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本編
③
『……ノアム』
『――お前のせいだ! 全部全部お前のせいだ! もう俺の元に来るな!』
『ノアム!』
以来、どれだけ会おうとしてもルドヴィックはノアムに会えなかった。
風のうわさで聞いた話では、ノアムはあれ以来ずっと屋敷に閉じこもっているらしい。十九歳を迎えた、今でも――。
(これが、ルドヴィックの回想だ)
頭の中でシナリオを整理する。ルドヴィックはノアムにぶつけられた「お前のせい」という言葉に深く傷ついた。そして、大切な人に拒絶される苦しみを知った。
それから、ルドヴィックは誰にも心を許さず、一線を引いて接するように。自分の心の前に分厚い壁を用意して、誰も自分の心に踏み込まないようにした。それは、ルドヴィックにとっての防衛だった。
自分の心を傷つけないために。自分の心を守るために。
またあの苦しみを――味わわないために。
(ルドヴィックは苦しかった。自分で自分を責め続けた。挙句、幼馴染には拒絶されて――)
ルドヴィックにも悪かったところはある。けど、ノアムにも悪い点はあった。もちろん一番悪いのはルドヴィックを殺そうとした犯人なんだけど――。
「……やっぱり俺、トラウマにはなれないな」
言葉をこぼしたとき、部屋の扉が控えめにノックされる。
「坊ちゃま。ルドヴィックさまがいらっしゃいましたよ」
「……うん、入っていいよ」
子供らしい口調を心がけて、俺はメイドの言葉に返事をした。
扉がゆっくり開く。見えたのは――ショタ時代の推しだった。
(うわっ、顔がいい!)
青色のくりくりとした双眸。金色の髪。貴族のお坊ちゃんらしい上品な衣服に身を包んだルドヴィックは天使だった。
「……ノアム」
ルドヴィックが震える声で俺を呼んだ。
「その、ね。ごめんね、俺が勝手に連れ出したりしたから――!」
涙をこぼしつつ、ルドヴィックが何度も「ごめん」を繰り返す。
俺は、ゆっくり首を横に振った。
「こっちに来てよ」
「……うん」
ルドヴィックは俺の言葉に素直に従い、ベッドのそばまで歩いてくる。
歩き方も可愛い。ちょこちょこしてる! 歩幅小さい!
「……ごめん。ノアム、本当にごめん。俺、なんかもうどうしたらいいかわからなくて」
顔をくしゃくしゃにゆがめて、ルドヴィックが俺を見つめる。
あ、これトラウマになろうとしても無理だったやつだ。今でこそ十歳だけど、俺の精神年齢は二十を超えているのだ。
こんな健気に謝る子供を突き放すなんてできない。
「ううん、俺のほうこそごめん。ルドヴィックは悪くないよ」
「違うよ、俺が悪いんだよ……!」
「……じゃあ、お互いさまにしようよ」
このままだと堂々巡りになる。素早く理解した俺は、笑って提案する。
「お互いが悪かったんだよ。責任も半分ずつだよ」
「……半分」
「それに、ルドヴィックは俺のこと助けてくれたじゃんか」
俺は知っている。あのままだったら、ノアムは助からなかったと。
そもそも、ルドヴィックが襲撃犯を魔法で撃退しなかったら、二人とも死んでいただろう。
「あれは……その」
「めちゃくちゃかっこよかった!」
笑うと、ルドヴィックも笑った。とはいっても、顔はくしゃくしゃだし、強がっているのはよくわかる。
「俺、これからもノアムと一緒にいていいの……?」
不安そうに俺の顔を覗き込むルドヴィックの言葉に対する返答は決まっている。
「もちろん。だってルドヴィックは――俺の親友だもん!」
手を伸ばして、ルドヴィックの手をつかんで、包み込んだ。
「俺、今後もルドヴィックと一緒にいたい。これからもずっと一緒にいようよ」
無邪気に伝えると、ルドヴィックはまた涙をこぼす。そして、控えめにうなずいた。
「俺はノアムの親友なんだね。っていうことは、俺の親友もノアムっていうこと?」
「そうだよ……いや?」
「全然嫌じゃない! 俺たちずっと一緒にいようね。大人になるまでも、大人になってからも。ずっとずっと一緒!」
ずっと一緒は――ちょっと無理かもだけど。
(俺はゲームではイレギュラーな存在になるわけだし……けど、まぁ、うまくいくだろ)
せっかくだし、推しと主人公のイチャイチャシーンを間近で眺めよう。
ルドヴィックとリュリュをくっつけてハッピーエンドに導く。これが俺の新しい役目だ。
(結婚式では友人代表スピーチとかできる?)
この世界でそれがあるのかはわからないけど。
とにかく、今後の俺の目標は『ルドヴィックとリュリュの結婚式で友人代表スピーチをすること』に決まった。
『――お前のせいだ! 全部全部お前のせいだ! もう俺の元に来るな!』
『ノアム!』
以来、どれだけ会おうとしてもルドヴィックはノアムに会えなかった。
風のうわさで聞いた話では、ノアムはあれ以来ずっと屋敷に閉じこもっているらしい。十九歳を迎えた、今でも――。
(これが、ルドヴィックの回想だ)
頭の中でシナリオを整理する。ルドヴィックはノアムにぶつけられた「お前のせい」という言葉に深く傷ついた。そして、大切な人に拒絶される苦しみを知った。
それから、ルドヴィックは誰にも心を許さず、一線を引いて接するように。自分の心の前に分厚い壁を用意して、誰も自分の心に踏み込まないようにした。それは、ルドヴィックにとっての防衛だった。
自分の心を傷つけないために。自分の心を守るために。
またあの苦しみを――味わわないために。
(ルドヴィックは苦しかった。自分で自分を責め続けた。挙句、幼馴染には拒絶されて――)
ルドヴィックにも悪かったところはある。けど、ノアムにも悪い点はあった。もちろん一番悪いのはルドヴィックを殺そうとした犯人なんだけど――。
「……やっぱり俺、トラウマにはなれないな」
言葉をこぼしたとき、部屋の扉が控えめにノックされる。
「坊ちゃま。ルドヴィックさまがいらっしゃいましたよ」
「……うん、入っていいよ」
子供らしい口調を心がけて、俺はメイドの言葉に返事をした。
扉がゆっくり開く。見えたのは――ショタ時代の推しだった。
(うわっ、顔がいい!)
青色のくりくりとした双眸。金色の髪。貴族のお坊ちゃんらしい上品な衣服に身を包んだルドヴィックは天使だった。
「……ノアム」
ルドヴィックが震える声で俺を呼んだ。
「その、ね。ごめんね、俺が勝手に連れ出したりしたから――!」
涙をこぼしつつ、ルドヴィックが何度も「ごめん」を繰り返す。
俺は、ゆっくり首を横に振った。
「こっちに来てよ」
「……うん」
ルドヴィックは俺の言葉に素直に従い、ベッドのそばまで歩いてくる。
歩き方も可愛い。ちょこちょこしてる! 歩幅小さい!
「……ごめん。ノアム、本当にごめん。俺、なんかもうどうしたらいいかわからなくて」
顔をくしゃくしゃにゆがめて、ルドヴィックが俺を見つめる。
あ、これトラウマになろうとしても無理だったやつだ。今でこそ十歳だけど、俺の精神年齢は二十を超えているのだ。
こんな健気に謝る子供を突き放すなんてできない。
「ううん、俺のほうこそごめん。ルドヴィックは悪くないよ」
「違うよ、俺が悪いんだよ……!」
「……じゃあ、お互いさまにしようよ」
このままだと堂々巡りになる。素早く理解した俺は、笑って提案する。
「お互いが悪かったんだよ。責任も半分ずつだよ」
「……半分」
「それに、ルドヴィックは俺のこと助けてくれたじゃんか」
俺は知っている。あのままだったら、ノアムは助からなかったと。
そもそも、ルドヴィックが襲撃犯を魔法で撃退しなかったら、二人とも死んでいただろう。
「あれは……その」
「めちゃくちゃかっこよかった!」
笑うと、ルドヴィックも笑った。とはいっても、顔はくしゃくしゃだし、強がっているのはよくわかる。
「俺、これからもノアムと一緒にいていいの……?」
不安そうに俺の顔を覗き込むルドヴィックの言葉に対する返答は決まっている。
「もちろん。だってルドヴィックは――俺の親友だもん!」
手を伸ばして、ルドヴィックの手をつかんで、包み込んだ。
「俺、今後もルドヴィックと一緒にいたい。これからもずっと一緒にいようよ」
無邪気に伝えると、ルドヴィックはまた涙をこぼす。そして、控えめにうなずいた。
「俺はノアムの親友なんだね。っていうことは、俺の親友もノアムっていうこと?」
「そうだよ……いや?」
「全然嫌じゃない! 俺たちずっと一緒にいようね。大人になるまでも、大人になってからも。ずっとずっと一緒!」
ずっと一緒は――ちょっと無理かもだけど。
(俺はゲームではイレギュラーな存在になるわけだし……けど、まぁ、うまくいくだろ)
せっかくだし、推しと主人公のイチャイチャシーンを間近で眺めよう。
ルドヴィックとリュリュをくっつけてハッピーエンドに導く。これが俺の新しい役目だ。
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この世界でそれがあるのかはわからないけど。
とにかく、今後の俺の目標は『ルドヴィックとリュリュの結婚式で友人代表スピーチをすること』に決まった。
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