【完結】【R18】元騎士団長(32)、弟子として育てていた第三王子(20)をヤンデレにしてしまう

すめらぎかなめ

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第1章

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 男爵領から三日三晩馬を走らせ、たどり着いた王都はすっかり様変わりしていた。

 俺が住んでいた頃よりも活気にあふれた街を観察しつつ、ここ数日のことを思い出す。

(ヴィクトール殿下もついに二十歳か)

 かつて弟子として剣術を教えていた王子殿下の顔を思い出し、頬を緩めた。

 天使と言っても信じてしまいそうなほど、愛らしい少年だった。

 初めはずっとおどおどとしていて、自分に自信がなさそうだった。それでも根気強く関わるにつれ、ヴィクトール殿下は俺に笑みを向けてくださるように。気が付けば信頼も寄せてもらえるようになり、指導役にとってこれ以上の名誉はないと思ったほどだ。

 指導役を勤めていたのは二年にも満たない短い時期だったが、俺はヴィクトール殿下には人よりも思い入れがあると思っている。

 そんな殿下が二十歳を迎え、誕生日パーティーを開く。しかも一指導係に過ぎない俺に招待状を送ってくださるなど、感激のあまり泣いてしまいそうだ。年を取ると、涙もろくてかなわないな。

(そういえば、ヴィクトール殿下もそろそろご結婚を考える時期だったか)

 花嫁を選ぶパーティーの開催はいつ頃なのか。万が一ご結婚が決まっているのならば、ささやかだがご祝儀をお贈りしたい。

 俺はのんきに考えつつ、馬の手綱を引きながら王都の街を歩くのだった。

 ◇◇◇

 王城にたどり着くと、俺を出迎えたのはかつての部下の騎士だった。

「ラードルフさんもお変わりないようでなによりです」

 イェロームという名の騎士は、俺を見て笑う。かつて任務の途中で大けがを負ったイェロームだが、どうやら無事復帰することが叶ったらしい。現在では副団長という地位についていると、笑いながら俺に話す。

「お前はいろいろと変わったようだがな」
「まぁ、そうですね」

 昔のイェロームは他者とのコミュニケーションを避けるような男だった。

 しかし、今はどうだろうか。明るく表情には笑みも浮かんでいる。部下からも慕われているようであり、人とはここまで変わることが出来るのかと感心するほどだ。

「全部、ラードルフさんのおかげです。今の俺があるのは、あなたのおかげだ」
「なにを言っているんだ。お前が努力したからだろう」

 微笑みかけてくるイェロームの肩をたたきつつ、俺は豪快に笑う。

(こいつは俺にいい印象を持っていないはずなんだがな)

 恨まれても仕方がない。好かれるわけがない。ただ、こいつが表面上だけでもコミュニケーションを円滑に取ることが出来るようになったなら、喜ばしいことだ。俺の存在価値もあったというものだろう。

「ラードルフさん」

 イェロームが俺を見て頬を緩める。よく見るとこいつは美形なんだよなぁと感心して、気が付く。

「お前、結婚とかしてるのか?」

 こいつは次男坊だから、必ず結婚しないといけないわけではない。ただ、世間体っていうのがある。

「いえ、独身です。気ままな独身貴族ライフを謳歌しています」
「そうか。俺と同じだな」
「……そうですね」

 俺と一緒にされてしまったら、そりゃあ不満か。まだコイツは二十代なわけだし。

「お前は俺みたいになるなよ。手遅れになる前に、結婚したほうがいい」

 最後に肩を一度だけたたく。イェロームが目を伏せたのがわかった。

「お、れは」
「――イェローム?」

 ただならぬ雰囲気に、俺は気圧された。頬を引きつらせつつイェロームの名前を呼ぶと、やつの手が俺のほうに伸びてきて――。

「俺は、ラードルフさんのことが――」

 ごくりとつばを飲んだ。イェロームの指先が、俺の頬に近づいて、爪先が肌をかすめようとしたところで――誰かがイェロームの手首をつかんだ。
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