【R18】政略結婚した夫が、妃の私に求めるのは世継ぎを産むことだけ……のはずだった。あれ? なんだか夫の様子がおかしいのですが?

すめらぎかなめ

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第2章

第6話

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 結局、この日アンジーが許されたことはというと王城内を見学することだけだった。

 案内係としてイーノスはアンジーの側にずっとついており、彼の説明に耳を傾ける。

 式の前に大雑把ではあるが見学していたこともあり、説明を理解するのに時間はかからなかった。ただし、配置を覚えているかどうかは別問題である。

 王城をぐるりと回り、私室の前に戻ってくる。窓から差し込む太陽の光はすっかりオレンジ色だ。

「なにかご質問などはございますか?」

 問いかけに首を横に振る。

「とても分かりやすい説明だったわ。いきなり完璧に覚えることはできないだろうけど、頑張って覚えるわね」
「はい。こちらとしても助かります」

 ハジェンズの王城はグリーナウェイとは規模が違う。正直、完璧に覚えることができるかは不安でたまらない。

 しかし、覚えなくてはならない。だって、アンジーはこれからここで生活するのだから……。

(それに、いつまでもイーノスを独占するわけにはいかないわ)

 彼はイライアスから指示を受け、しばらくアンジーにつくということだった。

 侍女のようにずっとというわけにはいかないが、私室の外にいる間はできるだけつくようにすると。

 本来の彼の仕事はイライアスの側近なので、これは間違いなく業務内容に含まれない。

「これからどうされますか? 夕食までは一時間ほどあるのですが……」

 懐中時計を取り出したイーノスは、こちらの様子をうかがってくる。

 アンジーとしてはやりたいことも特にないので、こちらに委ねられても困ってしまう。

「やりたいこととか、やることとか。特にないの」
「さようでございますか。では、お部屋でゆっくりなさいますか?」

 本当のところ、気乗りしない。けど、それ以外にすることがないのなら仕方がない。

 イライアスとの約束で、今日は大人しくしないとならないのだから。

「そうさせてもらうわ」
「かしこまりました」
「夕食はぜひ一緒にと陛下に伝えてくれると助かるわ」

 にこりと笑って付け足すと、イーノスは特別な反応を示すことなく頭を下げた。

 彼の背中を見送って、アンジーは私室に入る。すると、すぐにオパールが現れた。

「アンジーさま。なにか必要なものはございますか?」
「飲み物が欲しいわ」

 アンジーの言葉を聞いたオパールは、てきぱきと動き始める。

 彼女がお茶を淹れに向かったのを見送って、ソファーに腰を下ろした。

(大国の妃って、大変ね)

 いや、この場合語弊があるのかもしれない。

 現在、妃としての大変さは味わっていない。それに、王女として生まれ育った以上、ある程度のことは教育されている。

 ただアンジーが大変なのは、人間関係についてだ。

(今日一日王城を回ったけど、ハジェンズでは使用人との距離がかなり遠いわ)

 専属侍女たちの件で薄々わかっていたことだ。けど、ほかの使用人たちは専属侍女以上に距離を取ってくる。

 文化の違いと言われたらそこまでだが、やっぱりさみしい。

(グリーナウェイにいたころは、メイドや従者、料理人と話すことなんて普通だったのに……)

 世間話はもちろん、その日の食事メニューだってよく話した。アンジーがリクエストを出すと、料理人はいつも困ったように笑って、「後日ご用意いたしますのでお待ちくださいませ」と言ってくれたものだ。

「ここでは妃自らが声をかけるなんてないのね。基本はメイドや侍女を通して――なんて」

 それでは交流の場は広がらない。

 妃としての仕事は大変な以上に孤独なのだと思い知る。

「陛下がお優しいのがせめてもの救いかしら。気にかけてくださっているし――」

 昼間顔を合わせたときのことを思い出す。

 彼はそっけない態度だったが、アンジーを気にかけてくれた。

 それを嬉しいと思うのは、人として当然のことだ。

(オパールたちやイーノスも気にかけてくれるけど、陛下とはちょっと違うもの)

 彼らはあくまでも仕事。比べ、イライアスはどうだろう。彼がアンジーを気にかける必要なんて、そんなにないのだから。
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