【R18】政略結婚した夫が、妃の私に求めるのは世継ぎを産むことだけ……のはずだった。あれ? なんだか夫の様子がおかしいのですが?

すめらぎかなめ

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第3章

第4話【※】

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「俺を優しいと言うのはキミくらいだ」
「ということは、私への態度が特別なのですか?」

 浮かんだ疑問を素直に口にすると、彼は大きくため息をついた。

 呆れの眼差しを向けられたが、笑って返す。すると、彼の表情が少しだけ柔らかくなった。

「たぶん、そういうことなんだろう」

 まさか肯定されるとは思わなくて、アンジーは驚愕の表情を浮かべる。イライアスは不本意そうだ。

「キミが聞いておいてなにを驚いているんだ」
「否定されると思っていましたから」

 心の内を言葉にすると、イライアスが顔をぐっと近づけてくる。

 至近距離でしばし見つめ合い、先に視線を逸らしたのはアンジーだった。

「そんなにまっすぐ見られては、恥ずかしいです……」

 小さな抗議の言葉に、イライアスはなにも言葉を返さない。返事の代わりとばかりに、一度だけ口づけられた。

 イライアスの大きな手のひらがアンジーの頬に添えられる。手のひらから伝わる温度を熱く感じるのは気のせいだろうか。

「減るものでもないのだから、いいだろ」
「そういう理屈じゃ、ないです」

 会話の隙間に軽いキスが降ってくる

「いやなのか?」
「いや……というわけでは、ないですが」

 本当にいやだったら、全力で抵抗している。じゃれあうような抵抗では済んでいないはずだ。

「だったら我慢しろ。それに、こうなることを望んだのはアンジーだろう」
「見つめ合いたいなんて言っていません」

 むっとした表情を見たイライアスが、喉を鳴らして笑う。

 思えば、こんな表情の彼を見たのははじめてかもしれない。彼はほとんど仏頂面だった。穏やかな笑みなんて――見た覚えがない。

「俺にこんな口を利くのはアンジーくらいだ」

 声音は柔らかい。彼はアンジーを責めるような意味で口にしたわけではないのだろう。

 イライアスの顔が近づいてきて、もう一度口づけられる。今度は角度を変えて、何度もキスを送られた。

 しばらくキスを受け入れていると、今度は唇を舌先でたたかれた。意味がわかって、ゆっくりと口を開ける。

 唇の隙間から舌を差し込まれると分かっていたのに、驚きから肩が跳ねた。イライアスの手が動いて、頭を撫でてくる。落ち着かせようとしているのが伝わってきて、身体から力を抜いた。

(キス、気持ちいい。もっとしてほしい――)

 アンジーは腕を伸ばして、イライアスの背中に回す。ぎゅっと抱きしめて、自らキスを強請る。

 イライアスのキスは強引なのに優しくて、アンジーの心をほぐしてくれる。ずっとキスをしていたいと願ってしまう。

 舌を絡めていると、イライアスの手が動いたのがわかった。身体を布越しに撫でられているだけで、身体が昂るのがわかる。

「やっ」

 腰を撫でられると、自然と声が出た。それが面白いのか、指先でくすぐられる。

「だめ、やめっ――」

 唇を離して、身をよじって逃げようとする。しかし、またキスをされてしまうから、抗議の言葉は飲み込むことしかできない。

(だめ、そこは本当にダメ――!)

 くすぐったいような、むずむずするような。不思議な感覚に襲われて、アンジーの身体が震える。

 イライアスの手が離れて、キスから解放されたときにはすでに息も絶え絶えで、涙目でにらむことしかできなくなっていた。

「どうかしたのか?」

 白々しい問いかけだ。一体、だれのせいでこうなっているというのか。

「やめてって、言ったのに」

 やっと文句を口にできたものの、イライアスは気に留める様子もない。

 彼の手が伸びてきて、アンジーのナイトドレスのボタンに触れる。一つ一つ丁寧に外されて、前を開かれる。

 上はこの間と同じで、なにも身に着けていない。だが、下は違う。

「……こういうの、お嫌いでしたか?」

 反応がないことが不安で、こちらから聞いてみる。

 問いかけにはっとして戻ってきたイライアスが、額を押さえる。まるで困ったような態度だった。
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