【R18】女騎士から聖女にジョブチェンジしたら、悪魔な上司が溺愛してくるのですが?

すめらぎかなめ

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第2章 聖女と護衛騎士、そして進展する関係

夜這い 1

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「では、セレーナさま。おやすみなさいませ」
「え、えぇ、おやすみ……」

 そして、その日の夜。セレーナは神殿でつけられた世話役の女性、ジェナを見送った後、寝台に倒れこんだ。

 この神殿で与えられた個室は、実家の私室よりも数倍広々とした豪奢な部屋だ。寝台だって大人二人寝そべっても余裕がありそうだし、ソファーだってふかふか。本棚には退屈しないようにか、詩集やロマンス小説の類が置かれている。

 が、セレーナはここにきてから、それらを手に取ったことはない。

 なんといっても、昼間は訓練や勉学ばかりであり、夜は疲れ果てて眠ることが毎日のことだったためだ。

 しかし、どうにも今日は眠れそうにない。

(アッシュさんは……なにを、されるつもりなのかしら?)

 湯あみを済ませ、ナイトドレスに着替えた今、することといえば眠ることくらいだ。

 けれど、セレーナの胸はどくんと高鳴っており、眠ることは出来そうにない。

 部屋の外からは、ロロの鼻歌が聞こえてくる。彼は今日からセレーナの護衛に当たると言っていた。

 特に夜の護衛は彼の仕事らしい。それはつまり……今のアッシュに、仕事はないということ。

(やっぱり夜這い……って、アッシュさんに限ってそんなことは……!)

 彼は生真面目な性格だ。そんな、仕える主に夜這いなどしかけるようには見えない。でも、だったら昼間の彼の言動は……?

 セレーナが一人悶々としていると、不意に部屋の扉がノックされる。驚いて声を上げれば、外から扉が開きアリーヌが顔を覗かせた。……アッシュでは、なかった。

「ごめんなさいね、セレーナさん。ちょっとだけ、いいかしら?」

 彼女は後ろ手で扉を閉め、セレーナのほうに歩いてくる。そのため、セレーナは慌てて寝台から起き上がった。

「ど、どう、なさいました……?」

 アリーヌにそう問いかければ、彼女はくすくすと声を上げて笑う。その笑い方は、まるで悪戯が成功した子供のようだ。

「いえ、今日からセレーナさんも一人前の聖女だし……『アレ』が始まるのではないかと思って」
「……アレ?」

 アリーヌの言葉の意味が、これっぽっちも分からない。

 その所為でセレーナがきょとんとしていれば、彼女はセレーナの耳元に唇を近づけた。

「――夜這い、よ」

 彼女はそのきれいな声で、とんでもないことを口にした。

 だから、セレーナの顔に一気に熱が溜まっていく。よ、夜這い。それは、アッシュの言葉と意味は一致する。

「ふふっ、驚かせちゃった? けれど、ごめんなさいね。これは決定事項だし、一応知っておいたほうがいいでしょう?」

 彼女はぺろりと舌を出した後、そんなことを言う。

 その表情は子供っぽいものだが、口にしている言葉はとんでもないことであることに間違いはない。

「あのね、護衛騎士にはもう一つの役割があると、言ったでしょう?」
「は、はい……」
「それがまぁ、聖女に夜這いを仕掛けることなのよ」

 全く、意味がわからない。

 どうして護衛騎士が聖女に夜這いを仕掛けるのだ。心の中でそう思うセレーナが呆然としていれば、アリーヌは「そういう反応になるわよねぇ」と言いながら肩をすくめた。

「私も初めての頃は戸惑ったわ。だって、男性経験なんてなかったんですもの」

 ころころと笑うアリーヌが、今は恨めしくて仕方がない。そもそも、セレーナにだって男性経験なんてない。

 なのに、いきなり夜這いだなんて言われても……驚くことしか出来ない。

「あの、えっと、どういうこと……ですか?」

 恐る恐るセレーナがそう問いかければ、彼女はあっけらかんと「聖女が、変な男性と関係を持たないようにするためよ」と言い放った。

「え、えぇっと……」
「まぁ、簡潔にいえば聖女の性欲処理よ」

 それはそれで、簡潔に言いすぎだ。

 心の中でそう思う。それに、アリーヌの言葉の意味を理解すればするほど、頭が痛くなってしまいそうだった。

「護衛騎士と相性を占うって、言ったでしょう?」
「は、はい」
「それって、性格の相性もあるけれど、身体の相性もあるのよ」

 なんだか、とんでもない役目についてしまったような気がする――。

 それを実感してしまうからこそ、セレーナは「今すぐにでも逃げ出したい!」と思ってしまった。

(っていうことは、私はアッシュさんとあんなことやこんなことを――!?)

 無理だ。そんなもの、絶対に無理だ。だって、それは所詮性欲処理。気持ちが通じ合ったうえでの行為ではない。

 そんな悲しいことを――想い人とは、したくない。

「む、無理ですっ! 無理です、無理です……!」

 セレーナが首をぶんぶんと横に振りながらそう言えば、アリーヌは「案外、気持ちのいいものよ」と的外れなことを言ってくる。

 そういう意味じゃない。

「セレーナさん。……これも、仕事の内よ」

 かといって、そう言われてしまえば、セレーナだって従うほかないのだ。自分の気持ちを押し殺して、アッシュと身体の関係を持つのだ。

 それが今のセレーナになによりも求められていること。それは、わかっている。わかっているけれど……。

(でも、アッシュさんは私と関係を持つことについて、どう思われているの……?)

 彼の口ぶりからするに、彼はこうなることを知っていたのだろう。

 だが、そこにセレーナを想う気持ちなんてこれっぽっちもないはずだ。

 そんなことを考えてしまうからこそ、セレーナは心がぽっきりと折れてしまったような感覚に襲われた。
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