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第1部 第2章 共同生活
③
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扉を閉めたジェロルドが踵を返すのが見えた。ラウルは慌てて場を離れようとしたが、慌てすぎたせいだろうか。大きな足音を立ててしまった。
「――ラウル」
戻って来たジェロルドがラウルを見下ろす。
身を縮めて、ラウルは「ごめんなさい……」ということしか出来なかった。
「その、のぞき見をするつもりはなかったんです。ただ、気になって……」
先ほど彼を不機嫌にしてしまったばかりなのに――。
このままだと、愛想を尽かされてしまっても文句は言えない。
「そうかよ」
意外にもジェロルドはなにも言わず、ラウルの隣を通り抜ける。
ラウルは彼の後ろをついて歩いた。
「怒らないんですか――?」
「怒るもなにもないだろ」
ジェロルドが食事の席に戻る。ラウルも同じように椅子に腰かけた。
「あれだけうるさくされたら、気になるのが人間っていうものだ」
彼は当然のように言うと、食事を再開した。
「どなた、でした?」
本当はジェロルドの仕事関係者だということを、知っている。
けど、それは言えなかった。ジェロルドはラウルに仕事のことを隠しているのだ。
深入りして、嫌われたくない――。
「あー、仕事仲間だな」
「仕事仲間……」
「結構まとまって休んでたから、様子を見に来た感じだ」
無断欠勤だということを、ジェロルドはラウルに言わなかった。
もしかしたら、それを聞いたラウルが「自分のせいだ」と責めるのを想像をしているのかもしれない。
間違いではないだろう。
「けど、いい加減そろそろ顔を出せと文句を言われてな。俺は明日から仕事場に顔を見せるが、一人で大丈夫か?」
ラウルを見るジェロルドの目は、心配そうだった。
彼はラウルを子供かなにかだと思っているのかもしれない。実年齢はわからないが、ラウルは立派な大人――のはずだ。
「大丈夫ですよ、僕も大人しく留守番くらいできます」
「そうか」
出来る限りの笑みを浮かべてラウルが返事をすると、ジェロルドが胸をなでおろしていた。
「昼過ぎには戻ってくるようにするから、お前は寝てろよ」
「……僕、そろそろ動きたいんですけど」
「まだダメだな」
ラウルの意見はジェロルドによって切り捨てられてしまう。
しかし、不快な気持ちを抱くことはなかった。彼の言葉は心配から来ているものだと知っているからだ。
「ま、家の中くらいは歩いてもいいぞ」
「ありがとうございます……!」
その言葉はジェロルドなりの妥協案だったのだろう。
それはわかるが、ラウルからすると家の中を歩けるだけでも十分嬉しい。
「ただ、俺の私室にだけは入るなよ。仕事道具が置いてあるから、壊されたらたまったもんじゃない」
やはり彼はラウルを子供だと思っているのでは――?
なんて思ってしまうが、ここで抗議をしてしまうとまた寝台の上に逆戻りになる可能性がある。
ラウルは納得した意思を伝えるようにうなずいた。
「ところで、ジェロルドさんの私室ってどこですか?」
「この部屋の一つ手前だ。鍵はかけてるが、一応な」
鍵をかけているということは、相当大切なものが置いてあるに違いない。
彼の言うことが理解できたラウルはもう一度うなずいた。
「わかりました。鍵が開いていても、絶対に入りません!」
「おう」
笑ってラウルが宣言すると、ジェロルドは素っ気ないものの言葉を返してくれた。
ラウルはそんな彼を見てニコニコと笑う。対するジェロルドはどこか呆れたように肩をすくめていた。
「――ラウル」
戻って来たジェロルドがラウルを見下ろす。
身を縮めて、ラウルは「ごめんなさい……」ということしか出来なかった。
「その、のぞき見をするつもりはなかったんです。ただ、気になって……」
先ほど彼を不機嫌にしてしまったばかりなのに――。
このままだと、愛想を尽かされてしまっても文句は言えない。
「そうかよ」
意外にもジェロルドはなにも言わず、ラウルの隣を通り抜ける。
ラウルは彼の後ろをついて歩いた。
「怒らないんですか――?」
「怒るもなにもないだろ」
ジェロルドが食事の席に戻る。ラウルも同じように椅子に腰かけた。
「あれだけうるさくされたら、気になるのが人間っていうものだ」
彼は当然のように言うと、食事を再開した。
「どなた、でした?」
本当はジェロルドの仕事関係者だということを、知っている。
けど、それは言えなかった。ジェロルドはラウルに仕事のことを隠しているのだ。
深入りして、嫌われたくない――。
「あー、仕事仲間だな」
「仕事仲間……」
「結構まとまって休んでたから、様子を見に来た感じだ」
無断欠勤だということを、ジェロルドはラウルに言わなかった。
もしかしたら、それを聞いたラウルが「自分のせいだ」と責めるのを想像をしているのかもしれない。
間違いではないだろう。
「けど、いい加減そろそろ顔を出せと文句を言われてな。俺は明日から仕事場に顔を見せるが、一人で大丈夫か?」
ラウルを見るジェロルドの目は、心配そうだった。
彼はラウルを子供かなにかだと思っているのかもしれない。実年齢はわからないが、ラウルは立派な大人――のはずだ。
「大丈夫ですよ、僕も大人しく留守番くらいできます」
「そうか」
出来る限りの笑みを浮かべてラウルが返事をすると、ジェロルドが胸をなでおろしていた。
「昼過ぎには戻ってくるようにするから、お前は寝てろよ」
「……僕、そろそろ動きたいんですけど」
「まだダメだな」
ラウルの意見はジェロルドによって切り捨てられてしまう。
しかし、不快な気持ちを抱くことはなかった。彼の言葉は心配から来ているものだと知っているからだ。
「ま、家の中くらいは歩いてもいいぞ」
「ありがとうございます……!」
その言葉はジェロルドなりの妥協案だったのだろう。
それはわかるが、ラウルからすると家の中を歩けるだけでも十分嬉しい。
「ただ、俺の私室にだけは入るなよ。仕事道具が置いてあるから、壊されたらたまったもんじゃない」
やはり彼はラウルを子供だと思っているのでは――?
なんて思ってしまうが、ここで抗議をしてしまうとまた寝台の上に逆戻りになる可能性がある。
ラウルは納得した意思を伝えるようにうなずいた。
「ところで、ジェロルドさんの私室ってどこですか?」
「この部屋の一つ手前だ。鍵はかけてるが、一応な」
鍵をかけているということは、相当大切なものが置いてあるに違いない。
彼の言うことが理解できたラウルはもう一度うなずいた。
「わかりました。鍵が開いていても、絶対に入りません!」
「おう」
笑ってラウルが宣言すると、ジェロルドは素っ気ないものの言葉を返してくれた。
ラウルはそんな彼を見てニコニコと笑う。対するジェロルドはどこか呆れたように肩をすくめていた。
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