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第1章
第5話
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迎えた挙式の日。気温はちょうどよく、空も晴れ渡っている。絶好の門出となりそうだ。
花嫁の控室にて、準備を終えたアンジーはお茶を飲んでいた。
「とてもきれいだよ、アンジー」
にこやかに笑うのは、三番目の兄。グリーナウェイからは、彼だけが挙式に参列する。そして、アンジーのエスコート役も彼が担うことになっていた。
「ありがとう、お兄さま」
「父上や母上たちも参列したかったみたいだけどね」
「いいのよ。長く国を空けるわけにはいかないわ」
アンジーの言葉に同意した兄は、ティーカップを手に取った。一口飲んだあと、思い出したように口を開く。
「イライアス陛下とはどうだい? うまくやっていけそうか?」
小首をかしげた兄の問いかけに、アンジーはどう答えようかと悩む。
しかし、隠しても無駄だ。素直に白状しよう。
「ごめんなさい、まだわからないわ」
実はアンジーがイライアスと対面できたのは、初日だけだった。あれ以来、今日にいたるまで一度も対面していない。
アンジーの世話は専属となった侍女の仕事だし、問題が起きた場合解決に奔走するのはイーノスだ。
「でも、たぶん大丈夫だと思う」
「……だったら、いいんだけど」
兄の眉尻が下がったのに気づいて、アンジーはなんとか空気を変えようとする。
手をパンっとたたいて、明るい表情を浮かべた。
「陛下とうまくやっていけるかはわからないけど、使用人たちとはそれなりにうまくやっていけそうよ」
アンジーにつけられた専属侍女は三人。それから、随時ローテーションで何人か付くそうだ。
「陛下の側近もとても良くしてくれるの。だから、なんとかなると思うわ」
笑ったアンジーの言葉に、兄は納得していない様子だ。だが、本人がこう言っている以上、口を出すべきではないと思ったのだろう。なにも言わなかった。
(それに、私は陛下のことを悪い人だとは思わないわ。優秀な侍女たちに、話しやすいイーノスを付けてくれたのだもの)
うん、だから、大丈夫。
アンジーが自分に言い聞かせていると、控室の扉がノックされた。
「アンジーさま。そろそろ、移動しましょうか」
顔をのぞかせたのは、自身の専属侍女の一人だ。アンジーはティーカップに残った紅茶を飲み干して、立ち上がる。
「お兄さま、行きましょう」
「……そうだね」
兄も紅茶を飲み干して、立ち上がる。アンジーに手を差し出してくるので、素直にエスコートを受ける。
控室を出て、廊下を歩く。隣を歩く兄の表情は、険しいものだ。
(お兄さま、やっぱりいろいろと思われることがあるのね……)
もし、今日。アンジーが胸を張って幸せになれると言えたら、兄の不安をいくらか取り除けたのだろうか。
アンジー自身には、イライアスといい関係を築けそうな予感がある。
しかし、予感などでは兄は納得しないはずだ。
(いつか、胸を張って幸せになったよって言えたらいいのに)
もちろん、そんな日が来るかどうかは未知数だが……。
あっという間に大聖堂の入り口にたどり着く。兄の腕をぎゅっとつかむと、兄はアンジーに顔を向けた。
「アンジー……」
切なさをはらんだ声で呼ばれて、泣きそうになる。
兄のこんな声、聞きたくなかった。
ゆっくり顔をあげて、兄の顔を見る。口を開こうとしたとき、扉が開き始めた。
(夫の陛下は悪い人じゃない。それで、十分じゃない)
心から愛し合えなくても、人として尊敬できる人物ならそれでいい。
対面した日。胸に芽生えた期待は、この数日で少ししぼんでしまった。
それでも、がんばろう。王妃として、彼を支えることが自分の役目だから……。
「……アンジー、行こうか」
兄の声に、うなずいて一歩を踏み出した。
花嫁の控室にて、準備を終えたアンジーはお茶を飲んでいた。
「とてもきれいだよ、アンジー」
にこやかに笑うのは、三番目の兄。グリーナウェイからは、彼だけが挙式に参列する。そして、アンジーのエスコート役も彼が担うことになっていた。
「ありがとう、お兄さま」
「父上や母上たちも参列したかったみたいだけどね」
「いいのよ。長く国を空けるわけにはいかないわ」
アンジーの言葉に同意した兄は、ティーカップを手に取った。一口飲んだあと、思い出したように口を開く。
「イライアス陛下とはどうだい? うまくやっていけそうか?」
小首をかしげた兄の問いかけに、アンジーはどう答えようかと悩む。
しかし、隠しても無駄だ。素直に白状しよう。
「ごめんなさい、まだわからないわ」
実はアンジーがイライアスと対面できたのは、初日だけだった。あれ以来、今日にいたるまで一度も対面していない。
アンジーの世話は専属となった侍女の仕事だし、問題が起きた場合解決に奔走するのはイーノスだ。
「でも、たぶん大丈夫だと思う」
「……だったら、いいんだけど」
兄の眉尻が下がったのに気づいて、アンジーはなんとか空気を変えようとする。
手をパンっとたたいて、明るい表情を浮かべた。
「陛下とうまくやっていけるかはわからないけど、使用人たちとはそれなりにうまくやっていけそうよ」
アンジーにつけられた専属侍女は三人。それから、随時ローテーションで何人か付くそうだ。
「陛下の側近もとても良くしてくれるの。だから、なんとかなると思うわ」
笑ったアンジーの言葉に、兄は納得していない様子だ。だが、本人がこう言っている以上、口を出すべきではないと思ったのだろう。なにも言わなかった。
(それに、私は陛下のことを悪い人だとは思わないわ。優秀な侍女たちに、話しやすいイーノスを付けてくれたのだもの)
うん、だから、大丈夫。
アンジーが自分に言い聞かせていると、控室の扉がノックされた。
「アンジーさま。そろそろ、移動しましょうか」
顔をのぞかせたのは、自身の専属侍女の一人だ。アンジーはティーカップに残った紅茶を飲み干して、立ち上がる。
「お兄さま、行きましょう」
「……そうだね」
兄も紅茶を飲み干して、立ち上がる。アンジーに手を差し出してくるので、素直にエスコートを受ける。
控室を出て、廊下を歩く。隣を歩く兄の表情は、険しいものだ。
(お兄さま、やっぱりいろいろと思われることがあるのね……)
もし、今日。アンジーが胸を張って幸せになれると言えたら、兄の不安をいくらか取り除けたのだろうか。
アンジー自身には、イライアスといい関係を築けそうな予感がある。
しかし、予感などでは兄は納得しないはずだ。
(いつか、胸を張って幸せになったよって言えたらいいのに)
もちろん、そんな日が来るかどうかは未知数だが……。
あっという間に大聖堂の入り口にたどり着く。兄の腕をぎゅっとつかむと、兄はアンジーに顔を向けた。
「アンジー……」
切なさをはらんだ声で呼ばれて、泣きそうになる。
兄のこんな声、聞きたくなかった。
ゆっくり顔をあげて、兄の顔を見る。口を開こうとしたとき、扉が開き始めた。
(夫の陛下は悪い人じゃない。それで、十分じゃない)
心から愛し合えなくても、人として尊敬できる人物ならそれでいい。
対面した日。胸に芽生えた期待は、この数日で少ししぼんでしまった。
それでも、がんばろう。王妃として、彼を支えることが自分の役目だから……。
「……アンジー、行こうか」
兄の声に、うなずいて一歩を踏み出した。
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