これで、すぐに既読がつけば……そう思ったのに既読はなかなかつかず。冬真はため息をつき、もう一度ベッドに倒れた。
【早く休めよ。おやすみ】
それだけ送るとすべてを諦め、今夜は力也のベッドを占領することに決めた。今度は力也の匂いの残る枕を代わりに抱え込み眠りにつく。
まるで初恋かのように、愛しい人が夢にでてくることを期待して。
なかに入っていたのは、冬真も出演したことのあるダイナミクス向けのPlay DVDとやはりダイナミクス向けの雑誌だった。
ゲイ向けの奴だけかと思えば、男女の物もあることにある意味ブレないと思いながらとりあえず取り出してみる。
「あ、俺のだ。ってこれ裏のか」
一時期誘われて参加した裏向けの無修正のものが出てきたこと少し驚く。確かにこれは、DVDしかないはずだけどどこから手に入れたのか。よく見てみれば、どれもその類らしく、定期的にどこかで買っていたのかもしれないと納得する。
実のところあまりいい思い出がないが、それでも力也にとって慰みになっていたのなら気分が少しはれる。
「好みとかわかんねぇな」
ダイナミクス向けはどれも似たような物が多く、パッケージだけ見ても全然わからない。自分のやったのはわかるけど、露出、緊縛、強姦とバラバラで好みの傾向があるのかもわからない。見てみればわかるかと、チラリとテレビを見るが、気が進まず頭をかくと元に戻した。
気に入っていたのが例え他の人のだとしてもヤキモチを焼く気はないが、ただ見る気分にならない。
「やめた」
DVDと雑誌すべてを箱に戻すと、二つの箱を再びしまう。力也のしたいことも、気になることも本人に直接聞けばいい。
恥ずかしがるかもしれないが、それはそれでいいし、力也もどうしてもしたかったら何らかの行動をするはずだろう。
むしろ、こそこそみるよりそれのほうがずっといい。探り探りでも、反応を見て色々していければそれでよかった。
「くっそ、会いてぇ」
今すぐ会って、甘やかしたい。箱を見たと言えばきっと恥ずかしがるだろう、恥ずかしがって睨む、それを見たい。
睨む力也に謝りながらキスをして、沢山褒めて、甘やかして、できることなら“うざい、しつこい”と言われたい。
力也は“やめてほしい、もういい”とはいうけどそこまでキツイ言葉はつかわない。だからこそ、その容赦のない言葉を聞きたいと思った。
拒否したらもうもらえないと思うほど手加減しているつもりはないが、まだ足りないならもっとやろうと思う。力也からすれば勘弁してほしい内容だろうが。
(でもそこがかわいいんだよな)
あの頃はできなかった。Domたちの命令や、金の為にわが身を削り裏に自ら出演するSubたちは、冬真の物ではなかった。
むろん、奪おうと思えば奪えた冬真にはそれだけの伝手があった。それでも、できなかった。Subたちは冬真の助けを必要とはしていなかったのだ。
ヒーローになりたかった。弱い人を救い愛されるヒーローに。でも、冬真にできたことはヒーローではなく、悪役になることだけだった。
悪役になり、本心とは思えないSubの望み通りに虐め、辱める。そうすれば、Subたちは、自らにとって唯一のご主人様に愛される。結局のところ、それさえもPlayの一部なのだ。
そんな冬真が心行くまで愛を囁き、褒めたたえ、甘やかす、それができるのは力也だけだ。
人々を救うヒーローである力也を愛するのが悪役など、なかなかに滑稽な話だろう。
「早く帰ってこねぇかな」
そう思い、ベッドに寝転がった冬真はあくびをした。まだ力也は帰ってこないと思っているうちに睡魔が襲う。
気づけば、冬真はそこにいた。見慣れた社内の一室に見覚えのある男たちがいる。男たちの足元には一人の女性が土下座をしていた。
「お願いします」
「そうはいっても……」
「俺はパス」
「お願いします」
必死に頼み込む彼女の痛々しい姿に、気分が悪くなる。不意に男たちの一人が冬真を見た。それにつられるように彼女も冬真を見た。
「俺がやる」
「え、できんの?」
「できる」
そう言いながら、彼女の傍にいくと片足をつき視線を合わせた。なにをやるかは聞いていない、でもこんな状態をこれ以上みていることはできない。
なによりここにいる男たちは本当のDomとは言えなかった。表にでているAV男優と比べても素人、この状態のSubを任せる気になどならなかった。
「ありがとうございます」
きっとお礼を言われるようなことではないと思いながらも、冬真は痩せて震えるその背をなでた。
場面は移り変わり、今度は裏のDVD用の部屋になっていた。薄暗いその部屋で彼女と向かい合うその瞬間、目が覚めた。
「くっそ、悪夢かよ」
よりによって思い出したくない内容を見せられたことに、かぶりを振り気分を変えるようにスマホを見る。そこには力也からのメッセージがあったことを知らせる通知がでていた。
「力也だ」
仕事が終わったから帰るというメッセージを期待しながら開けば、そこには全く反対の内容が書かれていた。
【今夜は泊まり決定】
「んだよ」
つまりは帰ってくる時間もないということだ。先ほどの悪夢も合わせ一気に気分が落ちていく。せっかく待っているのに、会えないとわかればイラつきさえ覚える。
力也は冬真が待っていることも、部屋にいることも知らない。それなのに怒るのは筋違いだろう。
イラつく自分を抑え、なんて送ろうか考える。泊まり決定と書いてあるからまだ終わってないのかもしれない。
せめて声を聞きたい。そう思いながらとりあえずショックを受けているスタンプを送る。
これで、すぐに既読がつけば……そう思ったのに既読はなかなかつかず。冬真はため息をつき、もう一度ベッドに倒れた。
【早く休めよ。おやすみ】
それだけ送るとすべてを諦め、今夜は力也のベッドを占領することに決めた。今度は力也の匂いの残る枕を代わりに抱え込み眠りにつく。
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