【完結】【R18】元騎士団長(32)、弟子として育てていた第三王子(20)をヤンデレにしてしまう

すめらぎかなめ

文字の大きさ
3 / 25
第1章

しおりを挟む
 驚いて伸びてきた手のほうに視線を向けると、一人の男が立っていた。

 ――美しい男だった。

 さらりとした短い金髪。人のよさそうな青色の目。

「ヴィクトール殿下?」

 無意識のうちに懐かしい名前を口にした。男は俺の声を聞いて、笑った。

「ラードルフさん。お久しぶりです」

 男――ヴィクトール殿下が俺のほうに一歩を踏み出し、俺の前に立つ。

 あの頃は俺のほうが背丈が高かったのに、今では見上げる形になっている。不思議なものだ。

「またお会いできて光栄です。すっごく嬉しい」

 もしも俺が女だったら頬を染めただろう。

 容易に想像がつくほどに美しい王子スマイル。胸に手を当てて言葉をつむぐ姿はまさに少女の憧れの王子だ。

「殿下は……そうですね。結構変わりましたね」

 輝かしい笑みをまっすぐに見ることが出来ず、俺は視線を彷徨わせる。

 イェロームに助けを求めようとしたが、アイツはいつの間にかいなくなっていた。裏切者め。

「そうでしょうか? 成長したのは認めますが」
「成長なんてものじゃないですよ」

 俺の記憶の中にあるヴィクトール殿下はか弱い少年のままだ。

 目の前の男があのいたいけな少年だとは思えない。おどおどとしていた自信なさげな少年は、長い年月をかけ立派な王子に成長した。指導役としては喜ばしいことだ。

「昔はおどおどとしていて、自信なさげでしたのに」

 口に馴染まない敬語を使って、ヴィクトール殿下と会話をする。ヴィクトール殿下は昔から俺が敬語が苦手だと知っているので、特になにかを言うことはなかった。素直に助かる。

「あの頃は、そうですね。俺もまだまだ未熟でしたから」

 立ち振る舞いも、口調も。完全に王子だった。

 もうあの頃のヴィクトール殿下はいないんだと実感すると、嬉しいような悲しいような。

 国民としては喜ぶべきことなんだが、側にいた一人の師匠としては微妙だ。ちょっと、寂しい。

「けど、あの頃の俺も俺なんです。兄たちに劣等感を抱いて不貞腐れていた俺は、確かに必要だった」
「ヴィクトール殿下」
「だって、素敵な出会いをもたらしてくれましたから」

 ヴィクトール殿下の目はきらきらと輝いている。まるで、恋する乙女みたいだ。

 あぁ、そうか。――ヴィクトール殿下は恋をしているのだ。

「殿下には、お好きな人でもいるのですか?」

 小さな悪戯のつもりだった。昔一緒に過ごした兄貴分と弟分のたわむれのようなものだ。

「え、えっと」
「ヴィクトール殿下のお目はきらきらと輝いている。恋をしている乙女のようだ」

 さすがに言い方が悪かったか――?

 なにも言わないヴィクトール殿下に向かって困ったような笑みを浮かべてしまう。彼は視線を彷徨わせた後、頷く。

「はい。俺にとっては大切な恋なのです」
「そうですか」
「初恋は叶わないと言いますが、俺は叶えてみせます。迷信は所詮迷信ですから」

 俺的には、こんなにも美しく健気な王子が「好きだ」なんて言えばどんな人も落ちると思う。勝手な想像だが。

「そうですか。俺が言うのもなんですが、頑張ってくださいね。お祝いはお贈りしますよ」
「……ありがとうございます」

 返事に間があったような気がする。でも、深く気にすることはしなかった。いきなりの言葉に驚いただけだろうから。

「もうじきパーティーも始まりますね。俺は着替えてきます」

 先ほど話は通していて、着替えのために控室を借りることとなっていた。

 俺が控室のほうに足を向けようとすると、手首をつかまれた。驚いて視線を向けると、ヴィクトール殿下が俺の手首をつかんでいる。

「殿下――?」
「――いえ、なんでもありません。どうぞ、ごゆっくり」

 ヴィクトール殿下の目から一瞬光が消えたような気がする。

(いや、気のせいだな。今はとにかく着替えないと)

 このときもっとヴィクトール殿下のことを見ていたら。

 俺はあんなことをされずにすんだのだろうか――となどと思ったところで、後の祭りだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜

レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」 魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。 彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

従僕に溺愛されて逃げられない

大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL! 俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。 その傍らには、当然のようにリンがいる。 荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。 高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。 けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。 当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。 居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。 さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。 主従なのか、恋人なのか。 境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。 従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。

ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました

大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――

転生したらスパダリに囲われていました……え、違う?

米山のら
BL
王子悠里。苗字のせいで“王子さま”と呼ばれ、距離を置かれてきた、ぼっち新社会人。 ストーカーに追われ、車に轢かれ――気づけば豪奢なベッドで目を覚ましていた。 隣にいたのは、氷の騎士団長であり第二王子でもある、美しきスパダリ。 「愛してるよ、私のユリタン」 そう言って差し出されたのは、彼色の婚約指輪。 “最難関ルート”と恐れられる、甘さと狂気の狭間に立つ騎士団長。 成功すれば溺愛一直線、けれど一歩誤れば廃人コース。 怖いほどの執着と、甘すぎる愛の狭間で――悠里の新しい人生は、いったいどこへ向かうのか? ……え、違う?

転移先で辺境伯の跡継ぎとなる予定の第四王子様に愛される

Hazuki
BL
五歳で父親が無くなり、七歳の時新しい父親が出来た。 中1の雨の日熱を出した。 義父は大工なので雨の日はほぼ休み、パートに行く母の代わりに俺の看病をしてくれた。 それだけなら良かったのだが、義父は俺を犯した、何日も。 晴れた日にやっと解放された俺は散歩に出掛けた。 連日の性交で身体は疲れていたようで道を渡っているときにふらつき、車に轢かれて、、、。 目覚めたら豪華な部屋!? 異世界転移して森に倒れていた俺を助けてくれた次期辺境伯の第四王子に愛される、そんな話、にする予定。 ⚠️最初から義父に犯されます。 嫌な方はお戻りくださいませ。 久しぶりに書きました。 続きはぼちぼち書いていきます。 不定期更新で、すみません。

処理中です...