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魔人化した魔王は僕に猛攻を仕掛ける。
速く、力強い斬撃の前に防戦一方の僕。
どちらも魔人化をすれば、元々強い魔王に分があるのは当然だろう。
「フフフ、魔人化した私の攻撃を防げるとは大したものだ!」
「くっ!」
技を繰り出せるのはあと一発が限界だ。
焦るな! 僕はチャンスを待つ。
押されながらも、しばらく剣の応酬が続く。
しぶとく粘る僕にイラつき始めた魔王の攻撃が荒くなってくる。
「くそ! しぶといな……死ね!」
魔王の大振りの攻撃を繰り出す。
やっと来たチャンス。
今だ!
僕はガラ空きの魔王の顔の前に手を開く。
「む!?」
光魔法
「ぐわぁっ!」
強烈な光が魔王の視界を奪う。
「く、くそぉ!」
今しかない。
閃光にたじろき、距離をとる魔王に詰め寄る。
剣を握る拳に力を込める。
この一撃で決めるしかない。
「うおぉぉ!」
僕は魔王に斬りかかる。
「くそっ! 魔王をなめるなよ!」
視界が回復しないまま、魔王は全身から黒い炎を放出させる。
「うっ!」
熱風に怯み、一瞬剣を振るうのが遅れた。
そのスキを魔王は見逃さなかった。
『ガッ!』
魔王は僕の剣を掴む。
「なに!?」
魔王の魔法だろうか。掴まれた剣はみるみる紫色に変色していく。そして……
『バキッ!』
「そ、そんな……」
「フフフ、残念だったな」
僕の勇者の剣は粉々に砕けていった。
「け、剣が……」
ここまで共に戦ってきた相棒を失い、絶望する僕に魔王は剣を振り下ろす。
「キモオタ! 今度こそ終わりだぁ!」
「くっ」
僕にはもう身を守る剣はない。
しかし、諦めるわけにはいかない。
僕は魔王の剣を避けようと後ろに下がるが……ダメだ。避けきれない……
「くっ……!」
「木本君!」
「え? アスカさん!?」
その瞬間、僕と魔王の間にアスカさんが割って入る。
『グサッ』
「あ、あぁ……」
「うぅ……木本君、大丈夫……か?」
「アスカさん……」
「よかった。無事……だな……」
僕を庇うようにのしかかるアスカさん。
その背中には魔王の剣が刺さり、地面には血溜まりができている。
「アスカさん!」
「ふふ……泣くんじゃない。まだ終わってない……ぞ……」
力なく微笑むアスカさん、僕は涙を流していた。
「まったく……人がプレゼントした剣を……あんなにされて……これを……使え……」
アスカさんは自分の剣をぼくに手渡す。
「頼んだぞ……」
「うう……」
アスカさんの声は弱々しくなっていく。
「お姉ちゃーんッ!」
サクラちゃんの泣き叫ぶ声。
「うぅ……いつまで倒れてるの! キモオタ! いけー!」
「サクラちゃん……」
強いな……サクラちゃんは。泣いてる場合じゃない!
僕は立ち上がる。アスカさんが身を挺して作ってくれた最後のチャンスだ。
「アスカさん、ちょっと待っててくださいね……」
返事はなかった。早く治療をしなければ……
「フフフ、命拾いしたな。何度やっても同じだ。もうお前に魔力は残っていない」
再び、空中の黒い光から剣を創り出す魔王。
全部コイツのせいか。今まで感じたことのないような静かな強い怒りに満ちていた。
僕はアスカさんの剣を握りしめる。
「だまれ、貴様だけは許さない!」
僕は魔王に飛びかかる。
「うおおお!」
「ぐっ、どこにそんな力が!?」
「許さないぞ!」
限界が近い体のはずだが、怒りのせいでパワーアップしているのか僕の攻撃は魔王を圧倒した。
魔王は離れて、黒い弾丸を放つ。
今の僕には全てがスローモーションに見える。
僕は弾丸全てを斬り落とす。
「こんなもんか?」
「くそぉ!」
魔王は剣を両手で握りしめる。魔王にも焦りが見える。
かつてないピンチなのは魔王も同じなのだろう。
次の攻撃が最後だ。
全ての力を放出する僕の体は金色に輝いている。
「はぁはぁ、人間なんかに……負けるわけにはいかないんだ!」
魔王も最後だと感じているのだろう。全力を込めて剣を振る。
「うおおおお!」
憧れの最強冒険者、アスカさんの剣に力を込める。
アスカさん、見ててください。
キモオタ・ストラッシュ!
「ぐあぁぁ……」
魔王のうめき声がこだまする。
僕の攻撃が……アスカさんの剣が、魔王の体を貫く。
「う、うぅ……こんなはずでは……」
崩れ落ちる魔王。
「キモオタ、キサマ……ぐ……」
命を失った魔王の体は砂のように粉々になっていった。
全力を使い果たした僕もその場に倒れる。
「キモオタ君!」
心配そうに駆け寄るガイド。よかった、これでガイドの世界も守られた。
「ガイド……やったよ……」
「は、はい……」
しかし、ガイドはあまり嬉しそうではない。
「……うぅ……アスカさんは!?」
「……」
うつむくガイド。
「お姉ちゃん……お姉ちゃんッ!」
倒れるアスカさんに呼びかけるサクラちゃん。
「アスカさん……魔王に勝ちましたよ……ハハ……いつまで寝てるんですか……?」
「お姉ちゃん……」
「……アスカさん?」
こうして、魔王は滅び、この世界に平和が訪れた。
しかし、その世界にはアスカさんはいなかった。
速く、力強い斬撃の前に防戦一方の僕。
どちらも魔人化をすれば、元々強い魔王に分があるのは当然だろう。
「フフフ、魔人化した私の攻撃を防げるとは大したものだ!」
「くっ!」
技を繰り出せるのはあと一発が限界だ。
焦るな! 僕はチャンスを待つ。
押されながらも、しばらく剣の応酬が続く。
しぶとく粘る僕にイラつき始めた魔王の攻撃が荒くなってくる。
「くそ! しぶといな……死ね!」
魔王の大振りの攻撃を繰り出す。
やっと来たチャンス。
今だ!
僕はガラ空きの魔王の顔の前に手を開く。
「む!?」
光魔法
「ぐわぁっ!」
強烈な光が魔王の視界を奪う。
「く、くそぉ!」
今しかない。
閃光にたじろき、距離をとる魔王に詰め寄る。
剣を握る拳に力を込める。
この一撃で決めるしかない。
「うおぉぉ!」
僕は魔王に斬りかかる。
「くそっ! 魔王をなめるなよ!」
視界が回復しないまま、魔王は全身から黒い炎を放出させる。
「うっ!」
熱風に怯み、一瞬剣を振るうのが遅れた。
そのスキを魔王は見逃さなかった。
『ガッ!』
魔王は僕の剣を掴む。
「なに!?」
魔王の魔法だろうか。掴まれた剣はみるみる紫色に変色していく。そして……
『バキッ!』
「そ、そんな……」
「フフフ、残念だったな」
僕の勇者の剣は粉々に砕けていった。
「け、剣が……」
ここまで共に戦ってきた相棒を失い、絶望する僕に魔王は剣を振り下ろす。
「キモオタ! 今度こそ終わりだぁ!」
「くっ」
僕にはもう身を守る剣はない。
しかし、諦めるわけにはいかない。
僕は魔王の剣を避けようと後ろに下がるが……ダメだ。避けきれない……
「くっ……!」
「木本君!」
「え? アスカさん!?」
その瞬間、僕と魔王の間にアスカさんが割って入る。
『グサッ』
「あ、あぁ……」
「うぅ……木本君、大丈夫……か?」
「アスカさん……」
「よかった。無事……だな……」
僕を庇うようにのしかかるアスカさん。
その背中には魔王の剣が刺さり、地面には血溜まりができている。
「アスカさん!」
「ふふ……泣くんじゃない。まだ終わってない……ぞ……」
力なく微笑むアスカさん、僕は涙を流していた。
「まったく……人がプレゼントした剣を……あんなにされて……これを……使え……」
アスカさんは自分の剣をぼくに手渡す。
「頼んだぞ……」
「うう……」
アスカさんの声は弱々しくなっていく。
「お姉ちゃーんッ!」
サクラちゃんの泣き叫ぶ声。
「うぅ……いつまで倒れてるの! キモオタ! いけー!」
「サクラちゃん……」
強いな……サクラちゃんは。泣いてる場合じゃない!
僕は立ち上がる。アスカさんが身を挺して作ってくれた最後のチャンスだ。
「アスカさん、ちょっと待っててくださいね……」
返事はなかった。早く治療をしなければ……
「フフフ、命拾いしたな。何度やっても同じだ。もうお前に魔力は残っていない」
再び、空中の黒い光から剣を創り出す魔王。
全部コイツのせいか。今まで感じたことのないような静かな強い怒りに満ちていた。
僕はアスカさんの剣を握りしめる。
「だまれ、貴様だけは許さない!」
僕は魔王に飛びかかる。
「うおおお!」
「ぐっ、どこにそんな力が!?」
「許さないぞ!」
限界が近い体のはずだが、怒りのせいでパワーアップしているのか僕の攻撃は魔王を圧倒した。
魔王は離れて、黒い弾丸を放つ。
今の僕には全てがスローモーションに見える。
僕は弾丸全てを斬り落とす。
「こんなもんか?」
「くそぉ!」
魔王は剣を両手で握りしめる。魔王にも焦りが見える。
かつてないピンチなのは魔王も同じなのだろう。
次の攻撃が最後だ。
全ての力を放出する僕の体は金色に輝いている。
「はぁはぁ、人間なんかに……負けるわけにはいかないんだ!」
魔王も最後だと感じているのだろう。全力を込めて剣を振る。
「うおおおお!」
憧れの最強冒険者、アスカさんの剣に力を込める。
アスカさん、見ててください。
キモオタ・ストラッシュ!
「ぐあぁぁ……」
魔王のうめき声がこだまする。
僕の攻撃が……アスカさんの剣が、魔王の体を貫く。
「う、うぅ……こんなはずでは……」
崩れ落ちる魔王。
「キモオタ、キサマ……ぐ……」
命を失った魔王の体は砂のように粉々になっていった。
全力を使い果たした僕もその場に倒れる。
「キモオタ君!」
心配そうに駆け寄るガイド。よかった、これでガイドの世界も守られた。
「ガイド……やったよ……」
「は、はい……」
しかし、ガイドはあまり嬉しそうではない。
「……うぅ……アスカさんは!?」
「……」
うつむくガイド。
「お姉ちゃん……お姉ちゃんッ!」
倒れるアスカさんに呼びかけるサクラちゃん。
「アスカさん……魔王に勝ちましたよ……ハハ……いつまで寝てるんですか……?」
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しかし、その世界にはアスカさんはいなかった。
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