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第2章
第7話
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ソファーでぼうっと天井を見上げていると、しばらくしてオパールが戻ってきた。彼女はワゴンを押しており、その上にはティーポットとカップ、そして焼き菓子が載っていた。
「お菓子、もらっていいの?」
小首をかしげて問うと、オパールは微笑んでうなずいた。
「アンジーさまがお疲れでしょうから――と、料理人が用意してくれていたのです」
オパールはテーブルの上に準備したものを手際よく並べていく。焼き菓子は小さなものが数種類用意されており、作るのにはかなり手間がかかっただろう。
料理人の気遣いが伝わってくるからこそ、アンジーは嬉しくなる。
「こんなにたくさん用意するなんて、大変だったでしょうに……」
ティーカップを手に取って、口に運ぶ。口内に広がるのは優しい味だった。馴染みのない味だったが、これまた美味しい。
皿の上にある焼き菓子をじっくりと見る。マドレーヌやフィナンシェ、シフォンケーキ。見ているだけで楽しく感じるのは、見た目も凝っているからだろうか。
「彼らはアンジーさまに感謝しておりましたよ」
マドレーヌを手に取ったとき、オパールが口を開く。きょとんとして彼女の瞳を見つめる。
「こんなことを言ってはなんですが、今までの彼らにとって料理とは義務でしかなかったのです」
彼女の言いたいことがなんとなくわかった。
イライアスは食事にあまり興味がないという。その態度はきっと料理人の士気を下げていたのだ。
アンジーは自分の想像が間違っていないことを確信した。
「ですから、アンジーさまに感想を述べていただいたことが嬉しかったみたいです。今回のお菓子も彼らの好意なのです」
皿に視線を落とした。小ぶりなものを数種類用意するのは面倒なはず。さらに、見た目も一つ一つ違っていて、作り手の思いやりが伝わってくる。もちろん、技術の高さも。
「もしよろしければ、今後も定期的に感想などを述べていただけると彼らも喜ぶと思います」
料理人だって人間だ。食べた者の感想を糧として、もっといいものを作ろうと励む。
それはどこの国でも同じだろう。グリーナウェイでも、ハジェンズでも。
「……そうね。特にこれが美味しかったみたいなものでもいいのなら」
アンジーは語彙力があるほうではない。ソムリエのように豊富な語彙で褒めたたえることなどできるわけがない。
「私でよかったら、彼らのモチベーションになりたいわ」
その言葉にオパールはうなずく。
「私の行動や言葉で彼らのモチベーションが上がるのなら、それ以上にいいことはないわ」
モチベーションが上がると、仕事の質が上がることにもつながる。やる気と仕事の質はある程度比例するとアンジーは考えている。
「とても、嬉しいと思います」
しみじみとしたオパールの言葉に、アンジーはふっと口元を緩める。
側に立つ彼女の顔を見上げる。いきなり視線を浴びたオパールは軽く戸惑っているようだった。
「オパールの淹れてくれるお茶って、とても美味しいの」
カップを手に取る。オパールが淹れてくれるお茶はアンジーの好みにぴったりだ。茶葉の種類は違うはずなのに、どうしてなのか好みに合う。不思議だった。
アンジーの言葉の真意がわからないのか、オパールは首をかしげる。その様子が可愛らしくて、アンジーははにかんだ。
「ありがとうって伝えたかっただけよ。いつも私の世話をしてくれるし、心配してくれるし……」
「そ、それは私のお仕事ですから」
「だったとしても、伝えたかったの。あなたのおかげで私はここで頑張ろうって思えているのだもの」
仕事だったとしても、心配してくれる人がいるのといないのとでは大違いだ。
ハジェンズに来て、アンジーは自分を心配してくれる人たちのありがたみを再認識した。過保護で鬱陶しいと思っていた兄たちの思いやりやありがたさも理解した。
「私、ずっと過保護なお兄さまたちが鬱陶しかったの」
「お菓子、もらっていいの?」
小首をかしげて問うと、オパールは微笑んでうなずいた。
「アンジーさまがお疲れでしょうから――と、料理人が用意してくれていたのです」
オパールはテーブルの上に準備したものを手際よく並べていく。焼き菓子は小さなものが数種類用意されており、作るのにはかなり手間がかかっただろう。
料理人の気遣いが伝わってくるからこそ、アンジーは嬉しくなる。
「こんなにたくさん用意するなんて、大変だったでしょうに……」
ティーカップを手に取って、口に運ぶ。口内に広がるのは優しい味だった。馴染みのない味だったが、これまた美味しい。
皿の上にある焼き菓子をじっくりと見る。マドレーヌやフィナンシェ、シフォンケーキ。見ているだけで楽しく感じるのは、見た目も凝っているからだろうか。
「彼らはアンジーさまに感謝しておりましたよ」
マドレーヌを手に取ったとき、オパールが口を開く。きょとんとして彼女の瞳を見つめる。
「こんなことを言ってはなんですが、今までの彼らにとって料理とは義務でしかなかったのです」
彼女の言いたいことがなんとなくわかった。
イライアスは食事にあまり興味がないという。その態度はきっと料理人の士気を下げていたのだ。
アンジーは自分の想像が間違っていないことを確信した。
「ですから、アンジーさまに感想を述べていただいたことが嬉しかったみたいです。今回のお菓子も彼らの好意なのです」
皿に視線を落とした。小ぶりなものを数種類用意するのは面倒なはず。さらに、見た目も一つ一つ違っていて、作り手の思いやりが伝わってくる。もちろん、技術の高さも。
「もしよろしければ、今後も定期的に感想などを述べていただけると彼らも喜ぶと思います」
料理人だって人間だ。食べた者の感想を糧として、もっといいものを作ろうと励む。
それはどこの国でも同じだろう。グリーナウェイでも、ハジェンズでも。
「……そうね。特にこれが美味しかったみたいなものでもいいのなら」
アンジーは語彙力があるほうではない。ソムリエのように豊富な語彙で褒めたたえることなどできるわけがない。
「私でよかったら、彼らのモチベーションになりたいわ」
その言葉にオパールはうなずく。
「私の行動や言葉で彼らのモチベーションが上がるのなら、それ以上にいいことはないわ」
モチベーションが上がると、仕事の質が上がることにもつながる。やる気と仕事の質はある程度比例するとアンジーは考えている。
「とても、嬉しいと思います」
しみじみとしたオパールの言葉に、アンジーはふっと口元を緩める。
側に立つ彼女の顔を見上げる。いきなり視線を浴びたオパールは軽く戸惑っているようだった。
「オパールの淹れてくれるお茶って、とても美味しいの」
カップを手に取る。オパールが淹れてくれるお茶はアンジーの好みにぴったりだ。茶葉の種類は違うはずなのに、どうしてなのか好みに合う。不思議だった。
アンジーの言葉の真意がわからないのか、オパールは首をかしげる。その様子が可愛らしくて、アンジーははにかんだ。
「ありがとうって伝えたかっただけよ。いつも私の世話をしてくれるし、心配してくれるし……」
「そ、それは私のお仕事ですから」
「だったとしても、伝えたかったの。あなたのおかげで私はここで頑張ろうって思えているのだもの」
仕事だったとしても、心配してくれる人がいるのといないのとでは大違いだ。
ハジェンズに来て、アンジーは自分を心配してくれる人たちのありがたみを再認識した。過保護で鬱陶しいと思っていた兄たちの思いやりやありがたさも理解した。
「私、ずっと過保護なお兄さまたちが鬱陶しかったの」
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