【R18】政略結婚した夫が、妃の私に求めるのは世継ぎを産むことだけ……のはずだった。あれ? なんだか夫の様子がおかしいのですが?

すめらぎかなめ

文字の大きさ
34 / 40
第3章

第5話【※】

しおりを挟む
「好きとか嫌いとか。そういう問題ではないだろ」

 大きなため息とともに聞こえた言葉は、やたらと早口だった。

「一つ聞く。それはどうやって手に入れた」

 イライアスの目つきが鋭くなる。ただでさえ迫力があるのだ。これではまるで悪人だ。

「おかしなことはしておりません。侍女に相談して、準備してもらいました」

 落ち着かせるように柔らかな声で告げると、彼はそれ以上なにも言わなかった。だから、納得してくれたのだと判断する。

(嫌いではないのなら、よかった)

 今アンジーが身に着けている下着は、普段よりもずっと布地の少ないものだ。

 オパールに「セクシーな下着が欲しい」と相談すると、彼女が用意してくれたものである。

 急なお願いだったのにうなずいてくれた彼女には感謝しきれない。

「だって、こういうのお好きでしょう?」

 小首をかしげて問う。イライアスはうなずくことも、首を横に振ることもなかった。

 ただ、流れる沈黙が否定ではないと伝えてくる。

「……もう一つ聞く。その知識はどこから得た」
「グリーナウェイにいたころに、側仕えのメイドに聞いたのです。いつか役に立つかも――って」

 ――などと言っても、今の今まで使わなかったので、記憶の奥底に封印していた。先ほど不意に思い出し、せっかくだしと行動しようと思っただけだ。

「実践に移す機会はなかったのですが……」
「むしろ、そうでないと困る」

 王女として生まれた以上、婚姻するまで純潔を貫かねばならない。

 年頃になってからは、周囲の人たちにきつく言い聞かせられてきた。

「呆れましたか?」

 イライアスが怒っているようにも見えて、恐る恐る問いかける。

 アンジーの不安を感じ取ったのか、彼は首を横に振った。

「今まで実践していないのなら、構わない」
「これでも王女育ちですから。自分の立場は痛いほどに理解しております」

 特に王女は自分一人。代わりはいないのだ。

「ですから、こういうことをするのも、異性に肌をさらしたのも――あの夜が、はじめてです」

 照れくさくて視線を泳がせる。顔にじんわりと熱が集まる。自分の顔は真っ赤に違いない。

 イライアスの手が伸びて、アンジーの髪の毛を梳いた。優しい手つきに目を細めて、手のひらに頬を寄せる。

「キミは変なところで大胆だな」
「こうでもしないと、二度目はない気がして……」

 彼は世継ぎを作る目的でアンジーを娶った。二度目はいつかは訪れるだろう――とわかってはいた。しかし、二度目の気配がなく、アンジーのほうが焦れてしまったのだ。

「はじめにきちんと言っただろう。世継ぎを産んでもらうと」

 知っている。覚えている。

 返事はキスによって封じ込められてしまった。予想もしていなかったタイミングでのキスに驚き、瞬きを繰り返す。

「世継ぎを産むのは妃であるキミの役目だ。そして、妃を増やすことはない」

 以前も同じようなことを聞いた。けど、なぜだろう。今日の言葉のほうが、アンジーの心の深くに響いていく。

「今日のことで嫌にならないのなら、今度は定期的に抱く」
「……えぇ、お願いします」

 この返しでよかったのかはわからないが、叱られないということはいいのだろう。

「嫌なことがあるのなら、言え。できる限りやめるように努める」
「できる限り、ですか?」

 彼らしくない言い回しに、疑問を持つ。問いかけに対し、イライアスはアンジーからプイっと顔を背ける。頬がほのかに赤くなっているのは気のせいじゃない。

「守れない可能性のあることを、はっきり言うことはできない」

 一瞬言葉の意味が理解できなかったが、理解できたときアンジーの顔はさらに熱くなった。

 心なしか、身体の奥も熱を持っている気がする。イライアスの様子に心も身体も期待していた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

愛されないと吹っ切れたら騎士の旦那様が豹変しました

蜂蜜あやね
恋愛
隣国オデッセアから嫁いできたマリーは次期公爵レオンの妻となる。初夜は真っ暗闇の中で。 そしてその初夜以降レオンはマリーを1年半もの長い間抱くこともしなかった。 どんなに求めても無視され続ける日々についにマリーの糸はプツリと切れる。 離縁するならレオンの方から、私の方からは離縁は絶対にしない。負けたくない! 夫を諦めて吹っ切れた妻と妻のもう一つの姿に惹かれていく夫の遠回り恋愛(結婚)ストーリー ※本作には、性的行為やそれに準ずる描写、ならびに一部に性加害的・非合意的と受け取れる表現が含まれます。苦手な方はご注意ください。 ※ムーンライトノベルズでも投稿している同一作品です。

世間知らずな山ごもり薬師は、××な騎士団長の性癖淫愛から逃げ出せない

二位関りをん
恋愛
平民薬師・クララは国境沿いの深い山奥で暮らしながら、魔法薬の研究に没頭している。招集が下れば山を下りて麓にある病院や娼館で診察補助をしたりしているが、世間知らずなのに変わりはない。 ある日、山の中で倒れている男性を発見。彼はなんと騎士団長・レイルドで女嫌いの噂を持つ人物だった。 当然女嫌いの噂なんて知らないクララは良心に従い彼を助け、治療を施す。 だが、レイルドには隠している秘密……性癖があった。 ――君の××××、触らせてもらえないだろうか?

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

夫が運命の番と出会いました

重田いの
恋愛
幼馴染のいいなづけとして育ってきた銀狼族の族長エーリヒと、妻ローゼマリー。 だがエーリヒに運命の番が現れたことにより、二人は離別する。 しかし二年後、修道院に暮らすローゼマリーの元へエーリヒが現れ――!?

暴君幼なじみは逃がしてくれない~囚われ愛は深く濃く

なかな悠桃
恋愛
暴君な溺愛幼なじみに振り回される女の子のお話。 ※誤字脱字はご了承くださいm(__)m

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

【完結】妻の日記を読んでしまった結果

たちばな立花
恋愛
政略結婚で美しい妻を貰って一年。二人の距離は縮まらない。 そんなとき、アレクトは妻の日記を読んでしまう。

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

処理中です...