【R18】政略結婚した夫が、妃の私に求めるのは世継ぎを産むことだけ……のはずだった。あれ? なんだか夫の様子がおかしいのですが?

すめらぎかなめ

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第2章

第10話

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 食堂について、案内された席に着く。

 イライアスはすでに自身の席に座っていた。アンジーが入ってきたことに気づいても、ちらりと視線を向けてくるだけだ。興味を示す様子はない。

「アンジー殿下。お飲み物のご希望はございますか?」
「ノンアルコールならなんでも。お任せするわ」

 アンジーの要望を聞き、従者は一礼をして側から離れる。

 そっと視線をあげると、イライアスがこちらをじっと見ていた。なにかやらかしてしまったのかと、内心ヒヤッとする。

「キミは酒は飲めないのか?」

 ただの問いかけだった。笑みを浮かべて、彼の質問に答える。

「飲めない――というのとは、少し違います。お酒を飲むとつい眠くなってしまって」

 王族として必要な場では口にするようにしている。だが、好んで飲むことはないというだけだ。

「せっかく陛下とのお食事なのに、眠くなるなんていやですもの」

 本心を伝えると、彼はそっと目を逸らした。その後、ごまかすためなのかグラスを煽り、中身を飲み干した。

「……嘘をつくなら、もっとましなものにしろ」
「心からの想いを伝えただけなのですが」

 眉尻を下げて悲しそうな表情を作る。わざとらしかったかもしれないが、声にも悲壮感を込めた。

 アンジーの表情を見たイライアスは、髪をガシガシと掻く。セットが乱れているがお構いなしだ。

「陛下、アンジー殿下。お食事の準備が整いました」

 タイミングがいいのか悪いのか。料理長が配膳の終了を知らせる。

 長方形の巨大なテーブルには、二人分とは思えないほど豪勢な料理が並んでいた。

 サラダやパン、スープなどは数種類ずつ。メインディッシュは大皿に盛られた肉料理と魚料理が一品。デザートはカットされたメロンだ。

 メニューの説明を聞きながら、料理を見渡した。どれもこれも美味しそうに盛り付けられ、アンジーの心が躍る。

(先ほどお菓子を食べたから入らないかも――と思ったけど)

 これなら、全部食べることができそうだ。作ってもらった料理はできるだけ残したくない。

「――以上でございます」

 料理長が説明を終えると、イライアスがナイフとフォークを手に取る。アンジーも同じように二つを手に取って、食事を始めた。

(本当に美味しい!)

 基本の味付けはグリーナウェイとは違う。だが、いくつかの料理はグリーナウェイのものと味付けが似ていた。

 特にサラダにかけられたドレッシングなんて、グリーナウェイのものをそのまま使ったのではないかと思ったほどだ。

「ねぇ、こちらのドレッシングなのだけど……」

 控える料理長に声をかける。彼は驚いたように何度か瞬きをして、アンジーの側に寄ってくる。

「これ、グリーナウェイで食べたものととても味が似ているの。どうして?」
「はっ。じ、実は料理人の中にグリーナウェイに行ったことがある者がおりまして……。その者の意見を参考に、作らせていただきました」

 臣下の礼を執る料理長の顔には汗が浮かんでいた。声をかけられたのがかなりの負担だったのだろうか。

 ちょっとした申し訳なさを覚えつつも、アンジーはできる限りの笑みを浮かべる。

「とても美味しいわ。数日食べていないだけなのに、懐かしくて嬉しくなってしまったの」

 もう食べることはないだろうと思っていたというのに、とても嬉しいサプライズだ。

 アンジーの様子を見た料理長は、ほっとしたように息を吐いた。

「お褒めいただき、ありがとうございます」
「これからもたまに出してくれるともっと嬉しいわ」

 彼はもう一度頭を下げて、壁のほうに寄った。

 不意に視線を感じて、その先を追う。アンジーを見つめていたのは予想通りイライアスだった。

「なにか?」

 小首をかしげて視線の意味を問うと、彼はナイフとフォークを置き、グラスを手に取った。

「なんでもない」

 なんでもないのなら、こんなにじっと見てこないだろう。心の中でつぶやいて、アンジーはもう一度にこりと笑う。
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