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第2章
第6話
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結局、この日アンジーが許されたことはというと王城内を見学することだけだった。
案内係としてイーノスはアンジーの側にずっとついており、彼の説明に耳を傾ける。
式の前に大雑把ではあるが見学していたこともあり、説明を理解するのに時間はかからなかった。ただし、配置を覚えているかどうかは別問題である。
王城をぐるりと回り、私室の前に戻ってくる。窓から差し込む太陽の光はすっかりオレンジ色だ。
「なにかご質問などはございますか?」
問いかけに首を横に振る。
「とても分かりやすい説明だったわ。いきなり完璧に覚えることはできないだろうけど、頑張って覚えるわね」
「はい。こちらとしても助かります」
ハジェンズの王城はグリーナウェイとは規模が違う。正直、完璧に覚えることができるかは不安でたまらない。
しかし、覚えなくてはならない。だって、アンジーはこれからここで生活するのだから……。
(それに、いつまでもイーノスを独占するわけにはいかないわ)
彼はイライアスから指示を受け、しばらくアンジーにつくということだった。
侍女のようにずっとというわけにはいかないが、私室の外にいる間はできるだけつくようにすると。
本来の彼の仕事はイライアスの側近なので、これは間違いなく業務内容に含まれない。
「これからどうされますか? 夕食までは一時間ほどあるのですが……」
懐中時計を取り出したイーノスは、こちらの様子をうかがってくる。
アンジーとしてはやりたいことも特にないので、こちらに委ねられても困ってしまう。
「やりたいこととか、やることとか。特にないの」
「さようでございますか。では、お部屋でゆっくりなさいますか?」
本当のところ、気乗りしない。けど、それ以外にすることがないのなら仕方がない。
イライアスとの約束で、今日は大人しくしないとならないのだから。
「そうさせてもらうわ」
「かしこまりました」
「夕食はぜひ一緒にと陛下に伝えてくれると助かるわ」
にこりと笑って付け足すと、イーノスは特別な反応を示すことなく頭を下げた。
彼の背中を見送って、アンジーは私室に入る。すると、すぐにオパールが現れた。
「アンジーさま。なにか必要なものはございますか?」
「飲み物が欲しいわ」
アンジーの言葉を聞いたオパールは、てきぱきと動き始める。
彼女がお茶を淹れに向かったのを見送って、ソファーに腰を下ろした。
(大国の妃って、大変ね)
いや、この場合語弊があるのかもしれない。
現在、妃としての大変さは味わっていない。それに、王女として生まれ育った以上、ある程度のことは教育されている。
ただアンジーが大変なのは、人間関係についてだ。
(今日一日王城を回ったけど、ハジェンズでは使用人との距離がかなり遠いわ)
専属侍女たちの件で薄々わかっていたことだ。けど、ほかの使用人たちは専属侍女以上に距離を取ってくる。
文化の違いと言われたらそこまでだが、やっぱりさみしい。
(グリーナウェイにいたころは、メイドや従者、料理人と話すことなんて普通だったのに……)
世間話はもちろん、その日の食事メニューだってよく話した。アンジーがリクエストを出すと、料理人はいつも困ったように笑って、「後日ご用意いたしますのでお待ちくださいませ」と言ってくれたものだ。
「ここでは妃自らが声をかけるなんてないのね。基本はメイドや侍女を通して――なんて」
それでは交流の場は広がらない。
妃としての仕事は大変な以上に孤独なのだと思い知る。
「陛下がお優しいのがせめてもの救いかしら。気にかけてくださっているし――」
昼間顔を合わせたときのことを思い出す。
彼はそっけない態度だったが、アンジーを気にかけてくれた。
それを嬉しいと思うのは、人として当然のことだ。
(オパールたちやイーノスも気にかけてくれるけど、陛下とはちょっと違うもの)
彼らはあくまでも仕事。比べ、イライアスはどうだろう。彼がアンジーを気にかける必要なんて、そんなにないのだから。
案内係としてイーノスはアンジーの側にずっとついており、彼の説明に耳を傾ける。
式の前に大雑把ではあるが見学していたこともあり、説明を理解するのに時間はかからなかった。ただし、配置を覚えているかどうかは別問題である。
王城をぐるりと回り、私室の前に戻ってくる。窓から差し込む太陽の光はすっかりオレンジ色だ。
「なにかご質問などはございますか?」
問いかけに首を横に振る。
「とても分かりやすい説明だったわ。いきなり完璧に覚えることはできないだろうけど、頑張って覚えるわね」
「はい。こちらとしても助かります」
ハジェンズの王城はグリーナウェイとは規模が違う。正直、完璧に覚えることができるかは不安でたまらない。
しかし、覚えなくてはならない。だって、アンジーはこれからここで生活するのだから……。
(それに、いつまでもイーノスを独占するわけにはいかないわ)
彼はイライアスから指示を受け、しばらくアンジーにつくということだった。
侍女のようにずっとというわけにはいかないが、私室の外にいる間はできるだけつくようにすると。
本来の彼の仕事はイライアスの側近なので、これは間違いなく業務内容に含まれない。
「これからどうされますか? 夕食までは一時間ほどあるのですが……」
懐中時計を取り出したイーノスは、こちらの様子をうかがってくる。
アンジーとしてはやりたいことも特にないので、こちらに委ねられても困ってしまう。
「やりたいこととか、やることとか。特にないの」
「さようでございますか。では、お部屋でゆっくりなさいますか?」
本当のところ、気乗りしない。けど、それ以外にすることがないのなら仕方がない。
イライアスとの約束で、今日は大人しくしないとならないのだから。
「そうさせてもらうわ」
「かしこまりました」
「夕食はぜひ一緒にと陛下に伝えてくれると助かるわ」
にこりと笑って付け足すと、イーノスは特別な反応を示すことなく頭を下げた。
彼の背中を見送って、アンジーは私室に入る。すると、すぐにオパールが現れた。
「アンジーさま。なにか必要なものはございますか?」
「飲み物が欲しいわ」
アンジーの言葉を聞いたオパールは、てきぱきと動き始める。
彼女がお茶を淹れに向かったのを見送って、ソファーに腰を下ろした。
(大国の妃って、大変ね)
いや、この場合語弊があるのかもしれない。
現在、妃としての大変さは味わっていない。それに、王女として生まれ育った以上、ある程度のことは教育されている。
ただアンジーが大変なのは、人間関係についてだ。
(今日一日王城を回ったけど、ハジェンズでは使用人との距離がかなり遠いわ)
専属侍女たちの件で薄々わかっていたことだ。けど、ほかの使用人たちは専属侍女以上に距離を取ってくる。
文化の違いと言われたらそこまでだが、やっぱりさみしい。
(グリーナウェイにいたころは、メイドや従者、料理人と話すことなんて普通だったのに……)
世間話はもちろん、その日の食事メニューだってよく話した。アンジーがリクエストを出すと、料理人はいつも困ったように笑って、「後日ご用意いたしますのでお待ちくださいませ」と言ってくれたものだ。
「ここでは妃自らが声をかけるなんてないのね。基本はメイドや侍女を通して――なんて」
それでは交流の場は広がらない。
妃としての仕事は大変な以上に孤独なのだと思い知る。
「陛下がお優しいのがせめてもの救いかしら。気にかけてくださっているし――」
昼間顔を合わせたときのことを思い出す。
彼はそっけない態度だったが、アンジーを気にかけてくれた。
それを嬉しいと思うのは、人として当然のことだ。
(オパールたちやイーノスも気にかけてくれるけど、陛下とはちょっと違うもの)
彼らはあくまでも仕事。比べ、イライアスはどうだろう。彼がアンジーを気にかける必要なんて、そんなにないのだから。
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