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3、優しいあなた

出資の話

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 食事が済みレストランを出ると、生駒は「俺の部屋で飲み直さないか」と貴広を誘った。

 貴広は、来るときに車を停めた高級マンションを思い出した。個人の邸宅の敷地を半分空けて建てたものらしい。

 祖父が亡くなって、葬儀や手続きや、あれやこれやで札幌と東京を往復していたときに、東京モノレールのホームでその広告を見た。銀行やゼネコンなどの札幌支店長が、単身で赴任するときを想定しているようだった。

 生駒はまさにそれだ。面倒な指令を与えられてのこととはいえ、三十代で支店長なんて、サラリーマンとしては特上の部類に入る。

 そんなお高いマンションの中を見てみたい気もしたが。

「いや。もう充分だ。帰るよ」
「まだ全然飲んでないじゃん。もうちょっといいだろ」
「いやいや」

 ここでお持ち帰りされてなるものか。生駒がどういう積もりでいるのか不明だが、貴広は今さら生駒とどうこうしたい気持ちはない。万にひとつでも誤解を招く言動は慎みたい。

「ごちそうさま」

 貴広は生駒のふるまってくれたフレンチフルコースとワイン二本に礼を言った。

「いや。俺が食いたかったから。つき合ってくれてどうもな」
「じゃ」
「あ。お前の店への出資の話。あっちの方はマジだから」

 貴広は顔をしかめた。

「もっといい運用先いくらでもあるだろ。ウチの店じゃあ、年五も六も利子払えんぞ」

 一般的に言って、年五%や六%の利益が出ない案件は出資先としては弱すぎる。

「うん、そうだな。でも、考えてくれよ」

 生駒は小さな声でつけ足した。

「お前の力になりたいんだ」

(はあ……)

 貴広は懐疑的な声を咽の奥に呑み込んだ。

 生駒はそれ以上とくに食い下がりもせず、ふたりは駅で別れた。
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