【完結】【R18】元騎士団長(32)、弟子として育てていた第三王子(20)をヤンデレにしてしまう

すめらぎかなめ

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第3章

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 教えろなんて言われても、答える筋合いもない。

 顔を背けた。その態度をイェロームは『肯定』だと受け取ったらしい。

 俺を抱きしめる腕の力が強くなる。

(こいつもさすがは騎士だな。力が強い)

 骨がミシミシ言っているような気もする。鈍い痛みが身体中を襲っている――はずだ。

 なのに、どうしてだろうか。俺はこの状況をどこか他人事のように見ていた。先ほどまでの苦しみがきれいさっぱり消えている。

 この感覚は観劇――と言えば伝わるだろうか。俺は自分自身を客観視していた。しすぎていた。

「……どうして、そんな態度」

 腹立たしいと言いたげな声をイェロームがあげた。

「俺の苦しみは、あなたにとってどうでもよかったってことですか」

 イェロームの手が肩をつかんだ。

 この光景を他人事のように捉える俺と、冷静さを欠いた俺が共存している。

 まったくおかしな状態だ。

「……別に、どうでもいいわけじゃない」

 静かに声をあげる。イェロームの双眸を見つめる。

「俺は俺自身の罪を忘れたことはなかった。そして、お前のことも」

 俺の肩をつかむイェロームの手に、自分の手を重ねた。

「悪いのは全部俺だ。お前は悪くない」

 淡々と告げた言葉にイェロームはうろたえた様子を見せた。

 一瞬だけ眉間にしわを寄せ、苦しそうな表情を浮かべる。

「……お前の気が済むなら、俺はお前に殺されてもいい」

 それだけのことをした自覚はある。

 殺されることが償いならば。俺はこいつの殺意を間違いなく受け入れた。

 でも、それではこいつは人殺しになってしまう。

「――なぁ、イェローム」

 俺はイェロームの剣に視線を向けた。

「命は惜しくない。お前に殺されるのは当然だ」

 場違いな笑みがこぼれた。

 ただ、俺はこいつを――イェロームを人殺しにはしたくないのだ。

「自分勝手だってわかってる。けど、俺はお前に飼い殺しになどされたくない。それはお前を余計に苦しめるだけだとわかっているからな」

 殿下も同じだ。

 俺をここに閉じ込め、側に置いておく。殿下はこの行為を正当化し、安心している――ように、見せかけているだけだ。

 全部、気づいてしまったのだ。

「あのとき、逃げたのが全部の始まりだったんだな。俺がするべきは、立場を辞すことではなく許してもらえるまで謝ることだった」

 手を伸ばして、イェロームの剣のグリップに触れた。イェロームは咄嗟に身を引いた。

「なにをするつもりですか!」
「……お前を人殺しにしないためだ」

 イェロームの目を見つめる。苦しそうな表情に、俺の胸がチクチクと痛んだ。

(結局、俺は自分が楽なほうに逃げたんだ。周りから責められるのが怖かった)

 今更気づいても――遅いけどさ。

 殿下やイェロームの情緒をめちゃくちゃにした責任を取るべきだろう。

「悪かったな、イェローム。お前から責められるのが、俺は怖かったんだ。だから、逃げた。何度謝っても許されることじゃない」
「……だったら!」
「すまない、申し訳ない。許してくれ。どれだけの言葉で気持ちを表せばお前の気が済むかわからない。だったら――もう」

 選択肢は二つに一つ。

(殿下は怒るだろうな。けど、俺に執着し続けるよりきっと穏やかな人生を送ることができる)

 そしていつかは俺を忘れてくれる。

 信じている。俺の知る殿下は――あぁ見えて強いのだ。

(やはり、ここに来たときに自害しておくべきだった)

 笑いがこみあげてくる。イェロームの双眸が動揺を宿している。

「最後にきちんと顔を見て謝ることができた。俺はもう、なにも思い残すことはない」
「……どうして、あなたはそんな――」

 イェロームが叫ぼうとしたとき。部屋の扉が乱暴に開いた。視線を向けると、肩を揺らして息をする――殿下がいた。

 水滴を滴らせた髪を掻きあげ、殿下は冷たい瞳で俺を見ていた。
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