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第2章
第8話
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兄たちが自分を大切に思っていて、それゆえの行動だと分かっていた。
けど、だからこそ。余計に「鬱陶しい」とは言えなくて。
「少しくらい一人にしてくれてもいいのに――って、思ったことは少なくなかった」
いたころは鬱陶しくてたまらなかった兄たち。しかし、いないと寂しいと知ったのはハジェンズに来てからだ。
しつこいくらいに付きまとってきて、「可愛い」と連呼する兄たちを恋しいと思ったのは、生まれて初めてだった。
「失ってはじめて大切さに気付くってこういうことなのね。ようやく知ったわ」
今までは幸運にも知らずに済んだだけだった。どこかで選択を違えていたら、もっと早くに知っていたのかもしれない。
そういう意味でも、自分は幸せだったのだ。
「一人で他国に来るのは、想像以上に心細いの。だから、親身になってくれて心配してくれるあなたたちの存在がありがたい」
グリーナウェイでは、だれもがアンジーを大切にした。唯一の王女だから。王家の末っ子だから。
だが、それはグリーナウェイから出ると無意味なものだった。他国に王女が一人しかいなくても、先の国にとってはどうでもいい。王家の末っ子であっても同様だ。
「私って自分で思っていた以上に世間知らずだったわ」
ふぅ――と息を吐く。黙ってアンジーの話を聞いていたオパールは、一歩こちらに近づいてくる。
彼女は空になったティーカップにお茶を注ぐ。そして、その上に輪切りのレモンを浮かべた。
「こちらもお好きなお味かと」
「レモンって、紅茶に合うの?」
疑問を口にしたものの、オパールが変なことをするわけがないとわかっていた。
アンジーはカップを手に取って、息を吹きかける。少し冷まして口に紅茶を入れた。
「――っ!」
不思議な味だった。
カップのふちから口を離して、紅茶の水面を見つめる。
「レモン一つで、味ってこんなにも変わるのね……!」
「どうでございますか?」
カップをソーサーの上に戻して、オパールの顔を見つめる。
感想を待つ彼女に、にこりと笑いかけた。
「とても美味しかったわ。レモンって、どんな紅茶にも合うのかしら?」
「いえ、茶葉によっては合わないものもございます」
「へぇ、やっぱり相性ってあるのね」
人同士と同じように、食材と茶葉にも合う合わないがあるらしい。
「ものによってはミルクを入れるのもおすすめです。まろやかな味わいになって、飲みやすくなります」
「今度飲んでみたいわ」
「手配させていただきますね」
食事と同じくらい、お茶の時間は楽しいものだ。心が安らぐという表現が適切だろうか。
「楽しみにしているわ」
心からの言葉を彼女に告げて、お菓子に手を伸ばす。
(私は本当に幸運だわ。だからこそ……)
イライアスの力になりたい。彼の力になって、ハジェンズの平和のために尽くしたい。
「ハジェンズも、とても素敵な場所ね」
つぶやくと、一瞬間をおいてオパールがうなずいたのが見えた。
「はい。私たち民にとっても、大切な母国でございます」
「ふふっ、そうね」
突然決まった結婚は不安でたまらなかった。それでも、この国の人たちはアンジーを温かく迎えてくれた。本当に嬉しかったのだ。
「そうだわ。明日、一緒に来たお兄さまがグリーナウェイに帰られるの。見送りにいってもいい?」
「問題ありません。お時間など確認したほうがよろしいでしょうか?」
「お願いするわ」
本当は自分で聞きに行きたいが、軽率な行動は避けたほうがいいだろう。
たとえ家族であっても、自分はすでに嫁いだ身なのだ。
けど、だからこそ。余計に「鬱陶しい」とは言えなくて。
「少しくらい一人にしてくれてもいいのに――って、思ったことは少なくなかった」
いたころは鬱陶しくてたまらなかった兄たち。しかし、いないと寂しいと知ったのはハジェンズに来てからだ。
しつこいくらいに付きまとってきて、「可愛い」と連呼する兄たちを恋しいと思ったのは、生まれて初めてだった。
「失ってはじめて大切さに気付くってこういうことなのね。ようやく知ったわ」
今までは幸運にも知らずに済んだだけだった。どこかで選択を違えていたら、もっと早くに知っていたのかもしれない。
そういう意味でも、自分は幸せだったのだ。
「一人で他国に来るのは、想像以上に心細いの。だから、親身になってくれて心配してくれるあなたたちの存在がありがたい」
グリーナウェイでは、だれもがアンジーを大切にした。唯一の王女だから。王家の末っ子だから。
だが、それはグリーナウェイから出ると無意味なものだった。他国に王女が一人しかいなくても、先の国にとってはどうでもいい。王家の末っ子であっても同様だ。
「私って自分で思っていた以上に世間知らずだったわ」
ふぅ――と息を吐く。黙ってアンジーの話を聞いていたオパールは、一歩こちらに近づいてくる。
彼女は空になったティーカップにお茶を注ぐ。そして、その上に輪切りのレモンを浮かべた。
「こちらもお好きなお味かと」
「レモンって、紅茶に合うの?」
疑問を口にしたものの、オパールが変なことをするわけがないとわかっていた。
アンジーはカップを手に取って、息を吹きかける。少し冷まして口に紅茶を入れた。
「――っ!」
不思議な味だった。
カップのふちから口を離して、紅茶の水面を見つめる。
「レモン一つで、味ってこんなにも変わるのね……!」
「どうでございますか?」
カップをソーサーの上に戻して、オパールの顔を見つめる。
感想を待つ彼女に、にこりと笑いかけた。
「とても美味しかったわ。レモンって、どんな紅茶にも合うのかしら?」
「いえ、茶葉によっては合わないものもございます」
「へぇ、やっぱり相性ってあるのね」
人同士と同じように、食材と茶葉にも合う合わないがあるらしい。
「ものによってはミルクを入れるのもおすすめです。まろやかな味わいになって、飲みやすくなります」
「今度飲んでみたいわ」
「手配させていただきますね」
食事と同じくらい、お茶の時間は楽しいものだ。心が安らぐという表現が適切だろうか。
「楽しみにしているわ」
心からの言葉を彼女に告げて、お菓子に手を伸ばす。
(私は本当に幸運だわ。だからこそ……)
イライアスの力になりたい。彼の力になって、ハジェンズの平和のために尽くしたい。
「ハジェンズも、とても素敵な場所ね」
つぶやくと、一瞬間をおいてオパールがうなずいたのが見えた。
「はい。私たち民にとっても、大切な母国でございます」
「ふふっ、そうね」
突然決まった結婚は不安でたまらなかった。それでも、この国の人たちはアンジーを温かく迎えてくれた。本当に嬉しかったのだ。
「そうだわ。明日、一緒に来たお兄さまがグリーナウェイに帰られるの。見送りにいってもいい?」
「問題ありません。お時間など確認したほうがよろしいでしょうか?」
「お願いするわ」
本当は自分で聞きに行きたいが、軽率な行動は避けたほうがいいだろう。
たとえ家族であっても、自分はすでに嫁いだ身なのだ。
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