【R18】政略結婚した夫が、妃の私に求めるのは世継ぎを産むことだけ……のはずだった。あれ? なんだか夫の様子がおかしいのですが?

すめらぎかなめ

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第2章

第4話

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(でも、それだと陛下はどうなるのかしら?)

 その理屈では、夫である国王も立ち入り禁止ということになりそうだが――。

「陛下であっても、基本は立ち入り禁止でございます」

 侍女の言葉にアンジーはちょっとした疑問を持った。だが、これくらいあとで聞けばいいだろうと思いなおす。

 開いた扉の先にいたのは予想通りイーノスだった。彼はアンジーの姿を見て一瞬だけ目を見開くものの、すぐに臣下の礼を執る。

「頭をあげてちょうだい」

 静かな声で告げると、イーノスがゆっくり顔をあげる。彼の瞳を見つめて、アンジーは微笑む。

「陛下のお返事を私も聞きたいと思っただけ。迷惑だった?」

 問いかけに対し、イーノスは首を横に振った。

「いえ、少々驚いただけでございます」

 イーノスが咳ばらいをする。ここから話を変えるつもりのようだ。

 アンジーの胸にわずかな緊張感が芽生える。イライアスは一体どう出てくるか……。

「端的に申し上げますと、本日はお部屋でゆっくりされていてほしいということでございます」
「……そう」

 薄々わかっていたが、言葉にされると無性に悲しくなった。

 本当に子を産むためだけに娶られたのだと、突き付けられた感覚だった。

「また、なにか必要なものがあれば調達しますので、申し付けてくださいませ」
「いえ、いいの。……迷惑をかけたいわけではないから」

 自分がなにかの調達を頼むと、イーノスの手を煩わせてしまうのではないだろうか。

 彼に迷惑をかけるくらいなら、自分は大人しく部屋にあるもので時間をつぶそう。

「さようでございますか?」
「えぇ。今日のところは……そうね、いろいろと室内でも見て回るから」

 胸の前で手を振って、彼に気にしないでほしいと伝える。

 それだけで一日時間がつぶれるかはわからないが、なにもしないと言うことはできなかった。だって、暇だとばれてしまうから。

(これがうまい言い訳かと言われると、微妙だけど……)

 彼にはアンジーが遠慮していることくらい、お見通しのはずだ。その証拠に、彼の瞳に困惑の色が宿っている。

 いたたまれなくなって、部屋に戻ろうと足を引いた。そのとき、遠くからだれかが歩いてくるのが視界の隅に入る。

 アンジーが驚いていると、イーノスをはじめとした使用人たちがその場に膝をつく。

「陛下」

 自然と彼――イライアスのことを呼ぶと、不満そうな視線を向けられた。無意識に肩がびくんと跳ねる。

 鋭い瞳から放たれる視線は不機嫌であることを隠さない。そして、その視線はアンジーに向けられていた。

「キミはずいぶんと不満そうだな」

 言葉の意味が分からなくて、アンジーは小首をかしげた。しかし、しばらくして彼が勘違いしていることに気づく。

「いえ、決してそういうわけでは」
「その割には、好ましくないと言いたそうな目をしている」

 大きなため息のあとに放たれた言葉は間違いだ。

 アンジーはイライアスがここに来たことを不満になど思っていない。

「好ましくないのなら、そのまま言ってくれて構わないのだが」

 彼はアンジーが気を遣っていると思っているのだろうか。

「不満があるのなら口にしろ。俺だって嫌々一緒に過ごされるのは面白くない」

 一方的な彼の言葉にちょっとずつ苛立っていく。

 どうして彼はアンジーの話を聞こうとしないのだろう。アンジーの言葉に耳を傾けてくれないのだろう。

 すべてを偽りだと勝手に決めつけてしまうのだろう。

「――というわけだ。俺への感情は隠さなくていい」

 面倒くさそうに付け足された言葉に、アンジーの胸の中のもやもやがついに限界を迎えてしまった。

 思えば、ここに来てから彼はずっと一方的だ。アンジーに寄り添ってくれたのは――昨夜だけじゃないか。

 気づくと、彼の手首をつかんでいた。驚愕の表情でアンジーを見つめるイライアスに対して、アンジーはふくれっ面だった。
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