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第三章
吐露
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ジークハルトが帰ったのを見届け、マーガレットはそっと隣に立つクローヴィスの手に触れてみた。
(……旦那様)
もしも、マーガレットがジークハルトに嫉妬したと聞けば、彼はどういう反応をするだろうか? それに合わせ、クローヴィスのことを何でも知りたいと思ってしまっていることを知れば、彼はなんと思うだろうか?
そんなことを考えていれば、マーガレットの腰に手が回される。
それに驚いてマーガレットがクローヴィスの顔を見上げれば、彼は「悩み事?」と問いかけてくる。
(私、そんなに神妙な面持ちをしていたかしら?)
一瞬そう思ってしまうが、クローヴィスが気が付いたということはそういうことなのだろう。
だからこそ、マーガレットは「ま、まぁ、ほんの少し」とにっこりと笑って答える。
「旦那様とジークハルト様は、本当に仲がよろしいなぁと、思っていただけですので」
あぁ、こんなことを言えば嫉妬してしまったことがバレてしまう。
そう思ってしまうが、マーガレットの頭には誤魔化す言葉が浮かび上がってこない。その所為でそっと彼から視線を逸らせば、クローヴィスは何を思ったのかマーガレットに「……話を、しようか」と言ってくる。
「……お話、ですか?」
何となく改まった雰囲気だ。
いつになく真面目なクローヴィスにそんな感情を抱いていれば、彼は「……マーガレットが、何か聞きたそうだからね」と言いながら踵を返して屋敷の中に戻っていく。なので、マーガレットもそれに続いた。
クローヴィスは何でもない風に屋敷の中を歩く。そのままたどり着いたのは夫婦の私室だった。彼は「しばらく二人きりにして」と使用人たちに指示を飛ばすと、ソファーに腰を下ろす。
「……さて、マーガレット」
「は、はい」
「何か、俺に言いたいことがあるんだよね?」
そう問いかけられ、マーガレットはそっと視線を下に向ける。……言いたいことは山のようにある。けれど、これを言うということは――クローヴィスに惚れているということを認めることになってしまう。
(ジークハルト様に嫉妬したとか、旦那様のすべてを知りたいとか。そういうの、本当に心の狭い女だし、面倒な女だわ)
そんなことを思ってしまうからこそ、マーガレットは何も言えなかった。ただそっと目を伏せ「……何でも、ありません」と小さな声で言う。
「……何でもないことはないでしょ?」
「な、何でもないんです! 本当に、何も――」
――お話するようなことはないです。
そう言おうとしたのに、言えなかった。マーガレットの発しようとした言葉はほかでもないクローヴィスに呑み込まれる。
「んんっ」
何度も何度も唇を合わせられ、マーガレットの頭がぼうっとしてしまう。
「……マーガレット」
そっと離される唇に一抹の寂しさを覚えていれば、クローヴィスは「俺は、マーガレットが大好きだよ」と突拍子もなく告白してきた。
「……旦那様」
「マーガレットのちょっと素直になれないところとか、誰よりも優しいところとか。そういうところを……ううん、マーガレットの全部が俺には好ましく映るんだ」
熱烈な告白だった。
それに驚いてマーガレットが目を見開けば、彼は「だから、マーガレットに辛い思いはさせたくない」と真剣な面持ちで告げてくる。
けれど、マーガレットからすればこんなにも悩む羽目に陥っているのはほかでもないクローヴィスの所為なのだ。
「……旦那様の所為、なんです」
だからこそ、そっと目を伏せながらそう言う。
そうすれば、クローヴィスの目が大きく見開かれた。
「旦那様のこと考えたら、胸の奥が苦しくなります」
「……マーガレット」
「私たち、所詮契約上の夫婦なのに。……なのに、いつしか旦那様に想いを寄せるようになっていました。……こんなの、私じゃないのにっ!」
最後の方は半ば八つ当たりだったのかもしれない。それほどまでに乱暴に叫べば、クローヴィスはおもむろにマーガレットの身体を抱きしめてくる。そのふわりとした壊れ物を扱うかのような抱きしめ方に、マーガレットの心が疼いていく。
「……嬉しい」
その後、彼はそんな言葉を零す。……ぎゅっと抱きしめられた身体が熱いような気がする。そう思いながら、マーガレットはクローヴィスの胸をたたいた。
「ジークハルト様と仲良くされると、私の胸の奥底がもやもやするんです!」
「……うん」
「それに……旦那様に隠し事されているのが、私にとって一番嫌なんです!」
「……そっか」
もう半ばヤケクソとばかりに自分の気持ちを吐露する。そうすれば、クローヴィスは「……俺がマーガレットのためを思ってしていたこと、逆効果だったんだね」と苦笑を浮かべながら言っていた。
「私の、ため」
「うん、そうだよ。巻き込みたくなかったから、マーガレットには黙ってた。……それが、隠し事だって思われたんだね」
彼の表情は見えないが、多分苦笑を浮かべているだろう。
そんなことを思いながらマーガレットがぼんやりとしていれば、クローヴィスは「……いいよ、話すから」と言ってくれた。
(……旦那様)
もしも、マーガレットがジークハルトに嫉妬したと聞けば、彼はどういう反応をするだろうか? それに合わせ、クローヴィスのことを何でも知りたいと思ってしまっていることを知れば、彼はなんと思うだろうか?
そんなことを考えていれば、マーガレットの腰に手が回される。
それに驚いてマーガレットがクローヴィスの顔を見上げれば、彼は「悩み事?」と問いかけてくる。
(私、そんなに神妙な面持ちをしていたかしら?)
一瞬そう思ってしまうが、クローヴィスが気が付いたということはそういうことなのだろう。
だからこそ、マーガレットは「ま、まぁ、ほんの少し」とにっこりと笑って答える。
「旦那様とジークハルト様は、本当に仲がよろしいなぁと、思っていただけですので」
あぁ、こんなことを言えば嫉妬してしまったことがバレてしまう。
そう思ってしまうが、マーガレットの頭には誤魔化す言葉が浮かび上がってこない。その所為でそっと彼から視線を逸らせば、クローヴィスは何を思ったのかマーガレットに「……話を、しようか」と言ってくる。
「……お話、ですか?」
何となく改まった雰囲気だ。
いつになく真面目なクローヴィスにそんな感情を抱いていれば、彼は「……マーガレットが、何か聞きたそうだからね」と言いながら踵を返して屋敷の中に戻っていく。なので、マーガレットもそれに続いた。
クローヴィスは何でもない風に屋敷の中を歩く。そのままたどり着いたのは夫婦の私室だった。彼は「しばらく二人きりにして」と使用人たちに指示を飛ばすと、ソファーに腰を下ろす。
「……さて、マーガレット」
「は、はい」
「何か、俺に言いたいことがあるんだよね?」
そう問いかけられ、マーガレットはそっと視線を下に向ける。……言いたいことは山のようにある。けれど、これを言うということは――クローヴィスに惚れているということを認めることになってしまう。
(ジークハルト様に嫉妬したとか、旦那様のすべてを知りたいとか。そういうの、本当に心の狭い女だし、面倒な女だわ)
そんなことを思ってしまうからこそ、マーガレットは何も言えなかった。ただそっと目を伏せ「……何でも、ありません」と小さな声で言う。
「……何でもないことはないでしょ?」
「な、何でもないんです! 本当に、何も――」
――お話するようなことはないです。
そう言おうとしたのに、言えなかった。マーガレットの発しようとした言葉はほかでもないクローヴィスに呑み込まれる。
「んんっ」
何度も何度も唇を合わせられ、マーガレットの頭がぼうっとしてしまう。
「……マーガレット」
そっと離される唇に一抹の寂しさを覚えていれば、クローヴィスは「俺は、マーガレットが大好きだよ」と突拍子もなく告白してきた。
「……旦那様」
「マーガレットのちょっと素直になれないところとか、誰よりも優しいところとか。そういうところを……ううん、マーガレットの全部が俺には好ましく映るんだ」
熱烈な告白だった。
それに驚いてマーガレットが目を見開けば、彼は「だから、マーガレットに辛い思いはさせたくない」と真剣な面持ちで告げてくる。
けれど、マーガレットからすればこんなにも悩む羽目に陥っているのはほかでもないクローヴィスの所為なのだ。
「……旦那様の所為、なんです」
だからこそ、そっと目を伏せながらそう言う。
そうすれば、クローヴィスの目が大きく見開かれた。
「旦那様のこと考えたら、胸の奥が苦しくなります」
「……マーガレット」
「私たち、所詮契約上の夫婦なのに。……なのに、いつしか旦那様に想いを寄せるようになっていました。……こんなの、私じゃないのにっ!」
最後の方は半ば八つ当たりだったのかもしれない。それほどまでに乱暴に叫べば、クローヴィスはおもむろにマーガレットの身体を抱きしめてくる。そのふわりとした壊れ物を扱うかのような抱きしめ方に、マーガレットの心が疼いていく。
「……嬉しい」
その後、彼はそんな言葉を零す。……ぎゅっと抱きしめられた身体が熱いような気がする。そう思いながら、マーガレットはクローヴィスの胸をたたいた。
「ジークハルト様と仲良くされると、私の胸の奥底がもやもやするんです!」
「……うん」
「それに……旦那様に隠し事されているのが、私にとって一番嫌なんです!」
「……そっか」
もう半ばヤケクソとばかりに自分の気持ちを吐露する。そうすれば、クローヴィスは「……俺がマーガレットのためを思ってしていたこと、逆効果だったんだね」と苦笑を浮かべながら言っていた。
「私の、ため」
「うん、そうだよ。巻き込みたくなかったから、マーガレットには黙ってた。……それが、隠し事だって思われたんだね」
彼の表情は見えないが、多分苦笑を浮かべているだろう。
そんなことを思いながらマーガレットがぼんやりとしていれば、クローヴィスは「……いいよ、話すから」と言ってくれた。
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